「年内会えるかな?来週とか忙しい?」とのお誘いを頂き、秒で翌日に会うことが決定。彼女は大手町勤務、かつ、「ワインが飲みたい」とのことなので会場は神田のビストロに決定。
神田から徒歩数分のビル2階。お店の公式食べログページの記載には「フレンチの技法で表現された食事と、シニアソムリエが厳選したワインや日本酒など、多種多様なお酒とのマリアージュ」と鼻息が荒い。「最近、アラフォーの男といい感じなんだけど」この話をするために来たんだ、と言わんばかりに身を乗り出して彼女は語る。「でも、もうアラフォーなのに、未婚独身のバツ無しなんだよね」なるほど、それは議論の余地が大いにあります。
アミューズは白子とカブ。それなりに美味しいのですが、それぞれの食材がバラバラに独立している印象です。
「その歳までいっちゃうと、妥協できなくなっちゃうのかなあ。こっちがサイン送ってるのに、全然迫ってこないのね」ほう、サイン。参考までにキミはどういうサインを送るのかね?
ブリのカルパッチョにゴマのソース。ううむ、これも先の皿と同じく構成要素が互いに独立しており、素材と素材が調和した料理からはかけ離れています。
「ふたりでカラオケ行ったんだけど、まるっきり近くに寄ってこないの。だからこっちから近寄ってボディタッチするじゃん?それで、タイミング良い時にこっちからチュってするわけ」おまえ、それはサインじゃなくて、やっとるぞ。
カニ肉にシャインマスカットなど。「話の途中で悪いんだけど」ぐいを私を引き寄せ耳元で囁く連れ。「このお店、どう思う?正直に言って」
全然ダメだね。料理は作り置きを盛り付けるだけで、恐らくまともな料理人はいない。うわべだけフランス料理風を装っているように見えるけど、俺のフレンチより高くて不味い。割高なファミレスって感じかな、と、忌憚なき意見を述べる私。もちろんこれが1,000円や2,000円の店であればあれこれうるさいことは言わないのですが、これらは食事だけで5,500円の立派なコース料理なのである。
「そうだよね~。接客も無茶苦茶じゃない?しかもあの男、ありえないぐらい爪が長くって、飲食業として無理」と、前菜の時点で死刑判決が下されました。
シャンピニオンの焼き豆腐。生麩のような食感の豆腐にマッシュルームの風味がつけれられています。個人的には悪くないなと思ったのですが、「まずーい、あげる」と彼女は私を残飯処理係に任命しました。
サゴシ(サワラの幼魚)のポワレ。これも本当にポワレなんですかねえ。オーブンで大量に焼いたものにスープを流し込んでるだけのような気がしてなりません。ちなみにオーギュスト・エスコフィエ(凄いシェフ)が定義するポワレとは、「蓋をした底の深い銅鍋に、少量のフォンを入れ蒸し焼きにすること」であり、ただ「焼く」という方法ではありません。
メインはイノシシをチョイス。素材が良いのか悪くない味わいです。イノシシの割に少しも臭みは無く、むしろピノノワールぐらいでちょうど良い軽やかさです。
「そしたらその男、『いいの?』って聞いてくるわけ。何よその『いいの?』って。どう思う?」ヒトコトで言うとキモイ、だね、と忌憚なき意見を述べる私。「でしょ~?ほんとどういう意味なわけ?『いいの?』って」あ、今のキモイは彼だけに向けた言葉ではなく、君たちふたりに向けた言葉です。
「トリュフTKG」と称する皿。しかしながら質の悪いトリュフに妙な混ぜ物がなされており、卵液の量もほとんどなく、洋風おかかゴハンといったところでしょう。量も少ないなと思ったのですが、彼女が「まずーい、あげる」と言ってきたので、最終的には腹が膨れました。
デザートは2皿と銘打ってはいたのですが、ただ単に2皿に分けて出しているだけであり、そうさせる必然性を感じることができませんでした。食後のお茶に選択肢はなく、なぜか緑茶が供されます。緑茶についても、なぜ緑茶でなければならないのかのストーリーが見えません。
グラスで2杯づつ飲んで、最も安いワインを1本注文して、お会計は2万円を超えました。費用対効果があまりに悪く、ふたりでしばし絶句する。
「あたしはそのヒトと結婚したいって、本気で思ってるんだけどなぁ」口を丸めながら遠くを見つめる彼女。なるほど彼女がそこまでこの恋に夢中とは、そう言わせるだけのサムシングが彼には備わっているのかもしれません。
「ねえ、あたしのストレス発散に付き合ってくれる?」私の腕を引っ張り私の知らない路地へと誘う彼女。どこへ?と問うても彼女は含みのある笑顔で答えるのみ。これはどうせカラオケだろう。
やっぱりカラオケでした。私はあまりカラオケが好きではないのですが、行ってしまえば没頭するタイプ。2人カラオケのはずなのに、待ち曲数が7曲まで達しました。タンバリンも叩きます。
歌って踊れるレパートリーとして「恋愛レボリューション21」を流したのですが、本人たちの映像に思いのほかしみじみとしてしまう。あれだけの栄華を誇ったアイドルグループが、今や犯罪者集団。そういう意味でLDHは半グレのようなナリをしておきながら、犯罪に手を染めたOBOGは未だいないのではなかろうか。人は見かけによらないものである。
関連記事
神田は良い街です。東京駅すぐ近くと至便であるのにも関わらず、5,000円も出せばしっかりと飲み食いができるお店が多い。気長に開拓していきたいと思います。
- やまし田 ←リーズナブルできちんと美味しい牛タン料理屋。
- 七條(シチジョウ) ←都内屈指のエビフライ
- 松記鶏飯 ←シンガポールで食べるより美味しいシンガポール料理。
- 雲林(yun-rin) ←街の中華料理屋の価格帯ながら、ラグジュアリーホテルの高級中華に比肩する味わい。
- 神田ワイン食堂パパン ←リーズナブルなワインバー。
- ヴィノシティ ←費用対効果抜群のワインバー。
- ヴィノシティ マジス ←ロゼ主体。哲学があるワインバー。
- かんだ光壽 ←日本酒のレパートリーに舌を巻く
- 魚祥 ←500円でイクラまみれ
- 丸五 ←2,550円のトンカツに行列1時間。
- 味坊 ←羊肉主体の超有名中華料理屋。
- 万世橋酒場 ←300円の牛すじ煮込みが絶品。