地下ながらも壁はガラスであり開放感に溢れ、高い天井からの陽光はシェフの美意識の高さを感じさせます(写真は公式ウェブサイトより)。テーブル配置にもゆとりがあり、サービスも外さない。キメるデートにぴったりな雰囲気です。
グラスの泡で乾杯。ちなみにシェフはフィレンツェの3ツ星「エノテカ・ピンキオーリ」 など名だたる名店で研鑽を積み、ブルガリ ホテルズ&リゾーツが日本に進出する際のシェフとして凱旋帰国したというバリバリの経歴です。
一口目はホタテ。調理法はちょっとわからないのですが、表面にやや焦げ目があり水分は抜け気味でありつつも、内側の弾力と旨味が逞しい。コクと歯ごたえに可塑性があり、平たく言うと物凄く美味しいです。
奥は牡蠣のフリットが抜群にいいですねえ。質そのものが良いのは当然として、絶妙な火入れから来る凝縮感とジューシーさ。でっぷりとした衣の厚みも牡蠣の旨味を受け止めるにちょうど良い。
手前はサラミにトリュフ、ストラッキーノ(チーズ)。料理というよりも素材です。トリュフの風味が飛んでいるのが残念。しかし総じて素晴らしい一口。
パンも上々。特に左のものはチーズ(?)が練りこまれており、コッテリとした味わいが味蕾に響く。脇役にしておくには勿体無いほどの完成度の高さでした。
ソムリエの察しも良く、我々の意図を汲むのが早い。「べっこう飴のような」という新しい表現を聞き、興味本位で試してみましたが、本当にその通りで面白かった。
パスタが絶品。しあわせの在り方が大きく変わる瞬間です。なるほどエノテカ・ピンキオーリにおいてパスタを専任した経歴は伊達ではなく、シラス・春菊・フキノトウといった旬の野菜が渾然一体となって迫り来る。茹で加減もパーフェクトであり、厨房からテーブルに置かれ、ゲストがフォークで口へ運ぶ時間まで計算していると思える緻密さでした。
メインはコブ鯛か金華豚を選択できたので、私は金華豚を選択。これがまたシンプルながらも火入れが見事な塩梅であり、脂身と赤身のバランスもちょうど良く、マスタードソースの使い方もセンスがあります。
ちなみに連れはコブ鯛を選択し、想像していた以上に付け合せの野菜が豪華であり、ゴージャスな外観が羨ましかったです。
ドルチェはこれまでの料理の完成度に比べると、相対的にイマイチでした。左はジャンドゥーヤのジェラートとのことでしたが、砂糖の甘さが悪目立ちし、ナッツ類の風味に乏しい。連れはフランス帰りのパティシエールであるため、「あ、これは料理に比べて手抜きかも」 と笑ってました。
小菓子も料理と比べると魅力に欠けます。ううむ、やはり食事全般のレベルが高かっただけに、どうしても要求水準が高くなってしまう。
エスプレッソも抜かりなく美味しい。豆の風味が素晴らしく、家庭用のマシンではちょっと味わえないシルクのようにきめ細かいクレマです。
グルメ仲間の中であまり話題になることが無いため、失礼ながらそれほど期待していなかったのですが、料理・雰囲気・サービス全てのレベルが高く、また何某かの哲学を感じる誇り高きイタリアン・レストランでした(写真は公式ウェブサイトより)。
集客に苦労しているのか、予約サイトに頼らざるを得ないのは成長痛。都内の予約の取れないイタリアン・レストランの代名詞となる日も近いことでしょう。
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