懐石推しなだけあって、テーブル席や個室も多く、トータルで60席。鮨屋としてはかなりの大箱です。接待や結納などのスペシャルイベントにも使い勝手が良さそう。我々はにぎりのみを頂くコースにしたため、カウンター席を陣取ることができました。大きな窓から入り込むグリーンと陽の光があげぽよです。
当店はワインや日本酒とのペアリングが自慢なのですが、酒代が恐ろしく高い。シャンパーニュはグラスで2,000円~、居酒屋で出すような日本酒が1合2,000円超と、外資系ラグジュアリーホテル並の値付けです。加えて夜はサービス料も取る。すっかり毒気を抜かれた私は、まあ昼だし、と自分に言い訳をし、ビール1杯に留めました。それでもこのサイズで1,000円です。
にぎり12貫1万円コースを注文。それでも前菜はお出し頂けます。地のもののきゅうりにイチヂクを揚げたもの。キュウリの味わいは中くらいですが、イチヂクが素晴らしいですね。熱を持つことにより旨味と甘味が増し、凝縮感にも溢れています。先頭打者ホームラン。
鳴門のスズキ。適度な歯ごたえに適度な旨味。安定感のあるタネでした。
ちなみに当店の酢飯は合わせ酢に砂糖を使わず、宮崎の伝統野菜「黒皮かぼちゃ」からひいた出汁を合わせているそうな。
アラ(クエ)のエンガワ。アラは高級なだけでそれほど美味しくないようなあ、というのがこれまでの印象だったのですが、当店のそれはイケました。筋肉質な食感に噛むごとに溢れ出す旨味。
中トロ。良くも悪くもベーシックに美味しいです。
こちらは大トロ。文句なしに美味しいのですが、宮崎まで来て食べる驚きはありません。
ガリがいいですねえ。薄切りではなく個体を保ったタイプであり、甘味と酸味のちょうど良いバランスとシャクシャクした歯ごたえがグッドです。
コハダは2枚漬けで。漬け時間が長いのか若干酸味が悪目立ちしてしまい、コハダそのものの味わいは楽しむことができず。
このアジは旨いぞ。ガシガシとマッチョな食感で非常に食べ応えがあり、矛盾するようですがトロリとした脂も保持しています。とにかく香りが良く、先のマグロブラザーズよりもこっちのほうが全然好き。
ノドグロ。直接炙るのではなく、一旦焼き網をカチカチに焼いてから余熱で焼き目をつけていました。ジュジュっとジューシーな脂に食欲をそそる焼き目の香ばしさ。ユズの風味も隠されており、本日一番のにぎりです。
クルマエビはヅケで。しっかりと火入れがなされており、プリっと弾ける食感です。甲殻類独特の香りと甘味にキュンキュンしちゃう。
電卓ほどの大きさのある蒸しアワビ。まずはツマミとしてタネだけをパクり。うむ、旨い。これこれこの歯ごたえと磯の香り。
アワビの握りです。細かく包丁が入っており、舌に張り付く美味しさでした。
唐津の赤ウニは軍艦でなくにぎりで。それほど濃厚な個体ではなく、意外にコンパクトな味わいです。なるほど海苔で巻いてしまえばその風味に負けてしまうのでにぎりにしたのかと邪推する。
鉄火と見せかけて、トロやら何やらが盛りだくさんに詰まっています。シャリよりもタネのほうが占有率が高いという幸せの極み。海苔の風味もすごくいい。
アナゴ。ボテっとしたポーションを一口で頬張る。ホロホロと舌先でシャリと共に溶けていき、思わず笑みがこぼれます。
お椀は魚介の何かというわけではなく、どストレートな味噌汁でした。
玉子はスイーツのような甘味と食感があるのですが、若干魚のような味わいも見受けられ、興味深い一口でした。
柚子シャーベットはシンプルな味わい。ちょこっと果肉(皮)が入っているのがアクセントに良い。
以上、料理10,000円にビール1,000円と税で、ひとりあたり1.2万円と少しといったところ。これだけ上質なにぎりを食べて10,000円ポッキリというのは見事な費用対効果です。一方で、いずれもどこかで食べたことのあるようなにぎりでもあり、驚きや感動といったものは見当たらなかった。東京であれば埋没してしまうかもしれません。
そういう意味で、当店ではやはり他の懐石料理と共に味わいのが良いのかもしれません。なんてったって、「鮨 torante(スシトランテ)」なのですから。
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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
- 東麻布天本/赤羽橋 ←欅坂46のような鮨。
- 鮨水谷/銀座 ←その先入観を完全に覆す、鳥肌が立ち涙が出るほどの美味。
- 紀尾井町 三谷/永田町 ←単純計算で年間3億円近い売上。恐ろしい鮨屋。
- 鮨舳/瓦町(高松) ←真っ当な江戸前。銀座の半額で何度でも通いたい。
- 天寿し/小倉 ←何度でも行きたいし、誰にでもオススメできるお店。
- 鮨 安吉/博多 ←お会計は銀座の半額。ミシュラン2ツ星は荷が重いけれども、この費用対効果は魅力的。
- ひでたか/すすきの ←鮨は好きだけどオタクではないライト層にとっては最高峰に位置づけられるお店。
- 鮨 田なべ/すすきの ←フォアボールで出塁した感じ。
- 鮨 志の助/新西金沢 ←とにもかくにも費用対効果が抜群すぎる。
- 小松弥助/金沢(石川) ←「まごころでにぎる」を体現する鮨屋。
- 太平寿し/野々市(石川) ←金沢の人が東京で鮨を食べると頭から湯気を出して怒るに違いない。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。