先附の胡麻豆腐。これはごく一般的なもの。もったりとした食感にすったゴマの風味が濃厚。甘辛いタレがやや暴力的。
煮物椀は白みそ仕立てで。お魚はタイです。これは絶品。ベースの出汁の味わいがはっきりとしている上で白味噌の芳醇な香りと円やかさが堪りません。魚の可食部もたっぷり。これまでの人生において、白みそは甘ったるく食事にそぐわない印象を持っており意図的に避けていましたが、考えを改めました。
造りはタイとカンパチ。タイは筋肉質な歯ごたえに適度な旨味。カンパチはやや熟成しているのか、歯がスっと差し込むような不思議な食感。ただし個人的には元気いっぱいの個体を臨むので、今回のカンパチにはそれほどアガらない。
盆盛り。一口サイズの可愛らしい料理が百花繚乱。なのですが、お店の方からそれぞれにつき特に説明はなく、もの寂しい対面となりました。別に混んでいるわけじゃないのだから、そこは詳しく教えてくれてもいいのにな。鮭の西京漬けの焼き物が特に美味しかったです。
焚合。ナスが格別。口に放り込むとジュワりと広がる品の良い煮汁。滑らかでホクホクとした食感のサトイモも名脇役。野菜だけでここまで食べる幸せを感じさせる技量には恐れ入る。
しめじご飯は超普通。炊き具合もシメジの存在感も中くらいであり、家庭料理と大差ありません。もっと具材の量で責めるなり、香りを楽しませるなりして欲しかった。
香の物も普通。スーパーで売られているお漬物と同等の味わいでした。
デザートも美味しいのですが、冷静に考えるとコンビニスイーツレベルです。
皿出しのテンポもよくサービスも卒が無い。費用対効果も悪くなく、ホテル内レストランらしい秀才的なお店です。もう少し客に寄り添った接客と、唯一無二のスペシャリテがあればまた嬉しいな。いずれにせよ、使い勝手の良いお店です。
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和食は料理ジャンルとして突出して高いです。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの和食ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い和食なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
- くろぎ/湯島 ←吉野川の天然鰻に悶絶。ただちょっと割高かも。
- 温味/すすきの ←旨い!多い!安い!完全無欠の三ツ星和食店。
- 龍吟/六本木 ←モダンスパニッシュとさえ感じる前衛的な和食。外人にオススメ。
- たきや/麻布十番 ←その龍吟を天ぷらにするとこうなるのではないか。
- えさき/青山 ←こちらも創作気味。ミシュラン三ツ星和食にしては圧倒的な安さ。
- 季節料理なかしま/白島(広島) ←同じくミシュラン三ツ星和食にしては圧倒的な安さ。
- 歓盃 人形町田酔はなれ/人形町 ←飲んで食べて1.5万円。このあたりが分水嶺。
- 日本料理TAKEMOTO/代官山 ←2万円を切ってくる。私にはこれぐらいがちょうど良いです。