馳走 陽雅(ちそう ようが)/六条烏丸

2017年6月30日にオープンした新しいお店。開店後しばらくは会員制で営業していたようです。ちなみに目の前の通りは六条通り。幅数メートルのみであり、車両に通行制限のあるという、オモロなメジャー通りです。
店主は京都たん熊で修行の後、在スペイン日本国大使公邸料理人に就任という面白い経歴。恵比寿凹町の料理長を務めた後、地元京都で満を持して独立されました。物腰の柔らかい店主がワンオペされているので、和食屋特有のピリついた雰囲気は一切ありません。
名刺代わりにカリン酒を。 香りと渋味、酸味のバランスが良く胸が温まります。

早速今夜のお酒を選ぶのですが、3合4,000円のペアリングコース、4合5,000円のペアリングコースという、極めてリーズナブルな用意されていました。ここのところ連夜の誕生日パーティ続きであり、肝臓が疲弊しつつあったので弱気に3合コースを注文。
ペアリングコースには最初の1杯として自動的に生ビールもついてきます。これは嬉しい心遣い。店主は相当の酒好きとみた。
最初の一口は五穀がゆ。純粋にプレーンなお粥を味わいのですが、ちょっと意図がわかりませんでした。何か深い意味があるのかなあ。
早速日本酒です。ただ単に料理に合わせるというだけでなく、普段飲んでいる日本酒や好みについても事前に伺ってくれ、それをベースに合わせていくというスタイル。
八寸。鮎の甘露煮が日本酒のお供に最適。あけびもあまり食べる機会が無いので嬉しい。ウズラの卵のウニ漬けも酒にピッタリでした。
牡蠣と白子(?)の羽二重蒸し。羽二重蒸しとは豆腐を使った蒸し物のこと。羽二重というのは舌触りよく滑らかに仕上げる料理に用いる料理だそうな。牡蠣の旨味が妖艶な滑らかさを放ちます。また惜しみなくブチ込まれたマツタケもグッド。「今年のマツタケは味はまあまあだが価格が低い」とのことです。
ド派手なお造りはヨコワ。ヨコワとはクロマグロの若い魚のことで、西日本での呼称だそうな。じっくりと炙ったシイタケやタップリすりおろしたカブ・大根、テンコ盛りの筋子など、気前の良い親戚の漁師の家に遊びに行った感覚が楽しめます。
初めて見る長野のお酒。綺麗な酒躯体でフルーティな香り。若干の微発泡が爽やかさを後押しし好みのタイプです。
焼き物はカマスの杉板焼き。朴訥としたカマスに杉の香りが移り、清涼感を引きたてます。付け合せも上々の仕上がりなのですが、個人的にはもう少し塩気が強いほうが好みです。
「もずくです」と出された一皿。どこがもずくやねん、というツッコミ待ちでしょう。先の羽二重蒸しや造りもそうですが、当店は主題をサっと言っておいて、その周りのトッピングが驚くほど豪華なのが堪らない。香箱ガニの凝縮感に白子のセクシーな滑らかさ。それらの余韻を絹のように細いもずくが一手に引き受け、本日一番のお皿でした。
さてここからはぶりしゃぶ。たっぷりと脂の乗ったブリを心ゆくまで楽しみます。
こちらのトッピングは大徳寺納豆。大徳寺納豆はいわゆる納豆とは異なり、味噌や醤油の原型とも言える醸造製品。赤味噌を香ばしくしたような風味がブリの脂身に絶妙にマッチします。
久保田で有名な新潟県・朝日酒造の最高峰ブランド、洗心。精米歩合28%という神経病的な拘りを見せる銘酒です。辛口端麗で高価な酒ながらスイスイと飲めてしまう恐ろしい酒。いやあ、良いものをペアリングで出して頂けました。
湯豆腐。味そのものは中くらいですが、京都で湯豆腐を食べるという行為はある種の宗教的儀式でもあるので、それを達成できることができて嬉しかったです。
再度ブリしゃぶで決着をつける。それにしても全体を通して野菜が美味しいですね。なんでも大将が通勤時に修学院離宮・大原・静原の農家に立ち寄り、直接朝採れ野菜を買い付けているとのことです。新鮮で良い野菜が安く手に入るのはいいことだ。量がまとまらず、市場に出回らないレアモノも分けてもらえるそうな。
炊いている途中のゴハンを一口。味覚が試されているような気がして勝手に緊張してしまいました。
お漬物特集。ゴハンが炊き上がるまでコチラでちびちびやるのです。高野豆腐が美味しかったなあ。スープがジュワリと沁み込んでジューシーなの。
ゴハンが炊き上がりました。ピッカピカに輝く米粒に圧倒。米そのものの味が濃く、特にトッピングなどせずともコレ単体で旨いです。
ちょろりとオコゲもお出し頂けました。
「お待たせしちゃったんで、これはサービスです」と獺祭の2割3分。いやあ、大好きなお酒じゃないですが。この酒を旨いと言うとミーハーに思われるのでなるべく口をつぐむようにしているのですが、やはり旨いものは旨い。
これは何のアイスだったっけな。和食店あるあるですがシンプルな甘味で記憶に残らず。
和食にはパティシエに相当する職業がなく、私のような思いを頂いているグルマンは多いと思うので、デザートがすごい和食屋というのもニッチで面白いかもしれません
白餡を炙ったようなお菓子。若干の白味噌の風味が関西にいる感を演出します。
薄茶を飲んでごちそうさまでした。
残ったゴハンはおじゃこのオニギリにして頂けました。写真だけ撮って、翌日の朝食にしようとウキウキしてたのですが、どうにもその魅力に抗えなくなって、夜のうちに食べ切ってしまいました。退店後も幸せが続くっていいなあ。

飲んで食べて1.5万円でした。先日の田がわもそうですが、やはり京都は和食がリーズナブルですね。東京なら3万を超えても納得のいく食後感です。私のようにしょっちゅう色んなところへ出かける人は、東京で和食を食べる必要はないかもしれません。


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