バルト海クルーズ/MSC Preziosa

30代半ばという年齢の割には多くのクルーズ旅行を経験している私。

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しかしながらクルーズ業界の巨人「MSC」の船については未経験。したがって今回は航路の魅力もさることながら、「MSC」を経験することに重きを置いたクルーズ旅行です。
コペンハーゲンのOcean Quay Cruise Terminalへ。市街地からは少し離れておりタクシーで向かうのが一般的でしょう。が、我々は前泊していたホテルすぐそばのバス停から27番系統に乗り込み、十数分で難なくたどり着くことができました。
スーツケースの預け入れから手荷物検査、チェックインまでの流れが極めてスムーズです。乗船後も流れるようにドリンクパッケージの押し売りやエクスカージョンの申し込み会場へと案内され、このオペレーションレベルの高さは並大抵のものではない。
コスタ座礁事故から察するにイタリア船は運用が適当だろうと高をくくっていたのですが、考えを改めました。後から知ったのですが、MSCはイタリアの船会社で間違いないものの、本社はスイスに所在しており、裏で色々と仕切っているのはスイス人ではないかと邪推してしまう。全体を通してシステマティックで、エンタテインメントが盛りだくさんのクルーズ船というよりは、単なる動くホテルという印象であり、どこかそっけなく味気ない。
ところで、デンマークから出航するイタリア船であるためか、乗客の人種構成がこれまでにないほどバラバラなのが面白かったです。案内表示やアナウンスが常に6言語で対応されており、特定の人種が雰囲気を仕切っていることはなく、コスモポリタニズムを肌で感じる客船でした。
一方で、アメリカ人が少ないためか、乗客全体としてのテンションは控えめです。やはりアメリカ人のノリの良さは偉大である。エレベーターに乗っただけで何処から来ただの何をしただの赤の他人とどうでも良い話をし始め、イベントとなれば全力で取り組み、店員からの売り込みに対しても心を込めて雑談する。
アメリカ系の船であれば船内にアイススケート場やロッククライミング、人工の波を吹き出すサーフィン場などがあり毎日がお祭り騒ぎなのですが、当船の特徴的な設備は実用に耐えない小さなボーリング場と、寒さのため使用されていないウォータースライダーがあるのみでした。
プールやジムなどは他のクルーズ船と同等であるものの、
ライブラリーの蔵書が貧困層であるのが読書家の私としては悲しかった。
また、アメリカの船会社であれば船長やクルーズディレクターはスター扱いされており、彼らの個性がその航路における重要な要素であったりするのですが、当船については従業員の個性を前面に押し出したりすることは一切なく、良くも悪くも顔の見えない運航でした。これは好みの問題かもしれませんが、このような人間味の欠けた船旅には私としては愛着を持ちづらい。やはりクルーズ旅行という非日常の演出は、世界のエンタテインメントの覇権を握ったアメリカ人に任せるのが一番なのかもしれません。
飲食店のレベルが低かったのが心外でした。

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美食の国イタリアの船であるため提供される食事は一級品であることを期待していたのですが、肉料理魚料理はおろかシンプルなパスタでさえもアメリカ船のそれには遠く及びませんでした。加えて有料レストランが死ぬほど不味いためそれに逃げるという選択肢もなく、毎晩毎晩決まりきった出来損ないのイタリア料理に接しなければならないのが苦しかったです。
気に食わないのが金儲けの気配が濃厚であること。ノルウェイジャンほどではありませんが、レストランで水道水は出すことはなく常にミネラルウォーターの購入を要求するなど、ことあるごとに別料金の何かを売りつけようとしてきます。「クルーズ旅行はオールインクルーシブ」という黄金律はどこへやら。
また、船内にVenchi(ヴェンキ)というイタリアの老舗チョコレートブランドのジェラート屋が入居しており、他所のショップであるため別料金となるのは構わないのですが、驚いたのはサービス料までを要求されること。スプーンですくってカップに盛り付けるだけで15%のサービス料です。サービス料を要求する立ち食いのアイスクリームショップなど、世界広しと言えどもここだけでしょう。
沿岸の街に寄港する際、一般的なクルーズ会社であれば「○○という港の△△という埠頭に接岸予定。市街地まで少し距離があるので、無料のシャトルバスを用意します」との案内があるはずなのに、MSCに限っては街の名称のみの案内に留まり(そんなことは申し込み時点で知っている)、何が何でもエクスカージョンに誘導しようとし、歩ける距離であっても有料のシャトルバスに乗せようとしてきます。
もちろん、MSCがここまでつるセコに金を稼がなければならないのは、当船が「カジュアル船」だからでしょう。ゲスト全員が思い切りドレスアップして食事に臨むクルーズ旅行の醍醐味「フォーマルナイト」は用意されていたのですが、きちんとタキシードを着込んでいたのは私ぐらいのもの。いい年したオッサンがTシャツ短パンでメインダイニングをウロウロしてしており、そういう民度の船なんだと理解した瞬間です。
現在私はプリンセス・クルーズ社のエリートクラス(常連)ステータスを保持しており、支払金額は他社と同等であってもプリンセスに乗ったほうが得することが多い。これまであれこれと浮気をしてきましたが、今後のクルーズ旅行については全てプリンセス・クルーズ社1択にしようと決意した船旅でした。


