ル スプートニク(le sputnik)/六本木

六本木の裏路地にある当店。店名の由来はもちろん旧ソ連による世界初の無人人工衛星。s髙橋雄二郎シェフはフランスの3ツ星レストラン「ルドワイヤ」をはじめ、ビストロ、パティスリー、ブーランジュリなどで研鑽を重ねた後、代官山の「ル・ジュー・ドゥ・ラシエット」で1ツ星を獲得。2015年7月、晴れて六本木の地で独立開業しました。
ランチでの訪問。12時オープンで、12時ピッタリでないと扉は開かないのでご注意を。私は5分ほど前に到着したのですが、35℃を超える中を外で待たねばならないのは辛かった。

店内はカフェのような雰囲気。クロスはなく、半ズボンやサンダルで来る男たちもいたので、値段の割に想像を絶するカジュアルさです。
ボトルのシャンパーニュが結構高かったので、グラスでも2,000円を超えるかなあと思いきや、後から明細を確認すると1杯1,800円でした。グイっとのんでプハーとポジティブな溜息。畢竟、夏とはシャンパーニュである。
最初の一口目は甘鯛。熟成させたものであり、ネットリとした食感と甘味はまるで甘海老のよう。内部には桃が閉じ込められており、優しく旨い一口です。
稚鮎を揚げたもの。ほろ苦い味わいが大人のデートを演出します。身に纏った紐や台座となっているワシャワシャしたものはゴボウ。もちろん食べることができ、しっかりと味付けもされているため、料理と料理の間の場繋ぎに最適でした。
ペアリングは5杯で6,500円~。それだけ考えると悪く無い値段なのですが、食事の価格(後述)と比べるとバランスが悪い。大阪アニエルドールでのランチを思い出しました。
フォアグラのフランに青リンゴのジュレ、飛び出るトゲは根セロリです。皿が思いのほか深く、結構なボリュームです。甘味が強くお菓子のような口当たり。
あわせるワインは甲州100%。ワインそのものとしては決して悪く無いのですが、やはりフォアグラにあわせるのであれば、もう少しパンチのある白を飲みたかったです。
パンは良くある普通に美味しいバゲットです。皿数の多いランチ、かつ、先のゴボウをポリポリと食べ続けていたので、あまり手をつけず。
ヤリイカにニンジンにビーツ(?)。居酒屋のイカの丸焼きてきな勢いのある味覚であり日本酒が欲しくなる。
こちらもワイン単体では好きなのですが、料理に合うかどうかと問われれば微妙でした。当店の酒の合わせ方は私の好みではないのかもしれません。ボトルで注文すれば良かったなあ。
これは面白い。キノコのクレープです。中にはポーチドエッグにジロール茸がギッシリと詰まっています。ソースはアイスクリーム仕立てであり、トリュフの使い方も的確。見かけとは裏腹にどっしりと存在感のある料理であり、実に美味しかったです。
魚料理は金目鯛。キャベツに包まれ、また、発酵キャベツのソースが料理に彩りを添えます。素材それぞれの味覚は正しいのですが、全体としてのまとまりはなく、構成要素がバラバラに感じました。
ボルドーの白。ワインとしては好きなのですが、やはり料理にはしっくり来ないような気がしました。私とはワインに対する考え方が異なるのかもしれません。
メインは鹿のモモ肉のシンタマ、ひいてはシンシン部分です。脂肪が少ない部位であり火入れの調律が難しいものなのですが、完全無欠に美味しい料理でした。クリアだが迫力のある味わい。情熱的かつ緻密。ピオーネ(ブドウ)のローストや小タマネギの付け合せもグッド。本日ダントツ一番のお皿です。
合わせるワインはコチラ。名誉挽回、大トリにしてピッタシカンカンのマリアージュです。アルコール度数が高くグイっと鹿肉を開かせる役割を果たしてくれました。
デザートは面白い形状で、
オレンジのアイスを土台として、ショコラのつなぎ目と共に五重塔状態。目にも楽しく味わいも確かであり大満足の甘味です。
小菓子は和三盆を用いたシュークリームにほうじ茶のプリン。シュークリームは思いのほかカリっとした食感が美味。プリンにも塩気を足して変化を楽しめました。
ここまで食べて、料理代金は6,500円と非常にリーズナブル。ただし泡やらペアリングやらがつくと、途端にひとり2万円近くまで跳ね上がります。

となると、やはりこのカジュアルな雰囲気はどうなのでしょう。ドレスコードなど全く無く、グループ客が手を叩いてゲラゲラと高笑いしてもスタッフからはお咎め無し。しまいには一眼レフを取り出してバッシャバッシャ撮影会を始めてしまうという居酒屋以下の有様です。これでは接待や記念日では間違っても使うことができません。料理の味はすごく良く、費用対効果も悪く無いのにもったいない。


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六本木は難しい街です。おっと思えるリーズナブルな店から、高くてギラギラしてるだけのハリボテのようなお店も多い。私が好きなお店は下記の通りです。
レストランの在り方に迫るというよりは、六本木の今にクローズアップした特集。ラグジュアリーで儚い夜の街へと誘うガイドブック。紙媒体は売り切れちゃうのでお早めに。