女子大生とふたりきりです。
たまたまタイミングが合って久しぶりに会おうかとお食事へ。互いのアクセスを鑑み池袋。私にとって全く不慣れな地であるため、食べログを中心に情報を集め評判が割に良い当店をチョイス。
立地をあまり深く考えず予約したのですが、「トロピカル愛らんど」「指名制アロマエステ」「洗体エステ」などピンク系が多数入居する雑居ビルの3Fにありました。初めてのデートにしてはハードルが高い。
ビールはベトナムを中心にアジアの缶ビールがたくさん。最初はドラフトビールが飲みたかったので日本のものを。
「お久しぶりです!こうしてふたりで会うって不思議なカンジ。○○さん(私の名)がすごく有名な方だって最近知って、お母さんとビックリしたんだから」とジンジャーエールを傾けるJD。
彼女に初めてお会いしたのは2015年。2度目に会ったのは2016年で母親同伴。2017年はふたりきりでピンクの雑居ビルと距離が加速度的に縮まります。
Gỏi cuốn。生春巻き。特段クセもなく標準的なものです。
「すごいビルですねここ。『泡の洗体エステ』って車ですかw。他人に身体を洗ってもらって何が楽しいんだか」
Gỏi đu đủ。パパイヤサラダです。こちらはシャキシャキとしたパパイヤが大容量に盛り付けられており、味付けもオリエンタルな風味が前回で美味しかった。
「風俗と言えばね、ウチのサークル、毎年童貞の男の子を風俗に送り込んで、その後みんなで感想をじっくり聞くっていうイベントがあるんです」地獄かよ。悪ノリにも程がある。私は仰いで天に愧じない大学生活を送ることができ幸せでした。
Chả giò rế。あみあみ揚げ春巻き。これは旨い。ジューシーでとろりとしたタネをパリパリとした生地が取り囲み、食感と味の両方で楽しむことができます。食が細い彼女もパクパクと食べ進めており溜飲が下がる。
「この前ね、キモいオヤジが友達にネックレスをプレゼントしたんです。それがティファニーのオープンハートなの笑っちゃうでしょ。友達みんなで『メルカリで売ろうぜwww』って盛り上がっちゃった」オヤジと言ってもその男は40代であり近々私も通る道です。命長ければ恥多し。品行方正に務めよう。
ベトナムの缶ビール。これ自体に罪は無いのですが、注文すると缶ごとホイって手渡されるのは味気ない。それでいて600円なんだもんなあ。
「思いもよらない男友達が実はあたしのことを好きだった、ってパターンが多いんです。あたしもメンヘラホイホイなのかなあ。好きならさっさと告ってくれればいいのに。あたしなんて男慣れしてないんだから、チョロいもんですよ」試しにこの場で告ってみようかと思いましたが、お母様の横顔が脳裏をよぎり鉄の自制心。
Bánh xèo。海鮮パリパリお好み焼きです。野球のグローブほどの大きさであり、中にはモヤシが数袋入っているんじゃないかというボリューム感。パリパリとした食感も楽しいです。
彼女は中々に身長が高いのですが、その体重は驚くほど軽い。「いつもお母さんに怒られるんです細すぎだって。この前なんて、ガリガリフェチの男に『お前の魅力は首から下だ』なんて言われたんです、酷いでしょ」と頬を膨らませる彼女。
ガリガリフェチねえ、好きな芸能人は榎本加奈子とか?と話を合わせると「誰ですかそれ?」。なるほど榎本加奈子が「雪見だいふく」でデビューし「家なき子2」で人気を博したのは90年代半ば。それ以降に産まれたのであれば無理もない。
たっぷりの野菜も付随します。バインセオにタレをたっぷりつけ、大ぶりのレタスで豪快に包み一口で頬張り胃袋が満たされる。そういえば今夜はほぼ野菜しか食べてない。ヘルシーですねベトナム料理。
「あたしの夢、叶わないのかなあ」ふと目を潤ませる彼女。「叶わない」かどうかを決めるのはいつだって自分だよ。負け犬は自分で負け犬と思ってからが負け犬なんだ。成功するまで続ければいい。カーネル・サンダースがKFCを創業したのは65歳。最後にトライしたときに成功すればそれでいい。目の前のことに一喜一憂する必要はない。人間万事塞翁が馬。
Canh chua。パイナップル甘酸っぱいスープ。が、想像を絶する甘さとパイナップル風味であり、膨満感が訪れるふたりには厳しい1杯。とにかく満腹。ただし野菜で満腹なので充実感があります。
「今夜はありがとうございました!○○さん、話を聞くの上手だから、何でもペラペラ喋っちゃう。あたしのこと、メンヘラホイホイだなんて書かないで下さいね!」ごめんさっき書いた。
「また近々!たまにはあたしにも会ってくださいね!!」と手を振りながら電車に吸い込まれていくJD。化粧も変わってずいぶん大人になったなあ。私を慕ってくれる女の子はみんな大好きだ。彼女の夢がいつか叶いますように。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。