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バルト海クルーズ目次
子育て中のイラストレーターが漫画でクルーズの素晴らしさを伝えてくれるエッセイです。クルーズ旅行って、高級なイメージがありますが、子連れなどの場合は総額では割安になることが多い。そのような事実や基礎知識を非常に解かり易く著している良本です。クルーズをまだ一度も経験したことが無い人が読むに打ってつけ。

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à la 麓屋(あら ふもとや)/三田

三田、もしくは田町駅から徒歩数分。飲食店がひしめく慶應仲通り商店街の一画にある創作系立ち食い蕎麦屋。何でも店主はフランス料理出身だとか。
入店してすぐの券売機で食券を購入し、正面のカウンターに提出すると調理が開始され、完成すると呼び出され、受け取りに向かうというシステム。食後は食器を自ら返却。半セルフサービス式です。
看板メニューである「コテリ」を注文。温か冷かを選ぶことができて、私は日本蕎麦は冷たい派。麺を大盛りにするとピッタリ1,000円でした。

ビジュアル的には蕎麦というよりもラーメン。スープ(?)が妙に甘く、黒コショウの風味がピリついているのが特徴的です。
蕎麦は細め。私は山形方面の極太ワシャワシャ系田舎蕎麦を好むので、当店のそれはあまりタイプではありません。また、後述しますがニンニクやらチャーシューやらの風味が強すぎるので、蕎麦の繊細な香りなどを感じ取ることができませんでした。
薬味のネギ、天カス、揚げニンニク。ネギはフレッシュで美味しく、天カスも食感に変化が生まれて良いのですが、揚げニンニクはどうにも頂けませんね。ここまで存在感のある薬味を用いる意図がわかりかねる。
味玉は普通に美味しい。有名ラーメン店のそれと同等の味わいです。
チャーシュー(?煮豚?)も美味しいのですが、味付けや香りがメッタメタに濃く、蕎麦には合わない。それ単体では美味しいほうなのにもったいない。
三田エリアでは屈指の人気を誇る蕎麦屋ではありますが、どうにも企画モノめいた空気を感じ、私の口には合いませんでした。あと、立ち食い的な雰囲気の割にちょっと高い。

