狩猟ならびに肉の解体・熟成・加工・流通までを一貫して行う北海道の食肉料理人集団『エレゾ』。
『生産狩猟部門(ELEZO・FARM)』『枝肉熟成流通部門(ELEZO・MARCHE・JAPON)』『シャルキュトリ製造部門(ELEZO・PARTY)』『レストラン部門(ELEZO・TABLE)』の4ブランド構成であり、今回はそのレストラン部門が展開する松涛の『エレゾハウス』へ。ちなみにスタッフ全員が料理人兼ハンターらしいです。話題づくりのためか、色々とややこしいルールがあります。文面が日本国憲法のように難解(特に箇条書き2点目第2文)。私の拙い国語力では「食べログやRettyに料理の写真をアップするな」とだけ理解できました。
ちなみに『紹介制』とは謳っているものの、「東京カレンダーを見て」と言えば予約できたり、「一見さんウェルカム期間」などもあるので、実質的には誰でも行けるレストランです。
料理とワインでひとりあたり25,000円だったので、食事は15,000円、ワインは10,000円ぐらいの比率でしょうか。乾杯はグラスのシャンパーニュ。この後は全てオーストラリアのシロメ社のワインです。1皿目はコンソメ。南部鉄器のような器から恭しく注がれ、芳醇な香りが立ち込めます。ちなみに出汁のもとはエゾジカ。非常に筋肉質な味わいで旨味が強くスッポンのよう。コラーゲンを最初に飲んで、内蔵を保護する役割もあるそうな。
お次はエゾジカのブーダン・ノワール。豚ではなくエゾジカ。お味は上々。ブラインドで食べればエゾジカとは思えないチャーミングな味わいです。ちなみにエレゾは放牧豚も取り扱っているようなので、それを用いたブーダン・ノワールと食べ比べ、みたいなのをやるのも楽しいかもしれません。
シャルドネをアンフォラ(原始的な陶器みたいなやつ)で熟成させたもの。悪く無いですが、個人的には普通の木樽熟成のもののほうが好き。
北海道産の牡蠣に冒頭のエゾジカコンソメのジュレ、下に敷かれるのはカリフラワーのムースです。美味しいは美味しいのですが、冒頭のスープと全く同じ味なので、ときめきはありません。
シャルキュトリ盛り合わせ。手前は短角牛とフォアグラ、中は鹿の舌と心臓、奥は鹿にピスタチオ、左は短角牛のサラミです。鹿の舌と心臓がいいですね。トマトの風味が味蕾を刺激し、単調になりがちな盛り合わせに彩りを添えています。加えて山菜を用いたピクルスが地味に旨い。
ヴィオニエ。おお、これは好きだ。果物の盛り合わせを手渡されたような華やかな香りに樽熟成の香り。
鹿のサルシッチャに生ハム。サルシッチャがコンビニのフランクフルト級の容積を誇り食べ応え抜群。しかしながら非常に滑らかな口当たりであり繊細さすら感じます。味は濃くわかり易い調味。付け合せのラタトゥイユが名脇役。
ワインはピノ。非常にバランスが良く教科書のような味わいです。オーストラリアらしさは微塵も感じられず美味しかった。
メインはエゾジカのローストの食べ比べ。左はオス2歳モモ、中はメス2歳心臓、右はメス3歳背中です。それぞれ部位が異なるので比較はできませんが、個人的には左オス2歳モモのピュアな味わいに心を打たれました。このシルクのような口当たりに刺身のような噛み応えが本当に肉なのか、ひいては鹿なのかと思えるほど興味深い味わいです。
ワインはシラー+ヴィオニエ。ワイン単体としては深みがあって良いのですが、あれだけ肉を食べるのだからもっと迫力のある、例えばシラー単一とかボルドーブレンドのようなものと合わせたかった。
デザートはブドウのみ。うーん、これは物足りない。そういえばパンも一切出なかったな。シャルキュトリと合わせて食べれば旨いだろうに。
コーヒーを飲んでごちそうさまでした。先にも述べましたが、お会計は料理とワインでひとりあたり25,000円。これはめちゃくちゃ高い。ハコも料理もワインもサービスも完璧なフロリレージュと変わりません。感覚的には8,000円の料理に5,000円のペアリングで税サ加えて15,000円ぐらいの印象です。
料理は美味しいは美味しいのですが、エゾジカが続きに続いて正直飽きます。「いや、そもそもそういうコンセプトの店だから」というツッコミはおっしゃる通りなのですが、ジビエ主体であったとしても、例えばラチュレのような華やかさがあっても良いのではないか。
「紹介制」を謳う排他性や狩猟に拘る教条主義を鑑みると、ちょっと普通には取り扱い辛いレストランです。一回転したスーパーグルメの方は、話のタネに是非どうぞ。
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