2階の個室へとご案内。畳へのベタ座りではなく、和室用の椅子が用意されていました。最近の和食はこのようなスタイルが通常なのでしょうか。確かに外人は地べたに上手に座れないので親切。
柚子酒で乾杯。一般的な味わいでありオマケ感が否めない。
さて今回は「すっぽん尽くし会席」を注文。爬虫類のすっぽんは変温動物であり、水温が低くなると冬眠に入るのですが、その冬眠に備えて栄養を蓄える晩秋のスッポンが最も美味しくなる季節なのです。
コース開始からちょっぱやで出てきた八寸。料理の説明が特になかったのですが、生麩とウニを焼いたもの、アナゴのお寿司だと思います。生麩の食感は京都に居ることを感じさせてくれ、ウニの味覚は酒飲みである喜びを想起させる。
お造りはもちろんスッポン。三ツ骨と呼ばれる柔らかい身は馬刺しのように逞しい味覚。肝はまさにレバー味であり、良くも悪くも牛レバ刺しと大差ありません。
生き血。もちろんストレートではなく酒で割っています。いやあ、グロいですね。そして特に美味しくはなく、スッポンを食べる際の儀式のようなものです。
炊き合わせ。エンペラのゼラチン質が舌にまとわりついてきます。生姜煮というシンプルな調理がスッポンの風味を引き出してグッド。
ちなみにこのような料理を見ると女子はすぐに「わあ、コラーゲン!」と飛びつきますが、コラーゲンとはただのゼラチンであり、経口摂取しても肌まで行き渡ることはありませんのでご注意を。
スッポンの唐揚げ。鶏の唐揚げに酷似した味覚であり美味。ただ、旨いは旨いのですが、それなら鶏の唐揚げで充分ではないかという吝嗇な発想が頭をもたげる。
「すっぽんの一人鍋」。『京料理の神様』と謳われた、本家たん熊初代、栗栖熊三郎が始めたスペシャリテです。なるほどこれは絶品。身はさておき、とにかくスープが旨い。ベクトルとしてはアピシウスのウミガメのスープ。トロリとしたゼラチン質が口腔内にひっかかる。
ここでなぜかホタテの貝柱に黄味酢。それなりに美味しいですが、意図が全くわかりません。私はスッポンを食べに来たのである。
〆の雑炊。先のスープを用いた雑炊であり問答無用で美味しいです。おかわりしたいおかわりしたい。
お漬物は中くらい。
水物は梨、柿、葡萄。極めてシンプル。
心ばかりの品を、ということで女将よりお土産を頂きました。でもこれって自前のモノじゃなくてどっかから買ってきたやつだよなあ。こちらも先のホタテに続いて何がしたいのかよくわかりませんでした。
お会計はふたりで6万円弱でした。たっかーい!サービス料15%と消費税8%もこの金額ではボディブローのようにきいてきます。
季節のレアものだとは言え、このシンプルで少量のコースにしては高杉晋作。まあ、フグとかスッポンとか、冬の珍味という意味ではこんなものなのかもしれません。おそらく今後の人生、自腹でスッポンを食べに行くことはないだろうな。そんな予感が心を支配した一夜でした。
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和食は料理ジャンルとして突出して高いです。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの和食ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い和食なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
- かどわき/麻布十番 ←人生で一番の和食かも
- くろぎ/湯島 ←吉野川の天然鰻に悶絶。ただちょっと割高。
- 温味/すすきの ←旨い!多い!安い!完全無欠の三ツ星和食店。
- 龍吟/六本木 ←モダンスパニッシュとさえ感じる前衛的な和食。外人にオススメ。
- たきや/麻布十番 ←龍吟を天ぷらにするとこうなるのではないか。
- えさき/青山 ←創作気味。ミシュラン三ツ星和食にしては圧倒的な安さ。
- 季節料理なかしま/白島(広島) ←同じくミシュラン三ツ星和食にしては圧倒的な安さ。
- 歓盃 人形町田酔はなれ/人形町 ←飲んで食べて1.5万円。このあたりが分水嶺。
- 日本料理TAKEMOTO/代官山 ←2万円を切ってくる。私にはこれぐらいがちょうど良いです。