選んだメニューが良くなかったのかなあ。次回はプレーンな蕎麦など、創作系から離れたものを注文し、蕎麦そのものを味わってみたいと思います。


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Eataly/MSC Preziosa

 MSC Preziosa号にある有料レストラン。2007年トリノで開業したイタリア食材販売ならびにレストランを手がける総合フードマーケット「Eataly(イータリー)」の出店です。日本への進出は三井物産系の会社が手がけており、日本橋三越や東京駅グランスタでの開業は大きく話題となりました。
Eatalyという名前は、英語のEATとITALYという2つの単語の組み合わせであり、「世界中の人々に最高品質のイタリア食材を知ってもらい、優れた食文化を促進することが私たちの目標です」と鼻息が荒い。
なのですが、メートル・ドテルに有料レストラン予約の相談をした際、少しばかり顔を曇らせ「Eatalyは有料となるがそれでも良いのか?」と全く姿勢が乗り気ではない。加えて「であれば店まで行って直接予約してくれ」と投げやりな対応。あまり有料レストランを推さない芸風なのかこの船は、と納得のいかない気持ちを抱えながら直接店舗を訪れ予約を入れる。
さて本番。予約時刻通りに店舗を訪れると、どうも照明が間引きされているような暗さがあり、些かの不安を抱えながらレセプショニストに予約名を告げる。100席近くあるレストランなのですが、予約表を覗き見ると4〜5組の名前しか認めることができませんでした。プリンセス・クルーズの有料レストランなんてテーブルの争奪戦でありキャンセル待ちまで生じるというのにこの差は何だ。しかも19時というゴールデンタイムに訪れたはずなのにゲストは我々だけであり、図らずも貸し切り状態です。
クルーズ船の一般的な有料レストランは20〜30ドルのカバーチャージが課金され、あとは注文し放題ということが殆どですが、当店はカバーチャージが不要な代わりに、1品ごとに課金されるアラカルト方式。
まずはイタリアのクラフトビールを750mlサイズで注文。アンバーらしさが漂う深みとコクがあり美味しかった。
パンはEatalyの紙袋に入れられているものの、恐らくはセントラルキッチン方式で焼かれたものであり、ビュッフェレストランで供されてるものと大差ありません。
前菜にブッラータ。ブッラータとはモッツァレラチーズにクリームが練りこまれたような感じのフレッシュチーズであり、私の最も好きなチーズのひとつなのですが、私の知っているブッラータとは全く趣を異にするものでうろたえる。
店員を呼び止めこれは本当にブッラータかと問い詰めると要領を得ない説明。であれば百聞は一見に如かずとばかりに「開けたパッケージを持ってきてくれ」とリクエストすると、そのパッケージには確かにブッラータと記載されていました。これでは完全にクレーマーではないか。

いや、こんなブッラータなんで見たことがない、もっと、こう、トロっとしてて、ストラチャテッラが流れ出てそうれはもうミルキーでジューシーなものなのに。恐らく一旦冷凍後、めちゃくちゃに解凍したものであり、水分が分離して流れ出てしまったからこんなにボソボソになったのでしょう。こんなブッラータは初めてです俺はクレーマーじゃないクレーマーじゃない。
イルプルポ。これはそう悪くありませんね。前日に食べたタコの煮込みとは全く異なる料理であり、一旦香ばしくグリルされたタコの食欲をそそる焦げた風味が堪らない。ソースは豆をすり潰した何かであり、不味くもなく旨くもなかった。
ピッツァ・マルゲリータはドミノ・ピザ級の味わい。船内の広告においては由緒正しきナポリ風の生地であったのに、我々が食したそれはピッツァではなくピザでした。しかも店員が4つに切り分けひとつづつ小皿に取り分け各人にサーブするという独特のおもてなし。
ボンゴレ。これは実に食欲を削ぐビジュアルです。ソフト麺のようなふやけきったパスタに全く油分が周っていない。恐らく当店の料理人は正解を知らないまま分量だけが記載されたレシピ通りに作成しているのでしょう。どうして客は我々しかいないのにこれだけ不味く作ることができるのか。
カルボナーラは更に地獄。ラーメン二郎ですら尻尾を巻いて逃げ出すほどピシりと角の立った極太麺です。ざくざくボソボソと食感は史上最悪であり、小麦粉の風味もへったくれもありません。

ソースは朝食のスクランブルエッグと大差なく、肉はグアンチャーレやパンチェッタなはずもなく、焦げきったベーコンの切れっ端がチョロチョロと加わっているのみ。カルボナーラの由来であるはずの黒胡椒は一切加わっておらず、絶対に味見をしていないだろう塩気の薄さ。一人暮らしを始めた学生が初めて作った料理にすら達していない味わいであり、先のボンゴレと同様、調理者はカルボナーラとはどのような料理か正解を知らないまま製作したとしか思えない完成度です。

