ル・ジャルダン・デ・サヴール(Le jardin des saveurs)/東銀座

1991年オープンと、銀座では老舗の部類に入るフランス料理店。店名は『風味の庭』を意味し、かのミッシェル・ブラスが名付け親とのこと。食べログでは4.25(2018年10月)の銅メダル獲得と、かなりの高評価店。
階段を地下に降りると鉄板焼き屋のような半円形のカウンター席。まさにシェフズテーブルであり、厨房の中で食べているかのような臨場感を楽しむことができます。ワインの持ち込みは可能なのですが、抜栓料は1本5,940円と極めて高価。
アミューズは水ダコと白菜を固めたもの。水ダコの歯ごたえと白菜の甘味が手を取り合う。ソースはルイユ。ブイヤベース用のソースで彩りを添えるのですが、調味が薄く存在感は小さかったです。
パンとバターのレベルが高い。供されるごとにオーブンで温めてもらえるため、小麦の温まった香りが鼻腔をくすぐる。
ミッシェル・ブラス直伝、スペシャリテのガルグイユ。野菜がいっしょくたになって茹でられ同じ味付けでまとめられています。 なのですが、彼のガルグイユってこんなでしたっけ?もっともっと野菜の種類が多く、素材ごとに調理方法も違ったような気がするのですが。少なくとも洞爺湖においては
メインは肉か魚を選ぶことができるのですが、そのどちらにするかの判断を来店の2日前に電話で求められました。うーん、それは当日の体調と相談させて欲しい。自分の料理さえも決めきれないのに、同伴者の2日後の気分を推し測ることなどまず不可能でしょう。そのため魚と肉をひとつづつお願いしておき、当日連れに好きなほうを選んでもらい、残りを私が食べるという作戦を採用するしかないのです。が、この魚料理はどう考えても事前に準備を要するものとは思えず、なぜそのような不自由を客に強いるのかが疑問でなりません。
さて、結果として私のメインディッシュは『和牛ほほ肉の赤ワイン煮込み』と相成りました。色々と複雑な心境を上記に吐露しましたが、この肉料理は実に美味しかった。繊維の1本1本まで確認できるほどホロりと柔らかく煮込まれており、ワインと深みのある脂の味覚が素晴らしい。付け合わせのニンジンなどのレベルも高く、ピッチリとパンでソースを1滴残らず拭い、その皿の白さは洗浄する必要もないほどです。

が、ここでサービスが謎の行動に。我々は完全に食事が終わり、また、グラス内には炭酸水がまだまだ残っているというのに、我々に断りもなしに新しい炭酸水のボトルを開け、そしらぬ顔で伝票に追加料金をつけているのです。何をするだァーッ!意図的であればあまりにセコいし、無意識であればあまりに周りが見えていなさすぎる。いずれに転んでも陳腐極まりない接客態度です。
デザートはカルダモン風味レモンのゼリーにハチミツとミルクのアイスクリーム。アイスがいいですね。ハチミツの高貴な甘味と牛乳のコクがベストマッチ。ゼリーは美味しいは美味しいのですが、量が多くやや大味に感じてしまいました。
コーヒーが抜群に旨い。純喫茶で1,000円くらい近い金額で出されても妥当なほどレベルの高い1杯です。冷蔵庫から豆を出し、その場で豆を挽きと、やはり手間と執念は味に直結するのだ。

料理そのものはクラシックど真ん中で私好み。ただしメインを数日前に決めなければならない不自由さと謎の水事件を考えると手放しで人に勧めることはできません。また、やたら『ミッシェル・ブラスの薫陶を受けた』とのアピールがありますが、彼のコンテンポラリーな料理のベクトルとはまるで異なるように感じました。料理そのものは美味しいのに、なんだか色々ともったいないなあ。


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