連れられたのはファイナルファイト感あふれるガード下。並みの中学生であればカツアゲされるレベルです。
「ここ3週間で4回来たんだから」と胸を張る連れ。私は世界中の飲食店を食べ歩いてきた自負がありますが、それでも扉を開けるに躊躇するエクステリアです。
8席ほどの小さなお店。肌ツヤの良い女将さんがおひとりで切り盛りされています。
「あら!○○ちゃん!(連れの名)」と一斉に歓待を受ける連れ。入店5回目にしてこの厚遇ぶり。彼女のコミュ力の高さといったらない。
まずはビールで喉を潤す。「○○ちゃん、もうこのお店のアイドルだから、みんなに嫉妬されるわよ」と女将さん。ワッハッハと高らかに笑う年配客は当店きっての古参であり、なんと45年間にも渡る常連とのこと。
お通しはお豆腐になめたけをかけたもの。「今日はいっぱい料理しといて良かった!ホラ、せっかく来てもらったのに、ちょこっとしか種類が無いと、つまんないじゃん?」断言しよう、これは酒飲みであり食い道楽の発想である。
12時から時計回りに人参しりしり(?人参の千切り)、野菜の肉巻きチーズ揚げ、おでんのコンニャクと厚揚げ、茄子の煮浸し、サツマイモのポテトサラダ、中央は煮玉子です。
茄子の瑞々しさが記憶に残りました。また、コンニャクにつける山椒味噌が助演男優賞。こういう料理がサっと出てくる家庭がうらやましい。
炭水化物は焼きそば。作り置きのリヒートではありますが、心和む何かがそこにはあります。
「今夜は17時からずっと入れ替わり立ち代わりでずっと満員。お皿洗いが間に合わないわ。またお客さんに手伝ってもらおうかしら」冗談と思いきや、周りの常連客は特に笑うでもなく心を得たりという表情。「このお店ね、お客さんが手伝うのが普通なの。店内に入りきれなくなったらチームワークで外にテラス席まで作っちゃうんだから」と常連客。
お会計の段になり、財布を開くと現金が全くないことに気づき顔が青くなる。ねえ、もちろんカードって、使えないよね…、と連れに相談すると「いいの、今夜は私が連れてきたかったんだから」と私の財布を押し返す。恐縮でございます。ごちそうさまでした。
残念ながらこの辺りは再開発が決まり立ち退きを求められ、現在は新たな物件を探しているとのこと。「閉めちゃおうかとも思ったけど、ここまで常連さんがいたら、あたしひとり勝手に辞めれないでしょ」物理的にも精神的にもみんなで作り上げる酒場。またお邪魔したいと思います。
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おひとり様大歓迎の名酒場100軒を掲載。ひとり客の割合・男女比・ビールの値段などを「酔い処早見表」として整理されており読み易いです。紙媒体だと1,000円近くする本が、Kindleだとたった500円でお買い得!