この日は会う前から「今夜はそんなに遅くまではムリ」と事前にひろこから言われていたので、エンネを堪能した後そのまま解散しようとすると、「えー!もう1軒行けんじゃないの~?」とタクシーに押し込まれる。日中は清楚な女子大生のようなこと言いながらの拉致監禁。大いなる酔っ払いとはこんなもんである。
ウグイス。三軒茶屋のグルマンにあまねく知れ渡るビオ系のビストロ。ワインリストは無くその日空いているグラスを相談しながら決めるというスタイルです。
店内は喧騒、とは言わないまでも、心からの空気を楽しんでいる大人たちが陽気に語らう。
魅力的なビストロ料理の数々。もう、メニューを見ただけでこの店は旨いぞとわかります。さすがに3軒目なので満腹なのが残念。酒のお供に2皿の注文に留めます。
スプーンひと口サイズのブーダンノワール。プレゼンテーションが凝っており、ブーダン以外の様々なトッピングが名脇役。
面白いのは、このブーダンはワインとセットである点。ブーダンをひとつ注文すると必ずこのワインがついてくるのです。さすがにバーターするだけあって完璧なマリアージュ。血の滾るブータンのコクに、カカオやチョコレートの香りが100%ドッキング。
スペシャリテの炙りシメサバとジャガイモ。これだけでの量で1,100円は奇跡。家で作るよりも安くつくのではないか。シメサバはこれでもかというほど脂に満ちたメタボ体質であり、炎で炙られた焼き目の香りが堪らない。ジャガイモはマッチョなポテトチップスのような味わいであり、日本人であれば誰もが好きな味覚でしょう。
刻一刻と迫り来る門限が靴に入った小石のように気になり始める。ねえ、今夜はそんなに遅くまではムリ、なんじゃなかったっけ?もう23時過ぎてるよ、と忠告すると「了解。じゃ、次、何飲む?」この女は何をどう了解したというのだ。決してBATNAを開示するようなことはしない安西ひろこ似の健康優良児。
目の前でシェフ恐ろしく丁寧にコーヒーを淹れ始める。豆から挽くところから開始する手の込んだの1杯であり、脊髄反射で我々にも1杯づつ、と注文。
いわゆるサードウェーブ的な、酸味主体のコーヒーであり、レストランの食後に楽しむ1杯としては究極に近い味わいで大満足。やっぱりコーヒーが美味しいレストランが好きだなあ。ラスト・ワン・フィート。最後の署名が一番記憶に残るというのに手を抜くことの多い飲食業界に一石を投じた1杯でした。
彼女がお手洗いに行っている間に帰り支度を済ませ、小さな微笑を得るつもりで彼女のストールを自分の首にミラノ巻きしておいたのですが、ビタンっ!と、手のひらで思い切り背中を殴りつけ、酔っ払いがそうするように大声で笑う。これ絶対背中に手形が残ってるやつや。
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