店内は驚くほど暗い。遅刻して入った劇場ぐらい暗く、手探りでテーブルまでたどり着く必要があります。ゲストが揃ったテーブルからひとつ、またひとつと食卓に蝋燭の火が灯され、その演出はホーンテッドマンションさながら。グラスシャンパーニュは1,200円と格安です。
ネット上の口コミでは「提供速度が恐ろしく遅い」との声が多いですが、なるほど確かに遅いです。最初の料理にありつくまでに入店から30~40分ほどを要しました。場つなぎにグジェールとかピクルスとか出せば良いと思うのだけれど。
注文は全てアラカルト形式です。こちらは田舎のパテ。レバーの風味が強く独特の臭みがあり、好みが別れるかもしれません。ザラりとした舌触りに鉄分を感じ、パンチのある味覚でした。
スペシャリテのフォアグラのサラダ。山盛りのレタスにソテーしたフォアグラをのせただけのシンプルなものです。バルサミコ系統の濃厚なソースが印象的で当然に美味しいのですが、家庭料理の延長とも言える。
「良いホワイトアスパラガスが入った」とのことだったので注文。これはお皿が凄いですねえ。アスパラを食べるために生まれてきたような皿であり、ホームパーティで出せば大ウケ間違いなし。料理は正統的な味覚といったところでエキスの1滴1滴まで旨かった。
ソースはオランデージソースではなく酸味の強い(サワークリーム的な?)もの。ムースのように粘度があり、これ単体で食べてもイケます。
魚はスズキ。意図してかどうかは不明ですが、表面の火入れが強く、香ばしいを超越して丸焦げです。焼き目からは苦味まで出てしまっており、あまり好きな調理ではありませんでした。付け合せも至ってシンプル。
メインは鴨のオレンジ煮。こちらもちょっと火入れが強いのか、脂が若干抜けておりパサパサした食感。当店のシェフはヘーパイストス的な芸風なのかもしれません。ソースはソースを通り越してマーマレードに近い。
付け合せのポテトは凄くおいしい。高温で思い切り揚げられており、強めに振られた塩も食欲をそそる。本日一番のお皿でした。
デザートは3種より。ひとつづつ注文してシェアします。ガトーバスクが特に良かった。程よい甘味にアーモンドの香り。チョコレートムースはカカオよりも砂糖の甘味が強烈で、私はあまり好きじゃない。イチゴのクラフティーは中くらい。
マールを飲んで試合終了。覚悟していたほど暗くなく、また、流れに乗ってからは皿出しのテンポも悪くなかったです。それでも一通り食べ終わるまで4時間以上を要したので、お酒を飲まない方にとっては厳しい環境かもしれません。
料理はクラシックなビストロ料理であり、やや類型的という印象。食べログ4.20ということで物凄く期待してお邪魔したのですが、どちらかというと雰囲気で食べさせるお店でした。
関連記事
「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
- ガストロノミー ジョエル・ロブション ←最高の夜をありがとう
- アピシウス ←東京最高峰のレストラン
- ナリサワ ← 何度訪れても完璧
- SUGALABO ←料理だけなら一番好きかも
- エクアトゥール ←天才によって創られる唯一無二の料理
- ete(エテ) ←美食の行き着く先はお抱えの料理人
- フロリレージュ ← 間違いなく世界を狙える
- キャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレ ←世界を狙える日仏料理
- アラジン ←あの日あの時あの場所で何を食べたかの記憶がハッキリと残る料理
- Parc ←当店ほどまでに重みのある二ツ星は東京ではなかなか見当たらない