日本の男は皆ロリコン。フランスと日本のレストランを比較して抱いた違和感について。

私はフランス料理に目がなく、毎年のようにフランスを訪れ、可能な限り最先端に接し、私なりに根拠を持って記事を書くよう努めています。今回は、その過程において抱いた違和感について記しておきましょう。

■日本の男は皆ロリコン
日本の男性社会には「若い女と付き合いたい憧れる」という空気感が漂っています。オッサンたちの中において、平成生まれを抱いた男はヒーローで、21世紀生まれとヤった男は神と崇め奉られます。そう、日本の男は皆ロリコンなのです。

東京の話題のレストランに行けば、歳がひとまわりもふたまわりも離れた不健全なカップルの多いこと多いこと。

フランスの高級レストランでこのような歳の差カップルを見かけることは皆無であり、きちんとしたレストランと言えば年配の夫婦やグルメ仲間、ビジネス、家族で訪れるものと相場が決まっています。10も20も30も年下のギャルを口説くためのツールとして、高級レストランを活用するライフハックなど聞いたことがありません。

そもそも、相当に難解な料理を出す店に二十歳そこそこの女の子が行き、その料理の本質をきちんと理解できる可能性は極めて低いでしょう。「うーん、なんだか良くわからないけどパパに連れてかれてさ。あんまし映えなかったかなぁ」などと評される料理人が気の毒でなりません。
栄養補給という段階を超えた料理はもはや芸術。全くのド素人がピカソの絵の心髄を理解できないのと同様に、ある程度食べこんだ人間でないと、深甚な料理の本質を味わうことなどむりむりむりむりかたつむり。食べる方も食べられる方も双方不幸というものです。

だいたい若い女の子たちは、貴重な時間を費消して、脂ぎったオッサンたちと食事に行って楽しいのかね。ジジイどもに今しかない若さを使い捨てされているだけという事実に早く気づいたほうが良いですよ。目端の利く同世代のイケてる男子たちは、パパ活女子の臭いを敏感に嗅ぎ分けており、中長期的に素敵な男性こそあなたの前から去っていきます。自腹なら行きたくない食事会や飲み会なんかに行って得るものなんて何も無い。「マックやスタバでもいいから会いたい」、そう思える相手じゃないと、会うだけ時間の無駄ですよ。人生にはフリーランチもショートカットもありません。

ということで、この記事を目にしたオッサンは、10以上歳の離れた女の子とデートするのを禁止します。まずは目の前の奥さんを愛し、幸せにして下さい。話はそれからだ。女の子たちも10歳以上年上のオッサンにタカるのを禁じます。私もやめます。みんなもやめましょう。せーのでやめましょう。みんなで健全な東京レストラン事情を造り上げていきましょう。


■東京は予約が取れなさすぎ
『鮨さいとう』や『レフェルヴェソンス』の下品な客エピソードでも書きましたが、東京の若い女の子の興味の対象が、ブランド物のバッグから高名な飲食店での体験へとシフトし、インスタ上でのマウンティングが始まって久しいです。結果として、ここ数年の東京のレストランにおける品のない客の増え方と予約の取れなさは、異例を通り越して異常となってきました。

前項に記した通り、フランス人は女性を口説くツールとしてレストランを使うことが少ないので、東京のような予約困難バブルが生じることはなく、数週間も前から予約しなければならないレストランなど実に例外的です。

だいたい、どうして渋谷ラ・ブランシュ四ツ谷北島亭広尾のアラジンなどのウルトラ美味しい料理店がいつでも予約できて、試験管に入れて花を散らしてスポイトで食べる、ハロウィンのカボチャのように空っぽなビジュアル系レストランが半年先まで予約でいっぱいなんだ。「美味しいもの、それが、料理」とポールボキューズも言っている。味よりも予約困難性や奇抜さが取り沙汰されるだなんて、世の中どうかしています。何でもクラフトと名付けるのはやめなさい。

男性陣は「相手に対するどうでもいい度合いと、お店の金額・予約困難性は比例すると思っていいよ」という至言を深く胸に刻み込み、行列が行列を呼ぶような節操のない予約の取り方は控えるようにしましょう。私もやめます。みんなもやめましょう。せーのでやめましょう。みんなで健全な東京レストラン事情を造り上げていきましょう。


