表参道の裏路地、T-Placeという高級感溢れるテナント群を抜け、その突き当たりにあるルーチェ南青山という、これまた高級テナント内に入居するレストラン。
& ecle。アンド・エクレと読みます。マンダリンオリエンタル東京のシグネチャーの初代シェフとして活躍したシェフ、オリヴィエ・ロドリゲスが独立。表参道にネオ・ビストロをオープンさせました(写真は食べログ公式ページより)。
ネオビストロとは一流のキャリアを持つシェフが、サービスや店構えを簡素にし、リーズナブルな価格でトップレベルの料理を提供する業態です。とは言え温かみのある柔らかな内装であり、雰囲気も価格帯も女子ウケ間違いなしのレストラン。
スペシャリテは『クーリシャス』。シェフが米や雑穀の新たな可能性を見出し考案した米料理。日本人になじみの深い米とフレンチのソースを合わせた、野菜たっぷり色とりどりなカレー的食べ物といったところ。『クーリシャス』の種類は10近く取り揃えており、いずれも千円代半ばとリーズナブル。
「そうそう、ついにワインスクールに通い始めたの」いいねえワインスクール。若い女の子がああいう場にデビューすると、名前も知らないオッサンが自動的にめちゃ高いワインを寄進してくれ、勝手に人生の応援団になってくれる。良いこと尽くしだ。
ランチセットとして自動的に付帯するサラダ。これがオマケ品質を全く超えており、滋味溢れる味の濃い野菜の素晴らしさはもちろんのこと、盛り付けまで手が込んでおり、この時点で当店の料理に対する真摯な姿勢を感じました。
「でもね、美味しいもの食べたいなって思って連絡したらすぐにご馳走してくれるオジサンがいたんだけど、この前、突然『結婚してくれ』とか言われたわけ。マジでキモい」
こちらもセットとしてついてくるスープ。ご覧の通りに丁寧な作りであり、ビーツの野性味溢れる味わいにサーモンの旨味と塩気、ピンクペッパーのアクセントと、このまま星付きレストランのスープとして提供して通用するレベルです。
うーん、それはちょっと可哀相じゃないかなあ。少なくともちょくちょく2人でデートしてたわけでしょ?「デートだなんて。あたしが何か食べたいって言ったら、勝手に奢ってくれてただけだから。便利なサイフをひとつ無くしちゃったのは心残りだけど」
相対的にパンの味わいは低く感じてしまいますが、それはその他の料理の質が高すぎるだけであり、この価格帯としてはこのパンも相当なレイヤーに属しています。
「そうそうこの前ね、よく知らないオバサンに『え!?タケマシュランさんとお知り合いなんですか?』って物凄く食いつかれて。あたしの反応が悪かったからか、タケマシュランについて小一時間説明された上に、最終的には『紹介して欲しい』って食い下がられて大変だったんだから」
確かに最近この手の話が多く、この前なんて謎のネカマからハニートラップ(!?)を仕掛けられて肝を冷やしたところです。私なんかと繋がっても得るものは特に無いので、どうかその時間を、今あなたの近くにいる大切な人のために費やしてください。
真打登場『クーリシャス』。これは正にアート。想像していたよりも巨大であり、一般的なカレー屋のそれと同等のサイズです。選択したフレーバーはブロッコリー。お米は黒米で、トッピングはイカとブロッコリーのチリソテーです。
見た目の美しさはもちろんのこと、様々な味や食感、香りが一皿に凝縮されており、これまたこのまま星付きレストランの料理として提供しても誰も文句を言うことの無いクオリティでしょう。着色料や添加物を一切用いず、ブロッコリーの色と味をそのまま活かして仕上げたクーリ(ソース)が実に美味しい。
上質でヘルシーな料理を腹いっぱい食べてお会計は1,600円(写真は食べログ公式ページより)。これは表参道の奇跡である。次回は是非とも夜に訪れてコース料理を試したいところ。池袋にもビストロをオープンしたそうで、そちらも気になる。
お会計後はオリヴィエ・ロドリゲス自らが日本語を流暢に操りながらお見送り。これはファンになってしまいそうだ。表参道に用事があれば立ち寄りたいお店。オススメです。
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