豚組(ぶたぐみ)/西麻布

豚組食堂の記事を読み、わざわざ連絡をくれた女の子。そのとき彼女は1泊10万円の某ラグジュアリーホテルにひとりで滞在しており、「このホテルにはバーが無いの!信じられない!」と、暇と寂しさを電話で埋める私。「明日東京に戻るんで、ばんごはん行きましょ!豚組いってみたい!」
六本木住民の間でカルト的な人気を誇るトンカツ屋「豚組」。西麻布の交差点から徒歩数分の路地にある古民家。妙な点が多く色々と傷ついた合コン会場の「豚組 しゃぶ庵」や六本木ヒルズ内の「豚組食堂」は系列店です。

ちなみに彼女は六本木ヒルズ在住なので徒歩、私は十番から港区シェアサイクルで、と、ご近所感が堪りません。「羽田から荷物置きに一旦帰ったんですけど、タクシーですごく渋滞しちゃって。お会計の時、運転手さんがお詫びにって、1,000円返金しようとするんです。渋滞なのは運転手さんのせいじゃないから、もちろんお断りしましたけど」この対応は彼女の美貌があればこそ。
ランチはもちろんのこと、ディナーでも時間帯によっては行列が生じる人気店。我々は平日20時にお邪魔し、なんとかラスト1席に滑り込むことができました。図らずも2Fのテラス席という特等席への案内です。
シェフはトンカツ屋→フランス料理店→トンカツ屋という変わった経歴。なんでも「単品勝負」の奥深さに惹かれ、彼にしかできない「究極のとんかつ」を目指しているそうな。
地方の雰囲気の良い居酒屋のような趣きがあり、ついつい酒に誘われる。ボトルワインは2,900円~と気軽な値付けであり、周りを見渡すとワインを飲んでいるゲストも多かった。もちろん「水でいいです」でも問題ない雰囲気です。
お通しとして供される3口。奥のトマトの熟度と調味が見事であり、また、手前の角切り叉焼(?)も美味。アミューズでこのレベルの高さ。今後の展開が期待されます。
注文後20分ほど経って(トンカツは時間のかかる料理だ)、選手が出揃いました。キャベツ、ごはんのおかわり無料はもちろんのこと、豚組食堂と異なり漬物や赤出汁もフリーフローと気前が良い。
契約農家で減農薬栽培されたキャベツ。注文の度に千切りにして供されます。実にフレッシュで瑞々しく、シャクシャクとした食べ応えがグッド。育ちの良さが伺えます。キャベツが専用ドレッシングで食べても良し、トンカツソースで食べても良し。彼女は店ごと買える財を成したはずなのに、無料のキャベツを美味しい美味しいと延々食べ続ける姿が妙に愛らしい。
赤出汁。この日の具材はシジミであり、海のエキスがたっぷり浸出しておりグッド。全体を通して山椒の風味が効いており堪らなく美味しい。おかわり無料をいいことに都合3杯も飲んでしまいました。

「次の旅行先はどこがいいかなあ」と助言を求められたので、ドブロブニクを拠点に中欧を巡る旅を提案。「あ、それいいかも」と、その場でエアチケットとホテルの予約を完了。経験者(私)の推薦を信じ即決。仕事ができるか否かとは、畢竟、決断力が全てである。
ゴハンにもこだわりアリ。新潟県津南の契約農家が栽培する魚沼産コシヒカリを直前に精米し、ガス釜でふっくらと炊きあげているとのこと。米の甘い香りが心地よく、アタックは固めの歯ざわりながら、噛むごとに強い粘りを感じます。つまり、極上。トンカツの聖地マンジェもそうですが、やはり名店中の名店はサイドメニューが素晴らしい。
予想通り漬物も抜群に旨い。いぶりがっこなど、高級居酒屋の同等かそれ以上のクオリティであり、それを無料でおかわりOKなど、もはや慈善事業の域である。これだけをツマミに酒をバンバンいけまっせ。

「ついでもフランスにも立ち寄ろうっと。スーツケース持ち歩くの面倒だから、移動は全部配送してもらうかなあ」それはやめたほうがいい。フランス人の配達能力はマクドナルドのメニューの写真ぐらい信用に値しない。
連れは「なっとく豚」のフィレを注文。岐阜県飛騨は堀田農産からの提供。豚組が絶対の自信を持ってオススメするNo.1ブランド豚とのこと。

彼女と1切れ交換こしましたが、なるほどフィレ肉ならではの柔らかい肉質とサッパリと軽快な脂のキレ。加えて深みのある旨味も感じられ、サクサクと軽やかな衣と共に見事な味わいでした。
私は「琉香豚(りゅうかとん)」の厚切りロースを注文。沖縄と言えば「アグー」ですが、コチラはハーブを食べてのんびりと育てられた健康優良児。ロースの割にサッパリとした脂であり、程よい甘味とのバランスが心地よい。
旨いトンカツをツマミにゆっくりと飲み、豊かな2時間半を過ごすことができました。のんびり食べても店員は少しも嫌な顔はせず、むしろ長居できる居心地の良を提供することに誇りを持っているように感じました。

トンカツの美味しさはもちろんのこと、ライスや赤出汁、付け合せを含めて全てが高次元に仕上がっており、ベクトルとしては私が愛してやまないマンジェのそれに近い。2018年7月時点において、タケマシュラン東のトンカツ横綱です。お酒を楽しみながらのんびりどうぞ。

ちなみに彼女の移動は全てエコノミークラス。また、手続き中にホテル代が変動し、ほんのいくらか高くなっただけで絶望的に悔しがっています。彼女の良いところはこの庶民感覚だ。無駄を嫌い、決して見栄を張ることはなく、自分にとって価値があることに心血を注ぐ。イイ女である。仮に彼女が1兆円を手にしたとしても、私と肩を組んで鳥貴族に行ってくれることでしょう。


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