特筆すべきはそのシステム。なんとランチは40枚しか用意せず、「何を何枚食べるか」を事前に予約する必要があります。私は2〜3ヶ月前に予約を入れたのですが、「いらっしゃる数日前に確認の電話をしてくださいね」と、リコンファームまで要求されました。
まずは王道のせいろそば。つなぎなしの石臼挽き十割蕎麦であり、素麺のように細く、やや緑がかった外観が印象的。ビシっと冷え、割れてしまいそうな触感が特徴的であり、恐る恐る口に運ぶと、見た目とは裏腹にタフな歯ごたえ。ただし、蕎麦としてハイレベルなのは間違いありませんが、うーん、そこまで大騒ぎするほどのものかなあ。
続けて田舎そば。殻ごと挽いてあるためザラリとした舌触りがあり、香りが強い。せいろそばよりもやや太く風味が豊かであるため、こちらのほうが断然好みです。それにしても量が少ない。今回はひとりあたり、せいろと田舎を1枚づつ予約しましたが、全く腹が膨れません。
味変用として、「地どり汁」を注文。こちらについては予約せずにアドリブで注文可能でした。ハッキリと強い出汁に、極太でジューシーなネギ、筋肉質な地鶏がたっぷりと含まれており、日本料理のお椀として相当に美味しい1杯でした。
それにしても、ごく少量のそば1枚が1,000円を超えるのに、食べ応えのあるお椀が650円というのは難度の高い価格設定ですね。ある意味ランチで1,000円の蕎麦を食べるよりも、ディナーで10,000円の蕎麦懐石を食べた方が満足度は高いかもしれません。
蕎麦湯は真っ白でドロドロ系。いわゆる蕎麦湯というよりは蕎麦粉を溶いて調味したようなタイプでした。
お会計はひとりあたり3千円弱と、非常に割高に感じました。もちろん蕎麦という食べ物はそういうものであるとは理解しているのですが、私は蕎麦についてはド素人であるため、上級と最上級の差にそれだけの金額的な価値を見出すことがどうしてもできない。3千円もあれば死ぬほど旨いハンバーガーがビール付きで楽しめるじゃん、とかすぐに考えてしまうのです。
一方で、蕎麦の最高峰は千円やそこらで食べることができますが、他の食べ物、例えばハンバーガーであれば数万円、フランス料理であれば数十万円を要することを考えると、それはそれでこの体験はお買い得なのかもしれません。そもそもミシュラン1ツ星店での食事が1,000円で済むこと自体が驚異的。
いずれにせよ、私のような蕎麦への理解が足りない人間が訪れても費用対効果は悪く感じるお店です。ハイアマチュア以上の方でどうぞ。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。