バーン・カニタ。バンコク内に複数店を展開する高級タイ料理グループであり、当店はそのサトーン店です。
「ギャラリー」と銘打つだけあり、店内は多くの絵画や彫刻などが展示されています。まるで美術館の中で食事をしているような気分。
さて今夜のテーマは悩み事について。悩み事、悩み事。はて、悩み事。私は特に無い。強いて言うなれば、視力が良くないことと、最近雨が多く洗濯物の乾きが悪いことぐらいか。「おまえさ、それ、悩み事じゃないから」と、早速叱られました。
無料のお通しとしてミャンカム。香り強い葉っぱに、豆やらココナッツやらオリエンタルな食材を包み込み、タマリンドベースのタレをつけて賞味する伝統的な前菜です。
じゃあそっちの悩み事は何なんだよ、と問う。「うーん、肩こりが酷いことかなあ。あと、最近腕が上がらなくなってきた」それを人は四十肩ひいては老化と呼ぶ。
ソムタム。青いパパイヤを使ったサラダです。タイ料理の基本の4大要素である、パパイヤの甘い、ライムの酸っぱい、唐辛子の辛い、塩のしょっぱいが調和した逸品。当店は外国人客が多いためか、辛さは控えめであり比較的食べ易い。
「あたしは生活が不安定なことかなあ?」と、デザイナー女子。「ホラ、あたし、フリーランスでやってるじゃん?将来設計なんてまるでなくて、毎月の収入すら安定しないから」いいぞいいぞ、悩み事らしくなってきた。
ホタテとキノコの炒め物。大ぶりなホタテがゴロゴロと入っており、ホタテラヴァーとしてはたまらない一皿です。味付けはやや中華料理風で誰もが好きな風味。東京で黙って出されればタイ料理とは気付かないかもしれません。
「僕は悩みが尽きませんね」とマバタキ。そりゃあ人間生きてりゃ大小いくつか悩み事はあるだろう。代表的な悩み事を3つ、先輩たちに相談してみなさい、と続きを促す。
「まず、プライベートの時間が無い。仕事が忙しすぎるんです」いいねえ、世のサラリーマンが傷を舐めあうには打ってつけの題材だ。他には他には?
空芯菜の炒め物。こちらも中華料理のような調味であり親しみ易い味覚。やや油が多いため胸につかえることもしばしば。
「もう、タイ語を聞きたくありません」タイでビジネスを展開する人間としてはあるまじき発言である。「違うんですよ。公式な場ではみんな英語で話してくれるんですけど、ふとした雑談とかでタイ人スタッフがゲラゲラ盛り上がってたりすると、すごく疎外感を感じてしまう」なるほどそれは一理ある。訪日外国人についても同じ感覚はお持ちのはずでしょうから、今後は気をつけようと姿勢を正す。
トムヤムクン。酸味や辛味よりもエビの旨味が目立つ私得な一皿。麻布十番のAOCにベクトルは近いか。個人的にはバンコクで食べたトムヤムクンの中で最もタイプな方向性なのですが、タイ好き女子などは首を傾げていたので、亜流であることは間違い無さそうです。
「もう、タイ料理を食べたくありません」タイでビジネスを展開する人間としてはあるまじき発言である。「そりゃあ、出張者とか遊びに来る人は、たまに食べるものだからいいんですよ。でも、純ジャパがずっとこっちの食事を続けるのは身体が受け付けないものなんです。だから、今夜みたいに、客人が来る時にしかタイ料理は食べないようにしています」
店員にオススメされるがままに注文したカレーが到着。すわグリーンカレーか、と身構えるのですが、覚悟していたほどは辛くなく、むしろ円みがある。ココナッツミルクがたっぷりであり、そういえばこの色の由来は何なんだろう。
クンオップウンセン。海老と春雨の蒸し物です。エビの煮汁が春雨の1本1本にまで味が沁み込んで実に美味しい。大ぶりなエビを頬張り至福のひと時。
お会計はシンハ小瓶1本200バーツが響き、ひとり4,500円。ううむ、この手のレストランとしては少し高いか。もちろん世界基準で考えれば恐ろしくリーズナブルではあるものの、やはりキナリーやタリン・プリン、ルアンマリカなどと比べると割高感が否めない。ハコは大きいので、いざというときの使い勝手の良いお店として確保しておくのが良い使い方でしょう。
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2017年は延べ1ヶ月ほどバンコクに滞在しました。安くて美味しいタイ料理。在住者に勧められたお店ばかりなので、大きく外すことは無いでしょう。
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