コートドール/円山公園(札幌)

札幌地下鉄東西線「西28丁目」駅から徒歩5分ほど、円山公園のすぐ近くに佇む近代的な美術館のようなレストラン、コート・ドール。ミシュラン1ツ星です。オーナーは北海道の菓子メーカー『わかさいも本舗』で、その昔、先代社長がパリ旅行において、今はなき三ツ星レストラン『ヴィヴァロワ』で働いていた斉須シェフを口説いて東京でオープンさせたのが三田の『コート・ドール』だそうです。
ウェイティングバーがゴージャス。ここまでキッチリとしたグラン・メゾンは日本では珍しい。これは本物のフランス料理店だと期待が高まります。
シェフは箱根オーベルジュ オー・ミラドー出身。フランスでの武者修行を経て当店の4代目シェフへと就任しました。

店内はかなりの大箱で、60席はありそうです。休日ランチでしたがほぼ満席。
「のぼりべつ地ビール」という北海道の醸造所が造るピルスナーを注文。が、これは凡庸。普通のビールとしては美味しいですが、特別な何かを感じることはありません。連れのペール・エールを一口頂きましたが、これは結構イケました。
アミューズにスナック5点盛りが到着。鹿や鳩、豚など手が込んでおりいずれも美味。アミューズでこの高度を達成するとは中々のものです。
前菜は桜海老のタルタルにホワイトアスパラガス。敷かれているのはキュウリのジュレです。初めて食べる料理ですがグッドアイディアですね。特に桜海老を一匹づつ繋ぎ合わせてサクサクさせた飾りが素晴らしい。

味覚は若干エビの風味に乏しく生臭さが残ったので、この際ビスクソースなどでエビというエビの主張を前面に押し出してしまったほうが良かったかもしれません。
パンは割に普通です。
桜の香りをまとったカブのローストに、つぶ貝の炭焼きとヨモギのソース。カブはそれほど好きな食材ではないので意見差し控え。他方、つぶ貝は素晴らしい味わいですねえ。コリっとした食感にグっとくる炭焼きの香り。チョリソの塩気がアクセントになっているのもすごくいい。
魚料理はサメガレイのポワレ。初めて食べる魚ですが実に美味。なんでも北海道の地魚であり、深海魚であるため醜悪な外形と粘液に汚れているのとウロコがザラザラなのとで良い値が付かないそうなのですが、その味わいは金目鯛にも匹敵する旨さです。

ソースはバター主体の醤油味で、これを不味いという日本人はいないであろう。押し麦のリゾットも名脇役。
肉料理は北海道産の牛ハラミの炭焼き。赤ワインソースを主軸にわさび菜やキャベツのブレゼなど、さまざまな風味を混ぜ合わせながら頂きます。このハラミの質が素晴らしく、肉を喰わせる専門である焼肉屋であっても、ここまでハイ・クオリティなものは入手困難ではなかろうか。

また、メインで食べ手にここまで美味しいと感じさせるのも実は凄いこと。普通メインって腹が膨れてしまって前菜に比べて印象に乏しいものですが、当店のそれには最後まで美食を感じさせる凄味がありました。
お口直しにシソのジュレとヨーグルトのアイス。手抜きのグラニテでお茶を濁すこともなく、深呼吸にも手を抜くことのない生真面目さがコース全体から感じられます。
デザートは選択性だったので、日本酒のスフレをオーダー。見ると本当に日本酒のミニ樽で来てわろてまう。

ふわふわトロトロした食感にハッキリとした日本酒の風味。決して企画モノというわけではなく、正真正銘に美味しい。
日本酒スイーツ3点セットとして酒粕のパンナコッタに柚子のシャーベットも付随しました。柚子のシャーベットは一般的なものですが、酒粕のパンナコッタも先のスフレと同等に芯のある美味しさ。スフレと交代ばんこに食べて新たな味覚を形成します。
小菓子も小菓子というレベルを超えており、きちんとしたメインのデザートを取り分けたような味。しっかりと美味しかった。
エスプレッソをダブルにしても追加料金はなし。良心的なお店です。

お会計で驚愕、料理だけだとたったの5,000円!夜にしれっと15,000円近く請求されても全く文句はないレベルなのにこれはお買い得!ヘンな計算ではありますが、1皿1,000円を切ります。これは驚愕の費用対効果。超一流のフランス料理屋でしっかり食べてこの金額は奇跡。

お金の面だけではなく、味もサービスも完璧。けっこうな量を食べているのにもかかわらず、胃腸がもたれることなくスイスイと完食できるため食後感もすごくいい。これはもう次回は夜にお邪魔すること決定です。おすすめ!


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