その世界唯一の支店がホテルニューオータニ内にあります。東京店も1984年開業と、都内では最も歴史が長いフランス料理店のうちのひとつです。
『ドレスコード:男性のお客さまには、上着の着用をお願いしております。』『メインダイニングでの写真撮影は、他のお客さまのご迷惑となる可能性がございますので、シャッター音がしないカメラの使用をお願いします。フラッシュはご遠慮ください。他のお客さまが写らないようご配慮をお願いしております。』『ご利用は16歳以上とさせていただいております。』などなど、最近では珍しいほどの注文の多い料理店。
しかしその甲斐あってか客層は素晴らしく、人品骨柄卑しからぬ紳士淑女が集う社交場といった風情。ギラギラしたオッサンとギャルみたいな組み合わせは全く見当たりません(以上、写真は公式ウェブサイトより)。
ワインの値付けはメチャクチャ高いというわけではないのですが、もともと質の高いものを取り揃えているため、絶対額としてはとっても高いです。一番安いシャンパーニュで税サを加えると2万円近くします。
泡と共に頂くオツマミ。あまりにシンプルな一口であり、記憶に残りませんでした。
ちなみにシェフはフランス人で、数々の3ツ星レストランで修業を重ね、パリ本店を経て東京までお越しになった名人。ようこそニッポンへ。
フランス産のエクルヴィス、すなわちザリガニです。目を閉じて食べれば日本のエビと大差ない味覚。盛り付けも何だか投げやりに感じます。どうしたものかと連れと目線で相談する。
パンも標準的なもの。うーん、 食事だけで3万円(税サ込)近くかかるのに、このパンのクオリティはガチしょんぼり沈殿丸です。
フォアグラのソテーも悪くはないのですが複雑性に欠け、盛り付けもダサい。今回は若手の岸朝子のような女性とお邪魔していたので、もちろんクラシックにも理解があって助かったのですが、くるくるパーなOLちゃんとデートで来ると寂寥感に苛まれるかもしれません。
前言撤回、コチラのパンは素晴らしい。ビール酵母でどないかしたものらしいのですが、チーズのような奥行きを感じられる確かな旨味があり、控え目に言って絶品です。
サワラに燻製したイワシのソース。サワラそのものは中くらいの美味しさですが、イワシのソースがお見事。イワシの旨味が凝縮され、加えて薫香まで付与されるという破壊力のあるソースです。付け合せのポワロネギとジャガイモも筋の通った味覚であり、徐々にテンションが上がって参りました。
幼鴨のコンソメスープ。温故知新とはまさにこのことであり、一周まわって斬新なスープです。ここまで芯のあるコンソメには近年中々出会う機会がありません。「どうだ、これがフランス料理だ」とシェフのドヤ顔が見え隠れする完成度です。
さてお待ちかね、スペシャリテの幼鴨のローストです。付け合せは旬のホワイトアスパラガス。
当店の鴨料理は手がけた鴨を1羽1羽ナンバリングしていることで有名。1921年6月21日、昭和天皇(当時は皇太子)はパリにおいて53,211羽目の鴨を食したため、これに由来し東京店では53,212羽目からナンバリングされています。私の鴨は25万数千羽目でした。
肝心の味ですが、霊験あらたかと言うわけでは決してなく、まあ、普通の鴨のローストです。もちろんホッペが落ちそうなほど美味ではあるのですが、独創的な何かがあるというわけではなく、質実剛健、教科書通りの味わいでした。
意外にも、と言っては失礼かもしれませんが、デザートがモダンな仕立てであり実に美味しい。ココナッツのパルフェに太陽を感じるパイナップル。シャルトリューズのジュレも小気味よく、本日一番のお皿です。
小菓子も一切の妥協がなく、このまま箱に詰めて数千円で売り出せるレベルです。特に奥のプラリネのボンボンがお気に入り。当店のパティシエとは気が合いそうだ。
コーヒーも抜かりなく旨い。しかも給仕が忍者のようにしのびより、会話の邪魔をすることなく次々におかわりを注いでくれるのもすごく良い。ああそう、言い忘れていましたが、当店のサービス陣は軍隊のように規律正しく迅速に行動しており、完璧を通り越して完成しています。実に見事だ。
なるほど世界のフランス料理を牽引してきたブランドだけあって、内装・雰囲気・客層・サービス・料理の全てがパーフェクトでした。しかしながら見方を変えれば革新性に乏しく、ワクワク感に溢れる食事かというとまた違います。客単価5万円にしては感動に乏しい。接待向けかなあ。
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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
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