レストラン石蔵(妙見石原荘)/霧島(鹿児島)

妙見石原荘のメインダイニング。食べログ4.15(2018年1月)でTOP500入りと、恐ろしく僻地にある割に大健闘しているレストランです。
自然に湧き出る温泉と透明度の高い水が混じり合って流れる川沿いに位置します。半個室の部屋からは雄大な景色と美しい鳥たちの姿を楽しむことができ、マイナスイオン感が半端ありません。これは夜よりも昼に来て正解(以上、写真は公式ウェブサイトより)。
食前酒は甘酒。と言ってもドライバーに配慮したつくりであるノンアルコール仕様。上質なヨーグルトのような甘さとコク。これはブラインドで飲んで甘酒と答えられる人は少ないのであるまいか。
一皿目は菜の花。余計な味付けはされておらず、素材そのものの逞しさを感じることのできる味覚です。
百合根まんじゅう。ビョンビョンと弾ける百合根が実に旨い。中にはギュっとした具材が詰め込まれており、全体を覆いかぶさる餡かけの味付けも丁度良かった。
刺し身はマグロとタイ。マグロは恐らく築地から引いているのでしょう。食べ慣れた本マグロの味覚に納得感があります。ただし東京からの旅行者にとっては今ここでマグロを食べる必要があるのかは疑問。タイも悪くは無いのですが、いささか反発力に乏しい個体であり精彩を欠いていました。
お椀は海老しんじょう。大好物です。スープは極潤のようにトロみがあり、口腔内にヒタヒタと張り付く触感が心地よい。海老しんじょうは極めて細やかにすり潰されており、個人的にはもう少し海老の食べごたえを残して欲しいところ。
美しい八寸。ゆうべの霧島観光ホテルのディナーとは雲泥の差です。ただし極めて印象に残った味覚があるかというとそうでもなく、味わいよりも見た目に寄せた料理でした。
メインは豚肉とその軟骨をコッテリと炊いたもの。これは美味しいですねえ。ドロリと濃厚で暴力的な調味ながら品と風格も感じさせる逸品。これまでラーメン屋や沖縄で食べてきたラフテーは何だったのかと自問してしまうほどのレベルの高さです。
お食事で大失速。なんやこのゴハンめっちゃ不味いやんけ。見た目こそはシャレオッティなのですが、ベチャベチャな食感に味付けも何も無く明らかに失敗作です。試食はしているのか、どうしてこの料理にゴーサインを出したのかと、料理長を小一時間問い詰めたい。
お漬物で何とか騙し騙し食べ進めたのですが、半分進んでもう限界。久しぶりにガッツリと料理を残してしまいました。
他方、赤だしは見事な美味しさ。まず出汁が素晴らしく、ナメコの食感もグッド。ゆうべの赤味噌を湯で溶いただけの赤だしの400倍旨かった。
デザートは黒糖アイスモナカに自家製の軽羹(かるかん)。黒糖アイスモナカは最中そのもののレベルが極めて高く、スガラボのアレを思い出しました。軽羹はいわゆる軽羹味であり、不味くはありませんが美味しくもありません。まあ、軽羹とはそのような食べ物である。
知覧茶(ちらんちゃ)が素晴らしい。知覧茶とは鹿児島県南九州市にて栽培されている緑茶の総称またはそのブランドのことであり、透き通った若緑色が美しく、爽快感に溢れる香りと後味が見事です。お茶の味をしっかりと楽しむことができました。

全体として極めてバランスの良い食事であり(あのグチャグチャゴハンは何かの間違いだろう)、日帰り温泉代金を含めて6,000円はリーズナブル。サービスも品が良くスマートな身のこなしであり、東京の高級フランス料理店のそれと比べても遜色ありません。

さてここからはオマケ。何と当店でランチを摂ると、無料で風呂に入らせてくれるのです。通常利用の日帰り入浴代金は1,200円であることを考えると、より一層の割安感が生まれます。風呂にカメラは持ち込めないのでココから先の画像は公式ウェブサイトのものを引用しております。
さて当館の温泉は炭酸の泡が肌に弾ける泉質。いわゆる源泉かけ流しであり、ぴったり1時間で満水になる浴槽設計であり衛生管理もバッチリ。加水して薄めたり塩素殺菌したりせず、常に新鮮な温泉の成分を楽しむことができます。
圧巻は露天風呂。これは露天というよりも、単に川の脇にある源泉を塞き止めているだけです。手付かずの自然に囲まれながら野生動物のように源泉を楽しむ。これは良いとしか言いようがない。思い出に残った温泉でした。
湯上り後はラウンジにてキンキンに冷えたお水で水分補給した後に、挽きたてのコーヒーをゆったりと楽しむ。食事からここまで含めて6,000円はお値段以上。次回は是非、宿泊客として訪れたいなと思わせてくれるランチでした。


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