五志喜（ごしき）／大街道（松山）

地元の友人に「どのレストラン行くつもりか」と問われ、五志喜（ごしき）、と答えると、「ああ、五志喜ねｗいいんじゃない？ｗｗｗ」と、微妙にワラ感のあるコメント。彼に言わせると、客の殆どは観光目的であり、松山の人間はまず行かないお店らしいです。「ただ、郷土料理は手頃な価格で一通り食べることができるから、観光地としては悪くないよ。行ってらっしゃいｗ」
観光地らしく11時オープン。このあと空港から機上の人となる身にとってはこの開店時間はありがたい。127席の大バコであり、団体客でなければ予約はまず要らないでしょう。
しかしながら、バカデカい箱なのに、なぜか相席の部屋に通されました。意図が全く不明です。部屋の入口付近にスタッフが常駐しており、ずっと客を見張っているのが落ち着かない。そのくせお茶はセルフサービス。あれだけ暇そうにしてるなら注いでくれたっていいじゃないか。
郷土満喫ランチを注文。3,680円です。メニュー上のコメントに「とにかく最強です」との表記があり、創業380年の老舗としてはあまりにチープな謳い文句である。

10品近くが供され、何がどう郷土なのか観光客の私にとってはわかりかねるのですが、ぶっきらぼうな店員はいくつかテキトーに説明するだけの塩対応。ダメな接客である。
鯛そうめん。姿身と切身で200円の差分がありますが、インスタ女子出身の私としては姿見を注文せざるを得ない。

さて、鯛麺とも呼ばれる瀬戸内海沿岸地域の郷土料理、鯛そうめん。愛媛ではお祝いの席に欠かせない料理とのこと。大皿にそうめんをさざ波のように盛り付け、真鯛の姿煮をのせ、錦糸卵やシイタケ、山菜、薬味のネギ、おろし生姜などを添えます。見た目の通りの味わいです。
ふくめん。千切りにして味付けしたこんにゃく（または味付けした糸こんにゃく）の上に、白身魚のそぼろや、細かく刻んだみかんの皮、葱などを区画に分けて盛り付けたもの。こちらも鯛そうめんと同様に、結婚披露宴や長寿祝いなどのハレの料理として欠かせないものらしいです。
じゃこ天。愛媛県南予地方の海岸部で作られる特産品。いわゆる揚げカマボコであり、素材はホタルジャコ（ハランボ）など地元の魚が中心。
みかんいなり。郷土料理というよりは、ちょっとした企画モノでしょう。愛媛の学校給食でおなじみの、洗ったお米にみかんジュースを入れて炊く「みかんごはん」をいなり寿司に仕立てたもの。意外に美味しく後を引く美味しさ。みかんの無限の可能性を感じた瞬間でした。
せんざんき。鶏料理が盛んな東予地方（今治市辺り）の郷土料理であり、鶏のいろいろな部位の骨付き肉を使ったフライドチキンです。名前の由来は諸説あるようですが、鶏を丸ごと千のように斬るため「千斬切（せんざんき）」と呼ぶようになった、が個人的にはわかりやすくて好き。
釜揚げちりめんサラダ。ぐぐっても出てこないので、果たして郷土料理と呼べるのかどうか。その名の通りのサラダなのですが、ちりめんの質が劣悪であり、酷く生臭く食えたもんじゃありませんでした。
天ぷら。やはりこのあたり郷土料理とは言い難く、揚げ物でも出しておけば何とかなるだろ的な発想が伺えます。素材も揚げも適当であり、全然美味しくなかった。
さて、メインディッシュの鯛めし。愛媛県の最も有名な郷土料理のひとつですが、東予地方や中予地方では一般的な焼き鯛の炊き込みご飯を鯛めしと呼び、宇和島市を中心とする南予地方では、鯛の刺身を醤油を主体としたタレに生卵、ゴマ、きざみねぎなどの薬味を混ぜたものに和え、ご飯に載せたものを鯛めしと呼びます。今回は宇和島バージョン。
タレの中に山芋、卵、薬味を全てぶちこみぐちゃぐちゃと混ぜ合わせ、自身のお好みのタイミングまで漬け込みます。ノリとしては贅沢な卵かけゴハンと言っても良いかもしれません。
ほんのり桜色に染まった鯛にタレの旨味がしっとりと溶け込み、期待通りの美味しさです。もう少しゴハンの温度が高い方が、タイに熱がグラデーションで入って面白かったかもしれません。また、この数日間、松山の友人宅で仲卸から直接買い付けた極上の鯛を山ほど食べてきたばかりなので、その鯛と比べるとどうしても見劣りしてしまいます。

愛媛の郷土料理を一通り食べ3,680円。まあ、こんなものでしょう。「ああ、五志喜ねｗ」のダブリューの意味が何となく理解でき、また、彼の家でご馳走になった歓待半端ない料理たちに改めて感謝したランチでした。


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