東京でポルトガル料理と言えばクリスチアノ。そのオーナーが新たにオープンしたのは何故かタイ料理。意図を知りたくて訪問です。
渋谷センター外の奥の奥。人通りが少なくなった頃の、スナックなどノスタルジックな店が連なる古ぼけたビルの2F。
おそらくスナックのような店を居抜きで借り受けた店でしょう。小さなキッチンを取り囲むカウンターは僅か8席。予約してから行きましょう。
メニューはいずれも1,000円以下と良心的。なのですが、いわゆる日本で定番のタイ料理、すなわちトムヤムクンやパッタイ、ガパオごはん、ヤムウンセン、カオマンガイは見当たらず。妙に見え隠れする「発酵」の二文字や「電車チャーハン」のような謎の料理名がメニュー表に踊る。
シンハビールで乾杯。グラスは遠慮してそのままビンダビンダです。
発酵肉揚げ4種盛。手羽先に豚バラ、ソーセージに鶏肉。鼻腔をくすぐる発酵臭。独特の酸味と旨味。ソーセージって揚げるんだ。色々と発見のあった一皿でした。
ピータンのホーリーバジル炒め。「あたしピータンに目が無いの」とアジア料理に詳しい連れ。「カライ、オーケイ?」との質問に大きく首を縦に振る。しかしこれは完全なる禁断の果実。兎にも角にも辛くって、ビールを飲んでも飲んでも追いつかない。しかしその辛味の奥に鎮座する間違いの無い旨味。
白きくらげのサラダ。たっぷりのキクラゲとエビ。日本人には発揮できない酸味と甘味、そして辛味。複雑な味覚の多重奏。日本語は苦手としながらも無口に、そして確実に料理を作り続けるシェフ。あんなに小さなキッチンでこれほどまでに多種多様な料理を作り出すことができるものなのか。
「あたしウイスキーもらう、タイのやつ」酒飲みの彼女。一口頂きましたが度数はそれほど高くなく、その代わりに香りが豊かです。
鶏もも肉の発酵海老味噌炒め。絶品。これまでとは方向性が異なり全く辛くありません。ココナッツの優しい甘味にアミノ酸を感じる海老味噌。具材はもとよりソースが旨すぎます。1滴も残さず舐め尽してしまいました。
サービスでお出し頂いた豚の皮のおせんべい。独特の香りと甘味。普通に日本で生活していると辿りつけない味わいがこの店にはあります。
〆の炭水化物は舟そば。豚の血入り牛出し汁米麺。聞いただけでややこしい料理です。宗教を限定する一皿。豚の血をブーダンノワール以外で食すのは初めてかもしれません。この料理もやはり甘く、その奥にコクがある。麺は柔らかく単調に感じましたが、本場ではこれが正しいのだろうと納得する。
ショッキングなお店でした。味に幅と柔軟性を持っているお店です。特筆すべきはその値段。私も連れもパカパカ飲み、もうだめだ食えねえという喫水線まで達しているというのにひとりあたり4,500円で済みました。このようなレストランにふとめぐり合うことこそ命の洗濯。数日と間を空けずに連れが再訪していたので、その満足度の高さがうかがえます。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。
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