以上、飲んで食べて1万円。メインダイニングでの食事に耐えかねて有料レストランに逃げた我々ですが、その先にはより一層の試練が待ち受けていました。日本のカプリチョーザのほうが数十倍美味しく、このクオリティであればサイゼリヤでミラノ風ドリアを30個食べたほうがまだマシというものです。
冒頭、予約名は4〜5組しか認めることができなかったと記載しましたが、これは航海を通しての予約数だったと確信。このような現実をEatalyは知っているのでしょうか。これまでの人生でトップクラスに酷いイタリア料理店でした。


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十年近く愛読している本です。ホームパーティがあれば常にこの本に立ち返る。前菜からドルチェまで最大公約数的な技術が網羅されており、これをなぞれば体面は保てます。

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ヴォメロ(Vomero)/東銀座


今日の女の子は毛色が異なります。

私の人との出会いは当ウェブサイトを通じて知り合う場合が多い。当然に美食という共通の趣味があり、また、是非はともかく私の価値観を理解した上で向こうから接触してくるため、出会った時には既に私に対して好意的なことがほとんどです。時間は有限であり、自分の好きな人とだけ付き合うことに決めた私にとって、当ウェブサイトは有能なフィルタとして機能しています。

しかし今日の彼女は当ウェブサイトの存在など全く知りません。ある会合で身長170cmというスタイルの良さに目を惹かれ、次に大学卒業と同時に即独立を果たしたという世界観に心を奪われ、純粋に彼女のことをもっと知りたいと思い、私から接触を図りました。ナンパではありません。
指定したお店は東銀座のイタリアン。店名はナポリ近郊の街の名前に由来し、当然に南イタリア料理やピッツァを得意とするお店です。
奥行きがあり、かつ、2階席もあるため、おそらく50席以上はあるでしょう。意外に大箱です。平日ランチのセットはいずれも1,000円かそこらであり、この立地でその価格設定はたいへんお買い得。近隣の会社員がひっきりなしに訪れ、行列が絶えることはありません。
ピッツァ・ランチ@1,280円を注文。お好きなピッツァに前菜とドリンクがつきます。写真はピーチティ。思いがけず甘いのが難点。シロップ抜きにすれば良かった。

「奥さん、怒ったりしないんですか?あたしと食事に行ったりして」言葉とは裏腹にそっけない態度で彼女は問う。怒ったりはしないよ。正確には、このようなことで嫉妬心を抱いたりすることのない女性を私が選んだ、という表現が適切でしょう。前妻は嫉妬の権化のような女であったため、それで充分に懲りたのです。古い例だと、高校生のころ付き合っていた子も同種の女であり、私が世界史資料集にあったポンパドゥール夫人を可愛いと評したところ、本気でブチギレられたことは、今となっては良い思い出です。
ピッツァ・ランチに自動的に付帯する前菜たち。オマケの割にはしっかりとした出来であり、フリッタータ(キッシュに似た卵料理)のベーシックな味わいがグッド。野菜もたっぷりです。
ピッツァ・チチニエッリ。具材はモッツァレラチーズにチェリートマト、バジリコ、シラスです。生地が正統的に美味しいですね。モチモチとした歯ごたえであり、記事そのものに味がある。

「確かに美人とか可愛い子とかに興味を持つのは、人として当然なことですもんね。美しいものを愛でて何が悪い」自分が美人だと知ってか知らずか、彼女はあっさりとそう述べます。「だいたい、そういうことに文句を言うのはブスばっかりですからね。可愛い女の子は基本的に性格良いですから」
ピッツァ・マルゲリータ。トマトソース、モッツァレラチーズ、バジリコです。まさに王道中の王道といった味わいであり、宇宙人にピッツァとは何かと問われた際に差し出したい味覚。

「付き合いで女子会には参加しますが、苦手ですね。愚痴ばっかりで、創造性のかけらもない。最近の世の中の面白くないことを言い続けて何が楽しいのかしら」
「女子会が生きがいのような子は、たいてい肌が乾燥しているんです。『出会いが無い』とか100%飛び出る愚痴なんですけど、そんなわけないし。今日もこうして、あるじゃないですか」確かに出会いはそこらへんに転がっているものであり、それが出会いだと認識する能力と、とりあえずは拾ってみようとする姿勢が重要なのでしょう。モテる秘訣とは、打席に立ち続けることなのかもしれません。


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