■日本は魚料理がマジで旨い
肉か魚かの選択肢がある場合、私は極力魚を選ぶようにしているのですが、フランスにおける魚料理はどうもパっとしませんね。海老の調理についてはそう悪くは無いのですが、いわゆる魚料理について、フランスで感銘を受けたことは一度もありません。

日本は地理的に漁場に恵まれ、それに基づく魚介類の流通加工技術や調理技術が歴史的に発達したのでしょう。庶民の魚に対する要求水準の高さにつき、日本人よりも右に出る民族は恐らくいないことと存じます。もしそんな国や民族があれば教えて下さい。来週から確認に行って参ります。

他方、農業や畜産など陸の上の食材での勝負につき、フランスは日本を無力化します。フランスの都市から都市へ移動したことのある方はピンと来るかもしれませんが、あのどこまでも延々と広がる農地の雄大さは圧倒的。ひたすらに平地が続く国なので、肉や野菜のクオリティについては向かうところ敵なしであり、副産物である乳製品や酒類についても相手を寄せ付けることはありません。「日本 平地 割合」などで検索すれば、日本が地理的に分が悪いことがデータとなって認識できることでしょう。

したがって、日本で暮らす人々は、海外から輸入した肉をありがたがって食べるのではなく、近場で取れた魚介類を用いた料理を食べるのが、最も賢明と言えるでしょう。人はそれを地産地消と呼ぶ。どうしても肉料理が食べたい場合は、日本の「平地が少ない≒山林が多い」を逆手にとって、日本産ジビエなどが良いかもしれません。もちろん付け合せは山菜です。


■日本は支払い金額が不明瞭すぎ
私はこれまでフランスの飲食店に数多く出入りして来ましたが、全ての店において会計時に明細が出され、1品いくら何にいくらと細かく把握することができてきました。税金などもメニューの時点で全て込み表示されておりチップも不要であるため、会計時に思いのほかハネてアゴが外れるなんてことは無く、まさにメニューで注文したとおりの明朗会計です。計算間違いにより誤った金額が請求されたことも一度もありません。

それに引き換え、日本におけるお会計の不明瞭さといったらない。あの、フセンみたいな薄っぺらい紙に合計金額だけ記す悪慣習は何なんでしょうか。昔、外人と共に日本の居酒屋を訪れ、アラカルト注文でそのような対応をされ、彼が激おこプンプン丸になってしまったのですが、やはり彼の感覚が世界的には普通であり、日本であのような丼勘定が横行しているのは何かしらお店側にメリットがあるからだと考えるのが自然でしょう。

「失礼な!ボったりなんかしてないもん!」と言うのであれば、無用な疑念を客に与えているのですぐにでもフセン形式はやめたほうが良いですよ。素材が時価に左右されたり、皿数が多すぎて厳密な明細が出せないというのであれば、「コース料理15,000円×2、グラスワイン2,000円×2、ボトルワイン12,000円×1」のように、せめて酒と料理を分けて記せば良い。明らかにすぐできることやらないというのは、やはり何かしら理由があると考えざるを得ません。

また、読み書きソロバンは日本人のお家芸なはずなのに、日本のレストランにおける会計時のミスの多さは不可思議です。私が体感する限り、日本においては2割近くのお店にで誤った金額を請求されます。私はその都度、絶大な記憶力と驚異的な暗算力によって正しい金額をその場で指摘するのですが、そんな事態に陥ればこれまでの美味しい料理の余韻も中くらいである。

その場で明細が出され脳内検算できるならまだ良いのですが、前述のフセン1枚丼勘定方式で来られると、「妙に割高だなあ」と感じたとしても私に確認する術はなく、後日、当サイトにおいて「旨いが割高。美味しくてあたりまえ」のように書かざるを得なくなるのです。その後、慌てて私に連絡を寄越し「会計に誤りがありました差額を返金させて下さい」と申し出て来るお店の多いこと多いこと。これを言葉通りに受け止められるほど私は物分りが良くはありません。

日常的にボッタクリ行為が横行し、物言いがつけば仕方なく返金し、文句がなければ知らんぷり。こんな人を騙すようなことをやりたくて、あなたがたは料理人やサービスマンになったのか。飲食業に限ったことではありませんが、客を大事にしない商売はいずれ滅びるに違いありません。

