丸亀製麺。外食チェーンのトリドールが展開するうどん屋。ところで当社と丸亀市は全くの無関係で、「讃岐うどんの聖地、丸亀市にあやかった」だけであり、1号店は兵庫県の加古川市なのです。これ豆な。
ちなみに国外における店名は『MARUKAME UDON』。「MARUGAME」としなかったのは「GAME(ゲーム)」と読まれてしまうからであり、「SEIMEN」でなく「UDON」なのは、海外でも割に通用する単語を選びたかったからだそうです。これも豆な。
さて本題。ツマミ付きの30分飲み放題が1,000円という脳筋な取り組み。ラストオーダー21:30、閉店は22:00。我々が到着したのは21:20とギリセーフの滑り込み入店。
昼間の丸亀製麺は、どの店舗も芋の子を洗うような混雑ですが、夜は全くのガラガラです。カウンターの内側にいる大学生風のバイトくんに声をかけ、飲み放題に臨みたい旨を告げる。
「あ、あの、、、」と言いにくそうにボソボソと語り始めるバイトくん。「実は、生ビールを切らしちゃって、、、ハイボールとチューハイと焼酎しかありませんすいませんすいません」それでも全く構わないと鷹揚に告げ、BセットとCセットをひとつづつを注文。
ちなみに飲み放題セットとは
- Aセット(1,000円):うどんまたは卵とじ、サイドメニュー2品、飲み放題
- Bセット(1,100円):あさりガーリック、サイドメニュー2品、飲み放題
- Cセット(1,200円):牛もつ豆腐、サイドメニュー2品、飲み放題
「あ、あの、、、実はBセット切らしちゃっててすいませんすいません」と実に気の弱いバイトくん。すると厨房の奥から「Cモナイゾー!!」と大声が鳴り響き、バイトくんはビクりと肩を震わせる。なるほど、当店の責任者はあの南アジア系の外国人なのか。
見ていられない、とでも言うかのように南アジア系店長がバイトくんを押しのけ、我々に飲み放題の仕組み、ならびに現在はAセットしか提供できない旨を手短に説明する。中野の讃岐うどん屋で南アジア系の外国人に勅旨を賜る。実にシュールな状況である。
サイドメニューのバリエーションは意外に多い。どれにしようかなあと惣菜棚を覗き込んでいると、まるでわかっていない、とばかりに南アジア系店長が再登場し、「アノデスネ、マズハ、オ盆ヲ持ッテキテクダサイネ!当店ハ初メテデスカァア?」と、出来の悪い生徒を扱うかのように我々ににじり寄る。
会計を済ませるとおもむろに手渡されるストップウォッチ。なるほどこれで30分を測れということですね。ズルをしようと思えばいくらでもズルができる仕組みではありますが、そこは紳士協定なのでしょう。
先述の通り生ビールを切らしている(というか、洗浄を始めてしまっただけ)のでハイボールとチューハイを交互に飲む。ミスターボリュームアップはひたむきに焼酎を。
サイドメニューの天ぷらを2つ。見た目のそそる造形ではあるのですが、びっくりするほど美味しくない。完膚なきまでの作り置きであり、キンキンに冷たい。浮いた油もイガイガする。100円かそこらという意味ではこのあたりが限界なのでしょう。
ミスターボリュームアップはお洒落にもトマトなどをつまむ。しかし死んでいた彼の目から推察するに、決して褒められた味覚ではなかったのでしょう。
1杯のかけうどんを男ふたりで分け合う。うーん、美味しくない。コシが無くフニャフニャの麺に深みの無い出汁。ネギに至ってはカピカピに乾燥しているくせに妙な辛さが猛烈アピールしてきます。
「うーん、丸亀製麺ってこんなに不味かったでしたっけ?」とミスターボリュームアップ。これには私も全く同じ意見。昔は本場讃岐で食べるのと遜色無い味わいであり、値段の割には美味しかったと記憶しているのですが。
こちらは卵とじ。親子丼のアタマです。こちらはズバりと決め込んだ味付けであり、酒のツマミとしてはそう悪くはありません。それでも彼は納得がいかないようで、「やっぱり安けりゃ良いってもんじゃありませんねぇ。ここまで料理が不味くって、加えてギンギラギンに照明が明るいと、酒を飲む気が失せてしまう」と顔をしかめて言う。やはり飲み屋における雰囲気づくりは重要だ。
閉店まではまだもう少し時間のある21:45。唐突に照明が落とされ暖房もストップ。ガラス越しに冷気がビシビシと伝わり始め、思わずダウンジャケットに手が伸びる。
終業のチャイムが鳴ったとばかりに、南アジア系店長はその他の南アジア系バイト数名と彼らの言葉で談笑を開始し、時おりゲラゲラと腹を抱えて笑い合っています。従業員の仲が良いのは良いことですが、客の前での私的なトークは差し控えるべきでしょう。
気がかりなのは言葉のわからない日本人のバイトくん。彼は常にひとりぼっちであり、背中を丸めながら心を失った機械のように黙々と後片付け作業に勤しんでいます。まさか中野のうどん屋のバイトでここまでの孤独を味わうとは予想だにしなかったであろう。この疎外感を奇貨として彼らの言葉を学び、彼らの母国との架け橋になってくれると嬉しいのだけれど。
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