急遽場所を蘭桂坊に変更。蘭桂坊とはランカイフォンと読み、六本木を凝縮したような歓楽街のことです。
テーブル席は全て予約で埋まっていたため、立ち飲み利用です。
美しい夜景に見とれていると、「晴れ男だよね。昨日まで水蒸気が多くて薄曇りだったんだけど、今日はピカピカ」耳慣れた声の方向に振り返ると、かつての飲み仲間が笑顔で手を振っています。簡単に挨拶を済ませ、ちょっと飲み物を買ってくるよ、と、一旦彼女を置いてバーカウンターへ向かう。
メニューを見て驚き。ワインが恐ろしく高い。日本の酒屋であれば5,000円はまず超えないようなボトルが3万円近くし、グラスでも数千円です。バンコクのシロッコ同様、ルーフトップバーの世界的相場はこんなものなのかもしれません。
せっかく南国を訪れているので私はパッションフルーツのカクテル、彼女にはジャスミンナントカという当店のシグネチャードリンクを。キャッシュオン形式の明朗会計です。
飲み物片手に彼女の元へ戻ると、この短時間に日本人と白人のペアにナンパされていました。どうした、と彼女に声をかけると4人に流れる気まずい空気。このあたりの居心地の悪さは人種を超えるものなのでしょう。
彼らは何とか取り繕おうと、どうでも良い自己紹介などを始めるのですが、初対面であり今後二度と会うことの無いオッサンたちの身の上話などはまるで興味の無い私。「私は彼女に会うのが久しぶりで、ふたりだけでゆっくり話がしたいのでもうよろしいでしょうか?」と単刀直入にバッサリ行くと、男たちは奇妙な笑みを浮かべながら静かに去って行きました。「ま、あたしみたいな女の子をひとりで放っておくと、こういうことになるのよ。わかった?」と、少しだけ満足気な彼女。
気を取り直して彼女と乾杯し近況を報告しあっていると、先程のナンパメン二人組が再登場し「先程は失礼しました。お詫びに何か1杯ごちそうさせて頂きたいのですが、いかがでしょうか?」との申し出。うーん、タダ酒は魅力的ではあるものの、それをきっかけに4人で飲みませんか的な魂胆がミエミエだったので、やはり丁重にお断りする。
私は人生の半分を生きた。しかもその半分は良いほうの半分だ。メメント・モリ。私に残された時間はあと僅か。どうでもいいことに貴重な時間を費やす余裕は無い。
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