昔々ある選挙において、ある政党から出馬を要請されたことがあり、その際は丁重にお断りしたのですが、そろそろ重い腰を上げる時が来たのかもしれません。公約は「健全な飲食業界の実現」。「明細を出す」「クレカ使える」「禁煙」「英語メニューあり」などのカンタンな条件を満たせば認証が与えられ、当該店舗における飲食には消費税が免除される。財源とかややこしいことはよくわからないので悪しからず。



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Johnnie's Brasserie(ジョニーズ ブラッセリー)/名駅(名古屋)

JRゲートタワー13Fレストランフロアにある大箱レストラン。席数は143であり、11時のオープン直後は空いているものの、正午が近づくにつれて7~8割は埋まるという中々の集客力。
「アメリカン・ブラッセリー」がコンセプトらしいのですが、「アメリカン・ブラッセリー」が何なのかはよくわかりません。内装は結構かっこよく、採光も充分で開放感に溢れます

スタンディングのバーカウンター、ハイチェアのテーブル、テーブル席、ソファ席など様々なタイプの席があり使い勝手も良さそう。
メインを選ぶと前菜ビュッフェがつくというプランをチョイス。ただし前菜ビュッフェと言ってもサラダが4種あるだけであり、いわゆるオカズ系というわけではありません。
「ジョニーズシーザーサラダ」と「フムス」。前者はスペシャリテらしいのですが、一般的なシーザーサラダと大差なし。後者も標準的な味覚でした。
こちらは「スモークサーモンのコブサラダ」。コブサラダというよりはコールスローに近い味覚です。スモークサーモンが気前良く入っていて結構おいしい。
注文後数分でメインが到着。まだ前菜ビュッフェを数口しか食べていない時点での提供であり、ものすごいスピード感です。

「キハダマグロの炙り ニース風 バーニャカウダソース」という料理名なのですが、あまりニースでは見ることの無い料理のような気がします(サラダニソワーズってこと?)。ソースには八丁味噌を用いているとのことですが、その風味はあまり感じられず。サラダとしてはまあまあ美味しいのですが、キハダマグロが3ピースしか入っておらず、メインディッシュとしては心もとない。
メインに食べ応えが無かったので、前菜ビュッフェをもう1皿。ツナとペンネのサラダであり、炭水化物で強引に腹を膨らませた感があります。
特大カップのコーヒーをガブガブ飲んでごちそうさまでした。

選んだメインディッシュが良くなかったのか、ちょっと物足りないランチでした。前菜ビュッフェでサラダはたっぷり摂れるので、メインには肉の塊のようなものを注文したほうが良いかもしれません。



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とんき/目黒


豚組食堂の記事をアップした際、わざわざメッセンジャーでコメントを寄越してくれた美女。「目黒の『とんき』ご存知ですか?周りのトンカツ好きがみんな好きなので、是非行って見てください!」リクエストから1週間と空けずに訪れるフットワークの軽い私。
ランチ営業はなく16時~23時ごろまでの営業のみという、立ち飲み屋のような稼働時間のトンカツ屋。開店は1939年と、都内屈指の老舗です。
16時ちょうどにお邪魔したつもりが、既に10人ほどのゲストが着席済みでした。その後もひっきりなしに客が訪れ、16:30には壁沿いの椅子に待ち人が生じていました。平日のこの時間に行列ができるってすげえなあ。

ちなみに揚げ油で満たされた大鍋がいくつもあり、空調が追いついておらず熱中症になりそうなほど暑かったです。体温調整が苦手な方はお気をつけて。
注文から15~20分でロースかつ定食が到着。普段はヒレかつを好む私ですが、当店のロースかつはそれほど脂が強くないとのことだったので、あえてロースを選択。

