通りに面しているわけではなく、路地というか建物の通路というか、やや奥まったところにあるので見つけづらい。また、外観が良くも悪くも立ち喰い蕎麦屋には見えないため、その発見の難しさに輪をかけています。
店内もカフェというかバルというか、不思議な空間です。壁にはアメリカンな現代アートのポスターが貼られており、なるほど店名の「うさ」は「USA」に由来しているのではないか。
食券を買いカウンターのスタッフに渡すと「4番でお呼びします」と告げられ、先に席を確保し数分待つ。平日12:40で4割程度の入りであり、港屋ほど破滅的に行列しているわけではありません。
最高値の「スタミナ冷そば」を注文。900円に大盛り100円プラスして合計1,000円です。刻み海苔の量が尋常ではなく、常人が年間に摂取する量を遥かに超えた盛り付け。まるでニコライ・バーグマンの作品のようです。
肉の下に敷き詰められたペースト(?)状の茶色い物体は牛スジ。甘辛く味付けられホロホロと柔らかく煮込まれており、これだけで立派な酒のツマミである。
蕎麦はいわゆる田舎蕎麦。香りが強くワッシャワッシャとした食べ応えであり、更科蕎麦と同じジャンルの料理とは考えられないほど個性的な麺です。
つけ汁は酷く甘い。すき焼きの割り下のようにテロッテロに甘く、インスパイアとは言え港屋とは似ても似つかない。好みの問題でしょうが、私のタイプからはかけ離れており、中盤以降は苦痛を感じる程でした。
付随する生卵は白身がビシャビシャであり、あまり質が良いとは思えません。つけ汁に投入するといくらか甘味がマイルドになり、味変には成功したと言えよう。
カウンターにはポットに入った蕎麦湯が。強い味覚は甘味だけではなく、醤油味や塩味も強烈なので、上手く自分好みに調整しましょう。
なるほど確かに中毒性は認められ、一部の人にとっては病みつきになる味わいなのは理解できました。が、私にとっては無理めな1杯。「バジル冷そば」など更に気合いの入ったメニューも人気のようなのですが、やはりあの莫大な甘さを前にするとどうしても没交渉状態に陥ってしまう。私は苦手ですが、好きな人には堪らない料理かもしれないので、新しい試みを見学しにいくつもりでどうぞ。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。