オープンして未だ1年ほど、Bistro 釜津田の斜向かいのビルの2階にあります。
オレンジ主体の明るくポップな店内(写真は公式ウェブサイトより)。が、失敗したと思いました。18席の店内はほぼ満席なのですが、誰一人として食事をしていないのです。スタッフはシェフとマダムのふたりのみ。入店した我々に気づいてもらうまでに5分近くかかりました。
注文を取りに来たのが入店15分後、前菜の到着がそのまた10分後と完全に回っていません。このような時間泥棒をするぐらいなら、予約の時点で断るか、入店時間を大幅にズラすよう提案して欲しいところです。
さて肝心の料理の味ですが、困ったことに実に美味しい。左下はサンマと海老しんじょうにサッパリとした野菜を添えてあり、揚げ物ながら爽快感に溢れた逸品。左はイチヂクに生ハム、ゴルゴンゾーラと外さない味。たっぷりの季節野菜は新鮮であり、右奥のパテドカンパーニュはワサビソースがキラリと光る傑作。右下のサバは軽くマリネしたあとに炙ってあり、香ばしさと脂身、梨の爽やかさ、アボカドの滑らかさが渾然一体となり見事なオードブルです。
クミンが練りこまれたパンも軽やかな仕上がりでグッド。
覚悟していたとおり15分ほど待たされたカボチャのスープ。総体としては美味しいのですが、やや甘味が強すぎて食べ疲れてしまうきらいがあります。甘味の代わりに旨味が欲しいところ。
魚は甘鯛とハモのブレゼ(蒸し焼き)。甘鯛が豆腐のように柔らかく、一方でその味には確固としたものがあります。ハモは私はそれほど好きじゃない食材なので意見差し控え。白眉はソース。アメリケーヌ的な深いコクを湛えながら、オリエンタルなスパイスを効かせた興味深いものでした。 つい先日、かどわきで甘鯛とハモを食べたばかりですが、それとはまた違ったベクトルの味覚でした。
メインは但馬産の和鹿のポワレ。鹿とは思えぬほど透明感があり柔らかさに溢れた肉です。ジビエ初心者にはちょうど良い一皿かもしれません。グリーンペッパーソース も爽やかで親しみ易い仕上がり。もう少し量があればパーフェクト。
デザートも抜かりなく美味。左はカボスのアイスクリームで、仄かな甘味の上を良く滑る清涼感。右はバジルのアイスでバジルよりもバジルの味が濃く、これはデザートというよりは料理に用いたほうが良いかもしれません。右奥のアーモンドプディングは中くらい。奥の「小麦粉を殆ど使用していない」スフレは濃厚なショコラをきかせながらも見事な口どけであり、箱ごと独り占めしたいほどの味わいでした。
コーヒーは普通でした。支払額は料理だけで4,000円と少し。納得感のある費用対効果です。オペレーションはイマイチなものの料理の仕上がりは確か。となると使い道が難しいお店です。間延びした皿出しのため勝負ディナーや接待には不向き。ラーメン屋でさえ3~4人の店員がいるというのに、この席数を2人だけで回すというコンセプトにムリがあるような気がします。
したがって、気の知れた友人と時間を気にせずのんびり飲み食いするにちょうど良いでしょう。今度は夜に、町内会の食事会で来てみようかな。
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