内装はステンレスやコンクリートが中心のモノトーンであり、まるで気鋭のデザインオフィスのよう。BGMはプログレ早弾きが響いたかと思えばどクラシックになったり、ディズニーランドみたいな曲になったりと、とりとめのない選曲です。窓から望む木々は桜であり、桜が満開の時期にはコース料理がめちゃんこ値上がりするそうな。
店名に繋がるのか、クラフトビールが3種も用意されていました。私はスコットランドのIPAを注文。苦味はきちんと保持しながらフルーティさも感じられる素晴らしい1杯です。
まずは水ナス。カラマンシー(柑橘類の一種)のビネガーを用いて味覚を整理しており、そのさっぱりとした味わいはコースの導入として最適です。
灰色の皿に灰色の食べ物。これはちょっとオードを想起してしまう。肉は鶏のササミ肉。ソースにはトリュフ、灰色のアイス(?)は焦がしナスを用いているそうな。外観としては楽しめるのですが、トリュフの香りは乏しくササミ肉の味わいもシンプルであり、別段記憶には残りませんでした。
賀茂ナスを鴨の出汁に漬け込み、鴨の砂肝とフォアグラをトッピング。おお、これは美味しいですね。ジュワっとジューシーなナスに強い旨味を湛えたフォアが突き抜ける。酒が進む逸品です。
マスカットをイメージ(?)した一皿。球体の中にはオレンジ色のムースが詰め込まれており、その素材はオマール。右奥の塊はオマールの身と赤玉ねぎなど。 デラウェア(ブドウの一種)や海ブドウ、サワークリーム、ヴェルヴェーヌ、レモンバーベナなど多種多様な味覚を詰め込むのですが、残念ながら全然美味しくありません。素材をあまりにこねくり回しすぎ、結果として何を主張したいのかがさっぱりわからない一皿です。
パンという位置づけで供されたレーズンサンド。塩気の強いオリーブも挟まれており、パンというよりもひとつの完成した料理として美味しかった。
魚はスジアラ。ハタやクエに似た魚であり弾力が自慢なはずなのですが、水分や旨味が抜けておりボソボソとした食感です。アルゴリズムで同時期に食べたスジアラとはまるで違う魚のようでした。ただし皮目ならびにサンマを丸ごと用いたソースは旨味と苦みがきいておりグッドです。
右奥にはマコモダケともち米が朴葉に包まれており、その場で葉に火をつけるというパフォーマンス。色々やりたい気持ちはわからなくもないですが、肝心の味が大して美味しくなかった。
あまり気乗りしなくなったので、魚料理と肉料理を1杯でまとめてもらいました。ソノマのピノであり、パワフルながら繊細さも感じられ、これが1杯1,600円というのは悪くないディールです。
メインは北海道のマンガリッツァ豚。筋肉質ながらミルキーな甘味も含んでおり美味。ピーナッツと卵黄を用いたソースは先鋭的なピーナッツバターのような味覚でした。
サラダは別皿で。セルバチコの強い苦味がお口直しにちょうど良し。
こちらもパンという位置づけで、全粒粉の麺が付随します。先のソースに絡めるとアラ不思議、今風の担々麺のような味わいに。歯ごたえや小麦の香りも良く好きなタイプです。
デザートはクリとチョコレートを主体にしたもの、と事前に伺っていたのですが、小菓子のようなサイズのものがチョコチョコとある程度であり、食べ応えに乏しい。中央のモンブラン的なクリームは生姜の風味がきいており面白かった。
コーヒーのレベルは非常に高い。きちんとしたマシンで豆から挽くタイプであり、店の雰囲気を含めてコーヒーが自慢のカフェにも転業できるレベルです。
以上で12,000円。ネオビストロっぽい芸風で中目黒的ではあるのですが、良くも悪くもイマドキです。広尾のオードにパっと見似ているのですが、食後感はまるで異なる。
料理を出すリズムも悪すぎます。変わった造形・変わった調味が多く面白くはあるのですが、本質的な美食として記憶には残らない。もっと皿数を絞って提供スピードを高め、加えて何を食べたか理解のし易い料理に傾けるべきではないか。量も少ない。供出されるパンの量には規定があり、パンをおかわりして腹を膨らませるという作戦にも出ることができず、帰路でおにやんまに立ち寄ろうかと本気で悩んだほどでした。
ただ、サービス陣の感じは良く、料理についてもところどころ光る部分はあったので、ある日突然ガラガラポンして印象が変わる可能性もあります。何年後かに改めて訪れてみようっと。
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