ちなみにメニューはヒレかつ、ロースかつ、串かつの3種だけであり、上だの特上だの限定だのややこしいラインナップはありません。こういう潔いメニュー構成は大好きです。
主役のロースかつ。秋葉原『丸五』大門『のもと家』のような黄色がかった揚げ色とは一線を画し、ガリっと焦げ茶色の高温上げです。
お椀が豚汁なのが嬉しい。ロース肉がゴロゴロと入っており飲み応えも抜群。さらには飲み終わった瞬間にお店の方が「おかわりは?」と声をかけてくれ、気持ちよく2杯目に突入することができます。
お漬物や
ゴハンは一般的な定食屋のそれと同等です。しかしながらゴハンについても豚汁と同じく、私が1杯目を食べ終わるや否や、「おかわりは?」と声をかけてくれました。
本題のトンカツですが、赤身は残らず思い切り強烈に火を入れている印象。衣と肉が分離しがちではありますが、そのザクザクとした食感は新手のスナック菓子を食べているかのようで私のタイプ。前評判に違わずロースながら嫌な脂身は感じることもありません。
豚汁・ライス・キャベツまでおかわりしてコミコミ1,900円。大満足です。外国人のゲストも多く、確かに欧米系の人間にとってはこれだけの肉料理を食べて税サ込みで20ドルを切るという価格設定は驚愕なのかもしれません。80年の歴史は伊達じゃない。ピークタイムを外してどうぞ。


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レミニセンス(Reminiscence)/大須観音(名古屋)

矢場町駅・大須観音駅いずれもから徒歩10分ほど。白川公園そばにある、名古屋最高峰と誉れ高いレストラン。シェフはカンテサンスならびにハジメという東西両横綱のもとで修行したのち、30歳の誕生日に独立。コンセプトは「余韻と記憶」。
白を基調とした清潔で健康的な店内。窓際の特等席をご用意して頂け、薄暮から夜の始まりまでのグラデーションを楽しむことができ、心地よかったです。ちなみに当ビルの1Fには人気の食パン専門店「乃が美」が入居しています。
コース1本勝負13,500円。ワインペアリングが泡込みで8種10,000円(ハーフサイズ・ショートコースなどもあり)。これに税サが乗って、ひとりあたり3万円弱という明朗会計。
泡で乾杯。シャンパーニュがペアリングにも含まれているのが嬉しいですね。リンゴを思わせる爽やかな香りにボリュームのある果実の味わい。そしてミネラル。樽由来のバターの香りもたっぷりあります。
アミューズはウニ。投げやりなアミューズを出すお店が多い中、当店のそれは綿密に設計されたひと口でした。ウニの量がたっぷりで、質もいい。海苔の風味と相俟って最高の出だしです。
この手の料理としてはレアな火入れの車海老。じっとりとした甘味が味蕾を多い尽くします。他方、カラっと揚げたお頭は最高級のかっぱえびせん。ソースの複雑性はもちろんのこと、ナッツやハーブ、クスクスなどの縁の下もグッジョブです。
すごいリースリング。私はつい先週までアルザスに滞在しておりリースリングばかり飲んでいたのですが、このようなベクトルのものを飲んだのは初めてです。コクと深みがありつつも酸味が豊か。印象的な1本でした。
スープはトマト主体。こちらもスープとしては構成要素が極めて多く、記憶できないレベルです。それでいて不思議と一体感があり、まとまりのある味わい。
パンが旨い。1種限定なのですが、モチモチしっとりとした食感が特徴的で、ポン・デ・リングの質を極限にまで突き詰めたような味わいです。
鮎。迫力のあるプレゼンテーションで、どこからどう見ても鮎と360度目が合う。コロッケ状態のものにもギッチリと鮎が詰め込まれ、全体としてはパクチーなど意外性のある食材が散りばめており、ほろ苦い風味と相俟って大人の味わいです。鮎でこのような料理を構築できるのは世界中見渡しても稀でしょう。
鮎に合わせるタカヒコ・ソガのピノ主体。果実味と酸味が豊かで筋肉的な跳躍が感じられます。しかしながらいわゆるビオっぽい風味と、日本人が日本で作ったワインらしい風味がことさら強い。好みが分かれるワインでしょう。ちなみに買い葡萄が混じっているためドメーヌ・タカヒコは名乗らないそうです。
フォアグラはテリーヌ仕立てで。タマネギの甘味を添加し、トップのパリパリっとした食感が食べる軽快さを演出します。そうだよな、フォアグラってこれぐらいの量がちょうどいいよな。ゲンコツサイズで食べるものではありません。
脂質の豊かなフォアグラにシュナンブランを合わせる妙技。おおー、これはありよりのありですね。軽いフォアグラにはこれぐらいの程よい甘みがちょうど良い。
お口直しにグレープフルーツのグラニテ。味はもちろんのこと、一輪の花を添えるセンスに憧れる。
鰻の白焼きが信じ難いほど旨い。鰻そのものが上質であり、その上を行く調理です。香ばしく、円みがある。付け合せの野菜(特にゴボウ)もすばらー。ちなみにシェフは、当店オープン直前に、あつた蓬莱軒でも修行していたそうな。貪欲にも程がある。
ボトルが登場しただけでニヤついてしまう。なぜこんなワインがペアリングで出せるのか理解に苦しむ。ワインそのものとして完璧に美味しく、また、鰻とのマリアージュもお見事です。

