内装は今流行りの北欧系であり、KEYUKAがレストランを出店したかのような雰囲気です。追加料金を求められるだけあって客層は安定しており、未就学児の利用もOKではあるものの、みな空気を読んでパリっとお座りしていました。
カリフォルニアの泡で乾杯。イチゴや木イチゴ、スイカのような香りであり、一口含むとショウガのようなニュアンスも感じられます。目をつぶって飲めばシャンパーニュのロゼと勘違いしそうな複雑味があり、40ドル程度とレストランで飲むにはリーズナブル。ちなみにクリュッグが229ドルと小売とそう変わらない値付けであり、プリンセス・クルーズは酒でそれほど儲けようとしていません。
スターターにはシャルキュトリを注文。生ハムやサラミの味はもちろんのこと、オニオンのピクルスなどの小細工までがきちんと美味しく、今後の展開に期待を持たせてくれます。
サラダにはエビを注文。密度の濃い大ぶりのエビが歯ごたえ抜群。ただし大した調理はされておらず味付けも中途半端であり、料理というよりも材料でした。
妻は「Little Gem」という魅力的な名称の料理を注文。しかしその内容は一般的なサラダであり、「一口ちょうだい」と言う気も起きない。
当店の自慢は手打ちパスタ。乾麺ではなく毎日が手作りです。選んだ皿は豚肉が詰まったラビオリ。ラビオリそのものとしては合格点といったところですが、レモングラスのきいたグリーンカレー風味のソースなど、船上レストランにしては恐ろしく手が込んでいます。豚の皮をカリカリに揚げたトッピングも印象的。
魚料理にはホタテをチョイス。これが冷凍食品丸出しの味わいであり、決して不味くはありませんが不満足な一皿です。
妻はロブスター。一口交換こしましたが、ぷっくりと身がハッキリとしたロブスターであり実に美味しい。オニオンの風味が漂うソースにパンチェッタの塩気と薫香が小気味よい。
肉料理としてアヒルのコンフィをオーダー。6時間かけて熱を入れたもも肉はナイフ要らずのホロホロ感。それでいて皮についてはしっかりとクリスピーに仕上げてきており、フランスの由緒正しきビストロのそれと同等の味わいです。白インゲン豆の煮込み方についてもカルカッソンヌのカスレもかくやと思わせる調理であり、スモーキーなベーコンとパルメザン・チーズの旨味も手伝って、本日一番のお皿です。
妻はラム肉。こちらについても交換こしたのですが、ミルクの香りが濃厚な個体であり、肉の味そのものが濃い極上品で顔が引きつりそうなほど旨い。素材が良すぎて調理の巧拙を忘れてしまいそうな味覚でした。
デザートにチーズケーキを注文。それなりに美味しいですが特筆すべき点はありません。誰かがホームパーティにお土産に買ってきそうな味わいです。
妻はシトロン・タルト。酸味が思いの外強烈で、シゲキックスのレモン味をタルトにしたような味わいです。これまでの料理に比べてデザートは劣位にあります。
総括。鳴り物入りで船上に殴り込みをかけ、話題になった割にはクラシックな調理であり、ベーシックな味わいで非常に好感が持てました。皿出しのタイミングやテーブルウォッチングも完璧であり、世界的に見てもレベルの高い接客です。
サンフランシスコあたりの路面店であればミシュラン1〜2ツ星は取れるレベルであり、料理だけでひとり150〜200ドルは請求されても文句は言えない完成度です。そういう意味では39ドルというカバーチャージはリーズナブル。
そうそう、我々の担当のサービスはフィリピン人の男性だったのですが、飛鳥Ⅱの目が死んだ接客やぱしふぃっくびいなすの鈍くさいサービスと比べると、同じ国民とは思えないほどのおもてなし力です。やはり社風や教育って大切なんだなと身に沁みた一夜でした。
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