新屋信幸。外食に詳しい方なら聞き覚えのある料理人でしょう。フランスのピエール・ガニェールの下で研鑽を重ね、帰国後に「オーバカナル」のスーシェフ、「ブルーノート東京」のシェフを務めた後に大阪で独立。しかしその後、東京に進出するピエール・ガニェールグループに参画したもののすぐに退職し行方不明に。フジテレビの『ザ・ノンフィクション』という番組で『消えた料理人』として特集されたこともありました。
現在彼は当店『LA TERRE』のエグゼクティブシェフに就任。ただし厨房に入るのは月に数日とのことです。
グラスの泡で乾杯。当店のワインリストは面白くって、1本3千円強の日本産ワインもあれば、200万円超のロマコンまで載っているところ。これまでの外食で最も価格の開きのあるワインリストでした。
ブリのカルパッチョ(?)。金沢産のブリがトロトロの脂を纏っていて最高に美味。ただし注文を済ましてから秒で提供されたので、作り置きだったのかしらと穿った見方をしてしまう。ここは嘘でもグジェールなどで焦らしたほうが良かったのかもしれません。
昼だしそんなに飲む雰囲気でもなかったので、最安値に近いワインを注文。それでも清澄でグイグイいける爽やかな辛口であり、極めてリーズナブルな、当たりの1本でした。
スープは山栗。セップ茸の香りがプンプンに漂い味も濃い。他方、具材として加えられていた鶏肉は旨味がスカスカだったので、これは不要だったかもしれません。いずれにせよ液体としては美味しい一皿でした。
パンは全然美味しくない。コンビニと同等かそれ以下です。
ピメントスにブランダードを詰めたもの。ピメントスとはスペインのシシトウであり、ブランダードとは鱈を牛乳で茹でジャガイモを加え混ぜてペースト状にしたものです。味は悪くないのですが、ポーションが貧弱で食べ応えのない一皿でした。それこそバスクにおける小皿料理として食べるのであれば充分ですが、正統的なフランス料理屋の1皿とするには弱い。
メインは平スズキのスチームグリル。ソースはブールブラン(白ワインとバター)。外見はシャケ弁のように貧相ですが、平スズキの質は割に良かったです。これまでバター濃い系の料理が続いたので、甲州じゃなくて樽のきいたシャルドネにすれば良かったかな。
デザートはリンゴのキャラメリゼにマスカルポーネのムース。マスカルポーネとはティラミスに使われるコッテリしたあのチーズです。個別具体的には悪く無い味覚なのですが、皿全体として纏まりがあるかというとそうでもなく、ちょっとバランバランな印象を受けました。
ネット上の口コミでは辛口のものが多かったですが、3,500円のランチコースとしてはそう悪く無いような気がしました。ただしピエール・ガニェールとはまるで方向性の異なる料理であり、全く別物の店と考えたほうが良さそうです。もうちょっと、こう、料理人の個性が見て取れる料理が増えると良いのだけれど。
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