お手洗いから戻ると、連れが、私がお手洗いに立つ前の姿勢のままワインの香りを取り続けており、ああこの人は本当にワインが好きなんだなと愛おしくなりました。ちなみに彼女は私の10倍ぐらいワインに詳しく、「2.5本ぐらいまでは記憶があるかなあ」という程の酒豪です。
会話に現を抜かし過ぎ、料理の写真を撮り忘れてしまいました。このような失態は2年以上前のキャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレ以来であり、いずれも超楽しい夜なのです。料理は甘鯛。うろこ焼きの箇所は食感がパリパリパリピであり食べる楽しみを刺激します。ソースもクリアながら深みがある。
ソムリエが「話がわかる奴らだ」と察してくれたのか、ブラインドでの対決をご提案頂きました。私は自信を持って「これは、白ワインである」と回答。100%正解です。ちなみにワインはムルソー。良いワインなのですが、若干トゲが感じられ、甘鯛に勝ってしまったかもしれません。やわらかく樽がきいたブルゴーニュのほうが私のタイプ。
メインはラム。表面は香ばしく、内面は脂身と程よい水分を湛え、極めてジューシー。肉そのものにはディズニー映画のようなわかりやすさがあるのですが、ソースが複数種取り揃えられており、また違った一面が感じられます。
お次もブラインド。今度は真面目に村まで当てにいこうということで、私はポイヤック、彼女はサンジュリアンと、カベルネ主体の左岸まで意見は一致。正解はプロヴァンスのカベルネシラーでした。どうだ、私の舌など実にいい加減なものである。他方、カベルネ比率は50%を超えており、大体合っていると言えば合っているのも私の舌である。
デザート1皿目はパイナップル。生はもちろん、ロースト、ジュレ、ソルベなど7種類の変化球を投げ分けます。非常に濃厚かつ多様性に富んだ味覚であり、ここまで上手に才能を引き出してもらえたパイナップルも幸せであろう。
メインのデザートは桃。メレンゲとアーモンドの生地の中には桃そのものやマスカルポーネなどなど。ルイボスティーのジュレはありそうでない工夫なのですが、これが面白いほど良く合って記憶に残りました。
まさに桃。シロップ漬けの香りに仄かなハーブ、メロンのニュアンス。樽香が嫌らしくなく程よく液体に溶け込み、私が考え得る限り最高の組み合わせです。それにしても本当に良いペアリングだ。
小菓子にも手抜きナシ。シェフの幼少時代の好物へのオマージュということで、雪見大福、プッチンプリン、チョコケーキ、きのこの山。きのこの山が印象的。カカオの風味がきちんと立っていました。伊勢丹あたりがフランスの名ショコラティエと組んで、そういうイベントやるのもいいかも。コアラのマーチとか楽しそう。
コーヒーは大変ありがたい豆を専門家が丁寧に丁寧に焙煎し、ハンドドリップで綿密に淹れられたもの。なるほど旨い。コーヒーだけでも世界と勝負できるレベルです。輪郭のある柑橘系の香りにカカオのニュアンス。素晴らしい1杯でした。

飲んで食べて3万円弱。フロリレージュ的な食後感。空間の良さはあちらに軍配があがるのは仕方ないとして、料理とワインのタッグを考えれば当店の勝利でしょう。

料理は1皿に詰め込む味覚が非常に多い。素材としての構成要素が極めて多く、全てにおいて複雑で奥行きがあり、それでもバラバラとならず不思議なまとまりがあって、設計どおりに物事が進んでいく感覚。モノによっては若干難解で、ある程度ゲストに経験を求めるお店なのかもしれません。

ワインも1万円のペアリングとしては見事。結構な冒険をするものの、決して外すことはありません。何より予算がある程度見えてからお邪魔できるのが客としては嬉しいですね。

噂に違わず非常に満足度が高く、記憶に残ったレストランでした。


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