相変わらず海外ではUberを多用しています。今回はストラスブールからイラウーゼルヌ(Illhaeusern)という田舎の村へ60kmのドライブ。94ユーロも要しましたが、田舎への旅とはそういうものである。
ドライバーがフランス語とスペイン語しかできなくて、意思の疎通がたいへんでした。もちろん常識的な距離であれば会話などする必要は無いのですが、今回は「めちゃ遠いけど正気か?」的なことを私に伝えたかったようです。
■イラウーゼルヌ(Illhaeusern)
ストラスブールから車で小一時間。柳の緑に囲まれ、コウノトリが飛び交い、白鳥が泳ぐ小川が美しい人口約600人の小さな村。なぜこんな僻地を訪れたかというと、この地にはミシュラン3ツ星を50年間維持し続ける奇跡のレストラン「オーベルジュ・ド・リル(L'Auberge de l'Ill)」があるからです。
■Hôtel des Berges/Illhaeusern
http://www.takemachelin.com/2018/05/hotel-des-bergesillhaeusern.html
「オーベルジュ・ド・リル(L'Auberge de l'Ill)」併設の宿泊施設。風光明媚な景色に身を委ね、センスの良い清潔な空間でゴロゴロと何もしない贅沢。「あなたって、ほんとセンスいいわ。結婚できて、あたしはとっても幸せよ」扇のような睫毛を伏せて彼女は言う。詳細は別記事にて。
■Auberge de l'Ill/Illhaeusern
http://www.takemachelin.com/2018/05/auberge.html
ミシュラン3ツ星を50年間維持し続ける奇跡のレストラン。しかしながら創造性を感じることはなく、事前知識なしにブラインドで食べれば1ツ星も怪しいレベルです。リコール隠しに手を染める社員たちの心境が少しだけわかったディナーでした。詳細は別記事にて。
■フランス史上最大規模のストライキ
今回のストライキは「フランス史上最大規模」と評されており、4〜6月の3ヶ月にわたって、3〜5割の間引き運転を決行するとのこと。JRが同じことをやろうものなら日本は機能停止するだろうに、それでも何となく国がまわっているところがフランスの凄いところです。
もちろんストライキはフランスの国技であり文化なのだから否定はしないのですが、外野の私からすると、ちょっと中途半端じゃないでしょうか。数ヶ月の間引きなど生ぬるいことをするのではなく、1ヶ月間一切の業務を放棄する、ぐらいの勢いのほうがストライキの威力としては甚大でしょう。
ストライキの根拠はエマニュエル・マクロン大統領が推し進める労働改革への抗議(写真はwikipediaより)。SNCFの職員はEU諸国の国鉄職員に比べて圧倒的に恵まれた待遇(毎年自動的な賃金引上げや退職年金の早期の受給、年間28日に及ぶ有給休暇や雇用保障、近親者の国鉄無料利用など)を受けており、年間30億ユーロの赤字を産み出し、累積赤字が470億ユーロにも達し、権利の上に眠るものは保護に値せずと豪腕マクロンが立ち上がった、というストーリーです。
ちなみにエマニュエル・マクロン大統領は、幼少時代より超エリート街道を突き進み、32歳でロチルド & Cieという投資銀行の副社長にまで昇りつめ(年棒200万ユーロ!)、政治家への転身の後、史上最年少39歳でフランス大統領に就任したという凄玉です。プライベートも凄まじく、高校生だった15歳当時、24歳年上の教師(しかも同級生のお母さん!)と付き合い、ついには離婚させて今度は自分が結婚するという金剛力。
さて私はというと、せっかくのウルトラ高級ホテルに滞在しているというのに、TGVの振替申請という地味な作業に数時間も要してしまいました。私が利用する予定のTGVが何本かあり、いずれも2等(普通車)での予約だったのですが、「スト対象のゲストは、どのような料金プランにも変更可能」という、ストをやってる連中とは思えない謎の気前の良さを享受し、すべて1等(グリーン車)に振り替えて頂けました。そんなんやってるからあかんのやって。
また、ストライキ期間だというのに、sncfからのメルマガはのんきに届いたりもします。やれやれ。そんなんじゃマクロンに勝てないよ。
「ミシュラン3ツ星を50年以上維持する3軒のレストランを巡る旅」目次
- vol.1~ストラスブール~
- vol.2~フランスの国技はストライキ~
- vol.3~コルマール~
- vol.4~ロアンヌ~
- vol.5~リヨン~
- Parc Disneyland(ディズニーランド・パーク)
- Parc Walt Disney Studios(ウォルト・ディズニー・スタジオ・パーク)
- 日本の男は皆ロリコン。フランスと日本のレストランを比較して抱いた違和感について。
「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。