私の第一印象は「知らんがな」であり、「素人にまで射程を広げてきた文春のフットワークすげえ」が第二印象です。だって彼と一切面識無いんだもん。何とも言えないですよ。海外の王室のゴシップぐらい私にとって現実味がありません。
面識はありませんが、一度だけメッセージのやりとりはしたことがあります。とある上場企業より「うどんが主食さんも寄稿するんだから、タケマシュランさんも寄稿すべきだ」と謎の説得を試みられたことがあり(詳細は別記事にて)、しかしどうもその会社が信用できなくて、うどんが主食氏に裏を取ったことが1度だけあります。それだけです。
【前提:半値八掛け二割引き】
そもそも皆さん、食べログを始めとするグルメサイトの情報を本気で信用していますか?私には「ネット上の情報は半値八掛け二割引き」という前提があり、ましてヒトの味覚なんて生い立ちや文化的背景によって大きく変わるものであるし、もっと言えば同一人物であってもその日の体調によって全然変わってくるもの。私も同じ店であっても全く印象が違うことなんてしょっちゅうです。
また、私は「あの店のシェフが独立した」「あの店が新しい業態で店を出した」のような情報を元に動いており、ネット上の口コミ起点で動くことはまずありません。したがって、何処で誰が接待されていようが、どこにサクラが混じっていようが、ネット上の口コミが私の行動に影響を与えることは極めて限定的なんですよね。
もちろん土地勘が全くない場所に赴く場合には食べログをアテにすることもあります。その場合であっても、点数はさておきレビューを十数件読み込みさえすれば、経験上、大体どんな店かわかってきます。少なくとも天気予報ぐらいの精度はあります。なぜなら私の中には自分なりの基準があるから。これについては後述します。
話は脱線しますが、ヒトの味覚はアテにならないものの、接客に対する感受性は安定しているので、サービスの善し悪しについてのネット上の口コミはかなり信用できます。
【動機:バカ舌と言わないで】
私を含む自称食通にとって、一番言われるとキツいのは「あいつは高いものばっかり飲み食いしてるけど、何にもわかっちゃいないバカ舌だ」です。沽券に関わるとはまさにこのこと。そのため、いくら世間の評判が良かったとしても、それには絶対に流されないように姿勢を正し、純粋に料理だけに向き合って舌の上で素材を解きほぐすようにします。
前にも書きましたが、たかだか数万円の接待で自己のブランドを失墜させるはずがありません。美味しいと思えない料理をさも旨そうに書くだなんて自殺に等しい。専業ライターはさておき、私のように収入源が別にある人間の書く記事は、基本的に信用できると考えて良いでしょう。
「じゃあ今回の事件はどうなんだ!」おっしゃる通りです。これは偶然の、交通事故のようなものと私は納得するようにしています。ただし、集団において突然変異(一般的な枠組みに囚われない特異な行動を取る存在)が生じることは歴史が証明しているのだから、そういうことも含めて割り引いてネット上の口コミを読み解けば良いのではないでしょうか。ウソの情報に対して抗議するのはもうやめて、自分自身の読解力を見つめ直す良い機会と考えたほうが人生ラクです。
【ぶっちゃけタケマシュランはどうなのよ?】
さて、皆さんが一番気になる所です。実際のところ、私はこれまでお店側から一度もご馳走になったことがありません。一度もです。
そもそも偽名で予約したり同行者に予約してもらうことが殆どなので、まず自分が「タケマシュラン」であるということはバレていない(はず)。そのうえ最近の記事は旅行の話と飲み会の議事録ばかり。もはやグルメブログというよりはオッサンの妄想日記状態。私の店舗に対する影響力なんて微々たるものです。
厳密に言うと、「今夜はお代は結構ですので、この店のことは記事にしないでください。そして2度と私の前に現れないで下さい」のようにトラブった結果、無償になったことはあります。しかしながらその後もシェフから鬼電話突撃を繰り返され粘着された結果を考えると、きちんと飲み食いした分を払って好き放題書いたほうが面白かったなあと今では後悔しています。
閑話休題。それでも心臓がリモコンのミュートボタンのように小さい私。心配になって自身の食べログの評価点を再確認しました。
まずは夜の採点分布。
続いて昼の採点分布。いずれも私にとっての「高評価」とは4.0~5.0であり、そのひとつひとつを丁寧に確認したのですが、もはや爽快感すら覚えるほど赤の他人だらけです。
最高評価店のナリサワなんてかれこれ5回以上お邪魔しているのに1度たりともシェフと会話したことがありません。これはこれで私の人間性に問題があるのではないかと別の心配が浮かび上がってきました。
