ルエ ヴェル ロール(La Ruée vers l'or)/麻布十番


フランス語で『ゴールドラッシュ』を意味する『La Ruée vers l'or』。仙台坂ひむかの斜向かい、PACEが入居するビルの2Fにあります。このドアを開けて螺旋階段を登ると突然にダイニングが広がるという設計であり、まるで客船の中にいるような気分。
カウンターが10席ほどに、テーブルは十数席。L字型のソファ席もあり、1人飲みはもちろん、ある程度の人数にも柔軟に対応できそうです(以上、写真は公式ウェブサイトより)。
ロデレールが酒屋の2倍弱というお値打ち価格だったので秒で注文。ワインリストを一通り舐めさせて頂きましたが、当店はカリフォルニアワイン主体、かつ、全体的にリーズナブルな値付けです。ちなみにオーナーソムリエはナパのオーベルジュ ド ソレイユで修行された方で、日本におけるカリフォルニアワインの第一人者。
アミューズは鶏ハムに豚のリエット。実に正攻法な味わいであり質実剛健。私の好きなタイプです。

ちなみにシェフは自由が丘ラ・ビュット・ボワゼ麻布十番オルタシアでスーシェフを歴任。先のソムリエとはオルタシアでの同僚のようです。テイスティングメニュー(コース料理)も魅力的だったのですが、今回はアラカルト注文。その場合もふたりで食べることができるようシェアしてくれます。
自家製お肉のパテ。これでハーフポーションです。正統的な味覚のパテドカンパーニュであり、付け合せの野菜もたっぷり。ソースやジュレなどでの工夫も見られ大変満足のいく一皿であり、この時点で今夜の勝利を確信。
適度な塩気にオリーブの香り。パン(フォカッチャ?)も上々の仕上がりです。

ここ、もうちょっと流行ってもおかしくないよね、少なくとも僕の中ではカラペティ・バトゥバ!と同じくらい好きなお店なんだけど。「カラペティ・バトゥバ!懐かしいなあ。最後に行ったの、大学生の時だったからなあ」なんと生意気な女学生。私が大学生の時などサイゼリアでミラノ風ドリアを二人前がせいぜいである。
里芋のポタージュ。芋の滋味に溢れるスープであり大地の旨味が伝わります。中にはゴロゴロとゴボウが入っており、チーズをたっぷり身に纏ったビスキュイも塩気が強く素敵なアクセント。

「整形についてどう思う?」大大大賛成だね。手術して美人になってコンプレックスが無くなるならそれでいいじゃないか。年寄りの意味の無い病院通いなんかより、美容整形にこそ保険適用すべきとすら思ってるぐらいだ。世の中が美人だらけになれば美人に価値なんて無くなって、内面が問われる世界となる。
面白いことに当店はフランス料理主体ながらアラカルトでパスタを注文することができます。自家製のタリアテッレをオリーブオイルソースとイカで。しかしながら、味付けは悪くないのですが、麺に食べ応えがありません。つい数日前にロットチェントで体育会系應援指導部的極太パスタを食べたばかりだったので、物足りなさが募ったのかもしれません。それでも皿をキャンバスに見立て野菜を添えるセンスは魅力的。

「じゃあ、あたしがもし整形だったら?」一分の隙もない笑顔をみせながら、泉里香似の彼女は私に問いかけた。
ネガティブな印象は全く持たない。むしろ人生に対して前向きで、課題解決能力も高いと評価するね。そもそも整形して美人になるのってことは、ベースがある程度キレイって証拠だし。
メインは熟成エゾ鹿に赤ワインとポルトワインのソース。エグ味のないクリアなエゾ鹿であり、熟成の旨味も増して実に美味。

「彼氏に豊胸手術がバレてフラれたって話、知り合いから聞いたばっかりだったからさ。彼氏がもう、造りモノを相手にしているような気分で、何もかもムリってなっちゃったんだって」ずいぶんと繊細な男の子だこと。胸なんて服の下に隠れているのだから、なおのこと些細な論点じゃないか。
泡をボトルで楽しんでいましたが、肉の旨味とポルトワインのソースの軍門に下りグラスの赤へと移行。カリピノはそれほど好きじゃないのですが、こちらはバランスが良く逞しくもあり余韻がエレガント。びっくりするほど美味しかったです。

「あなたの周りの女の子って妙に美人揃いじゃない?だから、そういう女の子が混じっていても不思議じゃないかもね」意地悪そうに彼女は言う。そうかもしれないし、そうでないかもしれない。ただ、僕の女友達は顔だけじゃなくてスタイルも抜群だよ。プロポーションは個人の努力でしか保守運用できないから、僕は彼女たちをとても尊敬している。
お会計は2人で2万円を切りました(写真は公式ウェブサイトより)。これだけの料理とワインを食べてひとり1万円を切るのは素晴らしい費用対効果。サービスも付かず離れずの私が好きなタイプであり、料理の皿出しタイミングも完璧。十番におけるフランス料理屋で久しぶりのスマッシュ・ヒットです。

「ねえ、あなたもう良い歳なんだし、その、不特定多数の女の子と仲良くするの、いい加減やめたら?」不特定多数じゃない、特定多数だ、と声を大にして抗議する。

「そうじゃなくてさ、もうちょっと、目の前にいる女の子を大事にしたらどうかな?」小首を傾げ、一息で真っ赤なワインを飲み干す彼女。いつの世も嫉妬は最高の媚薬である。


このエントリーをはてなブックマークに追加 食べログ グルメブログランキング

関連記事
麻布十番にはフランス料理屋がたくさんあるのですが、残念ながら割高でハズレなお店も多い。外さない安定したお店は下記の通り。
東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。

関連ランキング:フレンチ | 麻布十番駅赤羽橋駅