ダイエット中の連れ。表参道近辺で肉中心・ローカーボというリクエストを賜ったのでラチュレを提案。
彼女とのお出かけでは全てにおいて一番高いコースを指定されるのがクールですね。「だって、一食一食を最高のモノにしたいじゃん?粗悪なものには接したくない」
渋谷二丁目の地下。246から青山学院大学の横を並木橋方面に抜けるグルメな道沿いに位置します。いわゆる「シブニ」の辺りであり、このあたりラ・ブランシュ、ドンチッチョ、アバスク、琉球チャイニーズ TAMAなど人気のお店が百花繚乱。ランチであることも後押ししてか、客層が驚くほど若い。近場のリーマンの少し贅沢なランチとしても利用されており、親しみ易いミシュラン1ツ星店。室田シェフはタテルヨシノ出身。彼自身がハンターとして、自ら山に入り猟をして提供するそうな。
ランチは2,400円と4,800円の2種なのですが、グラスシャンパーニュ2千数百円、スパークリング1,000円、白800円~と謎の値付けです。連れと無言で頷き合い、グラスの白に留める。
彼女は大変なお金持ちでありシャンパーニュなどメゾンごと買えてしまうほどの財力を誇るのですが、価格設定に違和感を感じれば無駄金は一切払わない。このあたりの金銭感覚の一致が、私にとってはとても心地良いのです。
鹿の血のマカロン。土台は鹿の毛皮でできています。鹿の血がブーダンノワール的なペーストとなりマカロン生地に挟み込まれます。実に濃厚で官能的。「美魔女みたい」と、彼女は意味ありげに笑った。
雪の妖精(白トウモロコシ)のスープ。トウモロコシのスープはヘンに甘ったるくて前菜に出てくるとゲンナリすることが多いですが、当店のそれは品の良い甘さに整理されており、カニの旨味のアクセントと相俟って実に美味しかった。
「沖縄で大きくビジネスができそうなの」コンプガチャのように私の射幸心を煽る彼女。いいねえ、沖縄。大好きだよ。年がら年中ダイビング三昧。清潔なビーチに肌理の細かいビールの泡。空はどこまでも高く、海は凪いでいる。「ちょっとちょっと、戻って来て!凄い妄想してるけど、あなたを連れてくって、まだ言ってないからね」
カツオのタタキをアレンジ。ニンニクでマリネし(?)、ショウガのジュレが添えてあり、パウダー状に冷やされたガスパチョと共に爽やかに頂きます。魚そのものは想像通りの味覚だったのですが、オカヒジキやジュンサイの使い方の妙と言ったら無い。前衛的な和食店で出されても面白い一皿でした。
パンが素朴ながら結構旨い。小麦の旨味がギュっと詰まっており、いつの間にやら3個も食べてしまいました。
沖縄に活動拠点を移したとしても、忙しいのは変わり無いんでしょ?僕みたいに、一日中ぼんやりと海を眺めている男を癒し系担当として手元に置いておくのは悪くないアイデアだと思う、としつこく食い下がる。
スペシャリテのジビエタルト。本日はイノシシ、ヒグマ、シカ。アクセントにピスタチオ、脂の補充にフォアグラを用いているとのことでした。字面だけで見るとギョっとする濃厚さですが、冷製仕立てであるためか、意外にもスイスイと胃袋に収まります。このタルト、ホールで売ってくれないかなあ。ホームパーティのお土産でヒーローになれそう。
メインディッシュも勘案してグラスの赤。グルナッシュ主体で、1,000円、普通に美味しい。なんでシャンパーニュだけあんなに高値設定にしているのかと再び頭を抱えてしまう。
「確かにね。最近、色んな人と会う気がしないんだよね。好きな人と一緒に居れればそれでいいやと思っちゃってさ。普通のオッサンとなら、どんな高級レストランでのオゴリでも絶対に行かない。楽しい人とサイゼリヤ行くほうが断然楽しい」こうして彼女は沖融たる視野狭窄に浸っていく。
メインディッシュは牛頬肉の赤ワイン煮込み。私の身体のどの部分よりも柔らかな肉。脂身とのバランスも良く、クミンやコリアンダーの風味も記憶に残る味わいです。が、30℃を超える日のランチにはちょっと厳しい味覚。やはり当店の本懐は秋冬にある。いっそのこと、フグ料理屋のように夏と冬で丸っきり違う料理を出すのも面白いかもしれません。
デザートは桃のパフェ。熟し凝縮感のある桃にフロマージュフレならびにココナッツのアイスがベスト・マッチ。トップにのったメレンゲもシンプルに美味しく、この単体でパフェ屋として勝負できるクオリティの高さです。
「メレンゲ、すごく好き。この前のポール・ボキューズのウ・ア・ラ・ネージュの記事、すごく興奮したもん。ママがよく作ってくれたな。ハーゲンダッツのバニラ味をのせてね、好きなだけ食べるの。好きなだけ」手作りのメレンゲの焼き菓子とハーゲンダッツが常備される生家。
小菓子は焼きたてのフィナンシェ。まだ温かく、心のこもった最後の一口でした。
一通り食べ、グラスワインを白赤1杯づつで合計7,000円程度。その支払い金額とは思えないほどの質ならびに量であり、見事な費用対効果でした。従業員は驚くほど多く、皆、卒のない動きをしていたのも好印象。このハコの割に人件費大丈夫かとこちらが心配するほどです。
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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
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