ハインツ・ベック(HEINZ BECK)/丸の内

ご無沙汰していた女の子より唐突に連絡。記念すべきひめはじめの舞台をコーディネートするという重責ではありますが、この期待には応えないと私の正義が廃れてしまう。Xデーまでに残された時間は僅かだったので店選びに難航し、ついに白羽の矢が立ったのは 丸の内「ハインツ・ベック(HEINZ BECK)」。
ロブションのドイツ人版のようなシェフであり、ローマの3ツ星店「ラ・ペルゴラ(La Pergola)」を皮切りに世界各国でスターを獲得し続け無敵モードに突入。満を持して日本に上陸。私はセカンドラインの「センシ バイ ハインツ ベック(sensi by Heinz Beck)」にしかお邪魔したことがなかったので、偶然転がり込んできたデートにしてはエキサイティングなランチとなりそうです。
私は少し早めに到着したので、時間つぶしにワインリストを熟読。じんわりと滲み出る冷たい汗。なんだこれ、ワインの値付け、めっちゃんこ高いじゃん。何でもないスパークリングワインのグラスが2,000円、ボトルでも10,000円~です。この店で冒頭の「死ぬほど美味しい」を実現しようとすると10万円を超えてしまう。またの機会にしよう。
こちらは酒屋の2倍程度だったのでかまへんかという決断。ミネラルたっぷりでドライ。旨味も強く、恐る恐る注文した割に大変好みのフランチャコルタでした。「美味しい…」一言だけ感想を述べ目を細める彼女。
アミューズは3種。まずは「プレッツェーモロ」というパセリを用いたクッキーにマーマレードを並べます。意匠としては悪くないのですが、味わいとしては特に印象に残らず。
場つなぎとして薄いパリパリとグリッシーニも並べられます。
カルボナーラ。豚の脂を煎餅のように揚げ、それに卵黄のクリームならびにチーズのクリームを乗せて食べます。ううむ、体験としては面白いのですが、味わいにパンチがなくあと一歩といったところ。
こちらは薄いパリパリの生地に豆のペーストを挟み込んだ一口ミルフィーユ。やはり見目は麗しいのですが、風味として奥行きに乏しい。アミューズの時点でこんなに下がることは珍しいです。
パンは結構好きですね。酸味があって、ザクザクと食べる楽しみがあります。
秋刀魚のマリネ。軽く表面を炙っただけの、オールモウスト生という調理であり、生魚原理主義者の私としては好みのタイプです。エディブルフラワーやほうれん草・セロリを用いた彩りが美しく、この皿だけを見てイタリア料理だと答える人は少ないでしょう。
メインはイタリア産の仔牛。低温で優しく火入れされた肉はどこまでも柔らかい。肉質もピュアでありミルクのような甘さが感じられ、付け合せの菊芋やジロール茸、黒キャベツ、百合根の取り合わせもグッドです。これはもう、極めてモダンなフランス料理と言って良いでしょう。
デザートはマロングラッセのアイスにコーヒーのクッキーおよびソース。イタリア料理店でここまで整ったスイーツに出遭うのは初めてです。ドルチェというよりもアシェットデセールと呼ぶに相応しい。
小菓子も5種キッチリと出てきました。いずれも高品質であり、イタリア料理店でこのように食後の余韻を楽しむのは初めてのような気がします。
全体を通して彩りが豊かで女性的なセンスを感じるコースでした。ただ、見た目は素晴らしいのですが、味わいについては今ひとつパンチに欠けるなという印象。また、極めてフランス料理的な皿が続くので、「今日はイタメシを食べるぞ!」と意気込んで行くと拍子抜けするかもしれません。加えてワインがめちゃんこ高いのも気になります。あの価格設定だと1万円が100円ぐらいの感覚の富裕層でないと気持ちよく飲めないでしょう。色々と割高なので、自腹ではなく接待などで行くべきお店だと感じました。


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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
十年近く愛読している本です。ホームパーティがあれば常にこの本に立ち返る。前菜からドルチェまで最大公約数的な技術が網羅されており、これをなぞれば体面は保てます。

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