唯一デイヴィッド・セニアという面識のあるニース出身のシェフがいて、食べログ上では4.0点をつけているのですが、彼の店は惜しくも閉店、数年前に活躍の場をシンガポールに移しています。ここからが私の気持ちの悪いところ。その後、私は彼を追ってシンガポールまで食べに行っており、通常であれば再会の感動も後押しして高得点間違いなしなのに、平然と3.5点に留めている。完全にサイコパスである。
最高裁判事もかくやと思わせる公平性はさらに続く。私は「株式会社ひらまつ」の株主であり「ひらまつ」の評判ひいては株価が私の資産に大きく影響を与えるのですが、気に入らなかったレストランについては2.0点という厳しい評価を平然と下します。短期的なキャピタル・ゲインなどどうでも良い。もちろんグラウカスリサーチのような空売りを狙っているわけでもありません。中長期的に素晴らしいレストランが残って欲しい。それが文化貢献活動だと信じているのです。
【結論:自分なりの基準】
ネット上の口コミに踊らされないための結論。それは『自分なりの基準』を作るしかありません。顔も見たことの無い他人の味覚に踊らされるのではなく、一番長く付き合っている自分の味覚を徹底的に信じましょう。
例えばフランス料理(いつもいつもフランス料理ばかりを例に挙げて恐縮ですが、これが私の基準なのだから仕方ありません)。まずは飲んで食べて5,000円のフランス料理から。1ヶ月に10店も行けば5,000円のフランス料理とはどういうものが大体わかるはずです。短期間で集中的に訪れるのがポイントです。ヒトの記憶というものも、味覚と同様にアテにならないものなので。私が一時期、狂ったように鰻ばかり食べていたのは鰻料理の基準を作りたかったからです。
次に飲んで食べて10,000円を10店。恐らく5,000円の店とは歴然とした差を感じることができるでしょう。「安くて美味しい」などという発想が如何にくだらないかに気づく瞬間でもあります。その中で、5,000円の割に奮闘している店、10,000円だけれども行く価値の無いお店というのを明確に振り分けられる状態に至っていることでしょう。
飲んで食べて30,000円を10店。ここまで来るとミシュラン星付きレストランが出始め、場合によっては世界レベルの店も見え隠れし始めます。同じフランス料理と言えども5,000円の店とはもはや別ジャンルであり、土俵が異なります。オリジナルとは他者との比較説明を不要とするものだと納得するようになり、一方で、パプリカよりも中身の無いお店に怒りを覚えるのもこの頃です。
仕上げは50,000円超を10店。料理はある種の芸術であり、費用対効果で測るには限界があると、悟りの境地に達します。「ピカソの絵を買うとき、コスパを気にするかい?料理もそれと同じだよ」などとゴタクを並べる嫌な野郎です。また、「自分は好きではないが、三ツ星であることは理解できる」のように、明鏡止水の心境に至るのもこの頃でしょう。
ここまで来れば貴方はひとかどのフランス料理通です。合計95万円。意外と安くないですか?車やファッションを趣味にしてしまうと、それこそ予算は青天井ですが、フランス料理なんて世界最高レベルを楽しんでも所詮こんなものです。
フランス料理について『自分なりの基準』ができた次には、その『基準』をもとに、イタリア・スペイン・和食・中華と活動の場を徐々に広げていきましょう。「おお、フランス料理と同格の味わいで価格は半分だ。イタリアンって割安だな」「なんだよモダンスパニッシュって。確かに前衛的だけど、高い割に美味しく無いじゃん」のように、価格を軸にマッチドペアして評価するのもまた一興。
その頃には、ネット上の口コミなどには見向きもせず、信頼の置けるグルメ仲間から自動的に情報が吸い上がって来る貴方がいることでしょう。その暁にはぜひ貴方の『基準』を世に示し、どんな感動を抱いたかを語って頂ければ幸いです。
というわけで、渦中の店「ウェスタ」、どなたかご一緒しませんか?
https://tabelog.com/tokyo/A1302/A130202/13185496/
ツイート
関連記事
- 「東京タラレバ娘」状態に陥った女子を救うたった1つの方法
- 旦那の悪口を言う女は一生幸せになれない
- グルメブロガーの苦悩2017
- バレンタインに手作りチョコだけは勘弁して欲しい
- 「お代は結構ですから悪く書かないで下さい」とシェフに懇願された話
- 3ヶ月前にトラブった例の店からの電話が鳴り止まない
- 慶應生の逆襲、東京カレンダーへの報復
- ザ・レストラン by アマン/大手町
- 何そのクソブログ聞いただけで超読みたくねえ
- 麻布れとろ/麻布十番
- 若手のパリス・ヒルトンとBBQした結果www
- ミシュラン星付きレストランを200軒食べ歩いた私が成城石井でいつも買うもの
- UBERおよびLyftとタクシーの比較
「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。