「たまには外でごはん会しましょうか~」とシャンパーニュ狂からのお誘い。日程だけ預けると即座にいつメン4人が出揃いました。
何か見覚えのあるアプローチだなあと記憶を辿ると、元のお店は青山えさきでした。リーズナブルなミシュラン3ツ星店でかなりのお気に入りだったのですが、山梨県の八ヶ岳山麓に移転を宣言し突然閉業。その後どうなったかどなたかご存知でしょうか?情報求む。
オッサン4人での食事会なので、泡は当然にボトルで参ります。
「いや~!男だけっていいですねえ!今夜はお金の心配をしなくて良い!ワリカン!ですから!」男に奢られて当然という態度の女の子たちへ。男子は男子なりに頑張っているのです。つまり「(男女の関係無しに)末永く付き合っていきたい」と思える相手に出会った際には、なるたけワリカンで臨むのが関係が長続きする秘訣とも言えるでしょう。
アミューズは南フランスの郷土料理の再構築?豆を潰した何かでしたが、それほど印象には残りませんでした。
前菜はスープドポワソン。へ?どこが?スープドポワソンってヌキテパのアレみたいにドロドロのやつなんじゃないの?
その疑念はあまりの美味しさに打ち砕かれました。薄緑がかったクリアなジェルがまさに魚のスープの味覚であり、悶絶するほど旨いのです。どうしてこんなにも透明なのに魚介の風味が響くのか。ニンニクマヨネーズ(ブイヤベースのソースとして定番)もキッチリと添えられており、それはそれは見事なスープドポワソンの再構築でした。ベルギーのキャビアもオマケとして贅沢で嬉しい。
白はちょっと捻ってニュイサンジョルジュ。「いやあ!今夜は最低でもひとり1本だ!値段を気にせず飲む酒は旨い!」こうなってくると美食の追及という意味では性的魅力を感じない相手とテーブルを囲むのが一番なのかもしれません。
パンは低糖質のブリオッシュ。なるほど確かに抵糖質かもしれませんが味わいはスカスカ。私は糖尿病患者ではなく人間ドックオールAであるため、私にとっては物足りないものでした。
オマール・ブルー。週に2度もフランス屈指の高級食材を楽しめる私は幸せものである。先のスープからは一転してクラシカルな調理であり、正統的なビスクのソースがことさらに旨い。
唐突に「僕、エビそんなに好きじゃないんですけれど…」と言い出す男がいたので、相談に乗ろうか?と身を乗り出すと、「このオマールは本当に美味しくって完食できそうです」とのことでした。思わせぶりなオッサンめ。
アーティチョーク。上に乗っかってるフニョフニョはフレッシュなフェンネルとのこと。フェンネルって鰯とのパスタで食べる印象なので、このような形を見るのは初めてかもしれません。料理としての味はソースはクラシックで好きなのですが、アーティチョークについてはそれほど記憶に残りませんでした。
南仏推しのシェフに敬意を表し、パレットのシモーヌをリクエスト。ピーチやアプリコットの香りが主体。白ワインとしてはかなり複雑な風味であり余韻も長い。
ヒラメです。魚そのものの味わいは中くらいだったのですが、ソースにコクがあり実にクラシック。ソース原理主義者の私にとっては実にタイプな一皿でした。先のワインにもピッタリです。
メインはアンティムッファ牛のフィレ肉。アンティムッファ牛って何やねん、なのですが、内藤善夫さんという乳酸菌マスターがいて、彼の乳酸菌「アンティムッファ株」で育った大変ありがたい牛だそうな。味わいはティエリー・マルクスで食べた和牛フィレ肉に酷似。柔らかく、攻撃的でなく、円みがある、極めてアンティムッファな肉質でした。
アンティムッファ牛そのものも旨いですが、個人的にはボルドレーズソースに拍手を送りたい。このシェフの、ソース文化を大切にしたいという姿勢、大好きです。
ボルドーの中で何が良いかとソムリエに相談するとコチラをご提案頂きました。前菜の時点で注文しデキャンタージュして頂き、アンティムッファ牛の到着の頃にはじんわりと風味が花開き、アンティムッファ牛にピッタシカンカン。参加者全員が恍惚の表情を浮かべアンティムッファ状態へと移行。
デザートは割に普通。これまでの派手な料理から一転して飾り気の無い一皿です。
食後の飲み物はハーブティーを選択。胃袋が洗浄されるというか、五臓六腑に休息を促す慎ましやかな1杯です。
小菓子はお誕生日プレート仕様。嬉しいですねえ。バースデーのスペルがグチャついているのは私がマカロンを転がしてしまったためであり、全て私に責任があります。
クリーン・ヒットなお店でした。お邪魔する前の下調べの際、ホームページが妙に哲学的で胡散臭く感じていたのですが、出される料理は全て完璧に基本を押さえており目をつぶって食べても美味しいレベル。その上で創意工夫に富んでいるという、コンテンポラリー・フレンチの本懐を楽しむことができるお店です。ベクトルとしてはロブションに近いかなあ。
プレゼントにパンツを頂きました。これはイカす。女性が同衾する際に相手のパンツがマカロンだらけだったらどんなリアクションをするんだろうと色々と妄想が膨らみました。妙にローライズな所も注目すべきポイントです。
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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
- ガストロノミー ジョエル・ロブション ←最高の夜をありがとう
- アピシウス ←東京最高峰のレストラン
- ナリサワ ← 何度訪れても完璧
- SUGALABO ←料理だけなら一番好きかも
- エクアトゥール ←天才によって創られる唯一無二の料理
- フロリレージュ ← 間違いなく世界を狙える
- キャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレ ←世界を狙える日仏料理
- アラジン ←あの日あの時あの場所で何を食べたかの記憶がハッキリと残る料理
- 北島亭 ←私は大食いでわかりやすい味を好むため当店は黄金センター
- ALLIE ←ワインという食事の知的部分を担うソムリエの重要性を再認識させてくれるお店。
- アルシミスト ←こんなに魅力的なプレゼンテーションのブーダンノワールを食べたことがない
- メイ ←ブロートウェアが何ひとつ無い
- Parc ←当店ほどまでに重みのある二ツ星は東京ではなかなか見当たらない
- ラ・ファソン古賀 ← 強烈な個性をテーマに据えるドクトリン