フィリップ・ミルという料理長の名を冠したレストラン。仕掛け人は株式会社ひらまつ。それにしても当社はル・ジャルダン・デ・サンスやオーベルジュ・ド・リル、ポール・ボキューズなど、フランスの高名なレストランを誘致するのが上手い。
食前酒は白のヴァン・ショー(ホットワイン)。注ぎたてのころはアルコールがダイレクトに立ち込め噎せ返ってしまうのですが、温度が落ち着けばジンワリと内臓に染み渡る面白い試みでした。
合わせて供されるプティ・サレ。いわゆる塩サブレであり、今後の展開に期待を持たせてくれます。
アミューズはカリフラワーのムース。文句なしに美味しいのですが、若干パンチに乏しいというか、バアンとテンションをぶち上げてくれるには弱い。後に出てくるキャビアをこっちに乗っけてくれたほうが嬉しかったかもしれません。
泡は小さなメゾンのものを。当店はシャンパーニュから来たレストランだけあってシャンパーニュの品揃えが自慢であり、常時グラスで7種を用意しているとのことです。
バゲットは素朴ながらとしっかりと旨い。ロブションのような手の込んだパンも好きですが、このようなシンプルなパンを旨く仕上げるとは相当の手練れであろう。
思わず目が回りそうな皿はプティ・ポワ(グリーンピース)。ソースというわけではなく、きっちりとフォークですくいとって口に運ぶできる、面白い仕掛けでした。白眉は燻製香るホタルイカ。旨味を水上置換法でかき集めたような傑作であり、これは酒が進むこと間違いなし。
火入れには一家言あるフィリップ・ミルシェフ。PCエンジンのヒューカードほどの大きさのたっぷりとした平目にまずはバシりと焼き目をつけ、そこから真空調理で温度をコントロールしていきます。これは旨い。平目の旨味が濁流のように押し寄せてきます。人生で食べた平目の中ではトップクラスの名編です。ソース・シャンパーニュやガルニチュール(付け合せ)にも抜かりなし。本日一番のお皿でした。
合わせるワインはボルドーの白。決して悪いワインでは無いのですが、料理と合わせるには甘味とコクがあるすぎるきらいがあり、ソース・シャンパーニュなのであれば泡のまま通してしまったほうが良かったかもしれません。
メインはラムの鞍下肉。いわゆるショートロインであり、ちょうど馬で言う鞍の下の腰の 部分。丁寧に丁寧を重ねた下処理が施されており、濃密なラムの香りが漂うものの雑味は一切なくクリアという矛盾に満ちた見事な肉料理でした。シンプルなジュのソース(肉の出汁)も肉の品質の邪魔をせずグッド。先の平目に勝るとも劣らず素晴らしい料理でした。
ワインは右岸のメルロとフラン。これも素晴らしく良いワインですねえ。やっぱ赤ワインはボルドーだよな、と、コクのあるワインを礼賛したくなる見事な1杯でした。
デザートはイチゴ特集。とちおとめの中でもとりわけ品質が良いとされる夢苺というものをふんだんに用いた逸品。ヒラメとラムのレベルの高さからもしやとは思っていましたが、スイーツまで完璧な出来栄えでした。
合わせるワインはコチラ。程よく品の良い甘味に伸びやかなブドウの味。果実味に溢れておりしみじみ旨い。
最後の小菓子まで手抜きなし。連れと無言で頷きあう。今夜は良いレストランにめぐり合ったぞ、と。
海外の有名シェフのライセンス契約の店は、日本で食べると期待していたほどではないことが多いのですが、当店はオープンしたばかりで気合が入っているのか、世界レベルで評しても素晴らしい料理とワインだと納得できました。
現在は料理人を積極的にLes Crayèresへ向かわせ、フィリップ・ミルの極意を徹底的に学び、血肉と化している最中とのこと。ひらまつの最近の新店の中では頭ひとつ抜けています。今度はランチに行ってみようっと。
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六本木は難しい街です。おっと思えるリーズナブルな店から、高くてギラギラしてるだけのハリボテのようなお店も多い。私が好きなお店は下記の通りです。
- 龍吟 ←和食というジャンルを超越した存在
- ル ブルギニオン ←質実剛健これが本物のフランス料理
- エディション コウジシモムラ ←スペシャリテの牡蠣は必食
- s`accapau ←最先端でカッコイイ
- アジュール45 ←さすがリッツ・カールトン、パーフェクトです
- ウルフギャング・ステーキハウス ←ランチのハンバーガーが絶品
- 霞庭まつばら ←素晴らしくバランスの取れた飲食店
- 鮨西むら ←六本木の格調高い鮨屋でこの価格は見事
- RRR bistro ←シャンパーニュ飲むなら絶対ココ
- JEAN-PAUL HEVIN ←デザートに悶絶、食事もしっかり
- ラ スフォリーナ ←六本木のきちんと美味しいイタリアンでこの費用対効果は素晴らしい
- ラ ブリアンツァ ←全体を通して気前が良い
- クッチーナ イタリアーナ アリア ←この費用対効果の高さは異常。