白を基調とした円みのある雰囲気の内装。店名の『ラ クレリエール(La Clairière)』は森林に降り注ぐ陽の光を意味し、柔らかな光が窓から差し込んできます。
アミューズはミニバーガー。ブリオッシュ調のバンズに鹿の血で作ったブータンノワールとリンゴ。頭の先から爪先まで正しく設計された味わい。アミューズでこの完成度の高さには脱帽。仄かに温かいのも嬉しいです。
カリフラワーに、それを用いたヴルーテソース。見た目以上に旨味が強く、また、カリフラワーの風味もしっかりと感じられ、序盤に頂くに理想的な1皿です。
ニース風サラダ?私の知っているそれとは大掛かりに異なります。味の濃いカマスに芯のある味わいのナス。オリーブのソースも強固な味わいであり、小さいポーションながらも存在感のある1皿。
パンがすごく美味しい。ザクザクとした食感で小麦の風味が強烈。レストランで頂くものとしては最高レベルの美味しさでした。
スープ・ド・ポワソン(魚のスープ)。甲殻類の味覚が支配的であり、スープというよりもソースに近い。エビマシュランとして絶頂に達した瞬間です。中央はブランダードという魚(タラ?)のコロッケ。隠し味に白味噌を入れてみたりと、技巧に満ちた料理です。
連れはメインにスズキを選択。赤ワインソースがビタっと映えポーションも大きい。これだけの迫力があればメインに位置付けたとしても不足は無いでしょう。
私のメインはテリーヌ。鴨のコンフィを主軸に添え、ジャガイモや根セロリを敷き詰め最後にベーコンで包みます。鴨の力強い味わいに手堅い調味。非常にわかり易い味覚です。また、秋の食材を用いた付け合わせが絶品。仮に私が犬であれば、尻尾は筋肉痛になることでしょう。
甘味に入ります。まずはグラニテでお口を調えましょう。キンモクセイの香りがふわっと。
スポンジ生地に栗の甘露煮、たっぷりの栗のソース。もったりと胃袋に侵入し、非常に食べ応えのある一品です。兎にも角にも栗の味。
食後にはいくつかのお茶やコーヒーから好みのものをチョイス。私はコーヒー。コース料理を締めくくるに相応しい、折り目正しい味わいでした。
小菓子としてフロランタン、カヌレ、マカロン。フロランタンとはクッキー生地にキャラメルでコーティングしたナッツをのせて焼くお菓子。アーモンドの芳醇な風味がグッド。カヌレとマカロンは水分が飛んでおりカリカリのパサパサであまり好きなタイプではありませんでした。
コーヒーの後、追加でミント風味のお茶もお出し頂けました。優しいなあ。
これだけ上質な料理を食べて4,800円。倍請求されても文句はありません。信じがたい費用対効果の高さですが、その理由は無理に高級食材を用いたりせず旬のものを適切に活用しているからでしょう。最後にシェフが挨拶に来て下さるましたが、真面目一徹、チャラつき要素は全くない、料理人としての理想形とも言える姿勢を感じました。
ちなみに前夜は友人のワインセラーの衣替え。豪華な二日酔いを抱えていたため、この食事は炭酸水しか受け付けなかったのが悔やまれる。次回はディナーに、しっかりとワインを合わせて楽しみたいと思います。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。
ラ クレリエール