Le 1741/Strasbourg(フランス)

ストラスブールの旧市街中心からほど近く、イル川沿いに佇むミシュラン1ツ星店。店名の「1741」は「ミル セット サン キャランテ アン」と読みます。ちなみに1741年はストラスブールのアイコン「ロアン宮(ストラスブール司教の住居として建てられた宮殿)」が建てられた年。
ラベンダーの差し色が印象的な可愛らしいレストラン。家具やアメニティは全てエルメスで統一。カトラリーはクリストフルと、わかりやすい設定。
アミューズはアルザスの郷土料理を再構築したもの。左はタルトフランベ、中央は地元のチーズを筒状に、右はザワークラウトのタルト。これは旅行者にとってたまらない演出ですねえ。ゆうべの暴力的な郷土料理とはベクトルが真逆です。
地元の泡を1本。確か5〜6,000円ぐらいだったはず。やっぱりフランスはワインが安いなあ。東京のミシュラン星付きレストランでこの価格設定は珍しく、やはりこれぐらいの絶対価格に押さえてくれると気軽にガブガブ飲めてちょうどいい。
ジャガイモのポタージュに地元のチーズをクリスピーな状態でたっぷり振り掛けます。サクサクとした歯ざわりで、スープにはありそうで無い食感。ネギの風味もアクセントにちょうどいい。ある意味ジャガイモのすりながしであり、和食にも近い味わいです。
どうしてもラングスティーヌ(アカザエビ)が食べたかったので、私はアラカルトで注文。エビの造形を保った豪快な盛り付けを期待していたのですが、全くイメージと異なるプレゼンテーションで嬉しい誤算。果物や野菜が宝石箱のように散りばめられており、ヨーグルト主体の酸味のきいたソースが食欲を掻き立てる。ラングスティーヌそのもののも気前の良い量であり、私の選球眼に間違いは無かった。
妻はコース料理を注文。4皿出ます。こういう場合、1皿1皿のポーションは小さいものですが、前菜に出てきたウナギが定規のようなサイズで驚きました。1口頂きましたが、燻香がきいており、日本におけるウナギの調理よりも食感を大切にしている印象です。でもやっぱ蒲焼のほうが美味しいな。
妻の魚料理はオマール・ブルー。付け合せにはアーティチョークにホウレンソウ。クレマン・ダルザス(地元の泡)を用いたソースが出色。また、この価格帯でオマール・ブルーにありつけるのはフランスならではでしょう。日本であればこの1皿で軽く1万円は超えそうな料理である。

ちなみに私はアラカルト注文で、前菜とメインの2皿のみなので1回休みです。が、スタッフが「もしシェアするなら」と、私にもカトラリーを置いていってくれましたキャハ★。
私のメインは鳩。清澄で臭みなど一切なく、特級の美味しさです。部位ごとの味わいの違いも楽しむことができ、レバーがとりわけ美味。ちなみに真ん中はアスパラではなく、グリーンピースで作ったペースト。実に手の込んだ1皿である。
さらなる付け合せとして、たっぷりのグリーンピースと赤系ベリー、鳩のほぐし身をチーズ系のソースで。グリーンピース嫌いなら発狂しそうなほどの豆量であり、これはちょっとやりすぎだったかもしれません。
妻は乳飲み仔牛。彼女は私ほど胃袋が大きいというわけでなく、フルコースのメイン時にどれだけ素晴らしい料理を出されても迫り来る膨満感に気を使って平常心であることが多いのですが、この時はスイスイと喜んで食べていました。なんでもスモークが非常に強く食欲がそそられるとのこと。アスパラのプレゼンテーションも手が込んでおり、モリーユ茸、ニョッキの付け合せもいちいちレベルが高い。
妻の4皿目はデザート。チョコレートケーキにピーナッツのペースト、マンゴーのアイスでしょうか。若干繊細さに欠けた味覚であり、これはこれで美味しいのですが、乱暴な味わいとも言えます。めちゃ手が込んでいるかというと違う。「ひと口もらっといて文句タレてんじゃないわよ」
小菓子のレベルが非常に高い。特に右のチョコタルト。濃厚なカカオの風味にピスタチオの健康的な脂質。東京の菓子屋なら1,000円取られてもおかしくないクオリティです。
支払金額は合計で266ユーロ。1ユーロ130円計算で3.5万円弱。ひとりあたり1.7万円。ランチとしては高価ですが、質そのものを加味するとリーズナブルな価格設定です。というか私などアラカルト注文なので、ディナーでこの価格と考えればあげぽよです。

サービスも卒がなく、雰囲気が良い。ゲストに楽しんで貰おうという気持ちがひしひしと伝わってきます。東京にあれば超トップクラスのレストラン。国境近くの何でもない田舎にこんなに素晴らしいお店があるとは、フランスの底力を見ました。オススメです。ストラスブールを訪れた際は是非どうぞ。


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ミシュラン3ツ星を50年以上維持する3軒のレストランを巡る旅」目次

「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

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