イル・フィーゴ・インゴルド/六本木


大学時代の同級生女子3男2での新年会。Il Figo Ingordo。六本木ハイブロー層の中で人気のイタリアン。
もう何十年も前からイタリア料理屋なのではないかと思うほど風情のある佇まい(写真は公式ウェブサイトより)。私は初めてお邪魔するのですが、系列店のランテルナマジカで大変満足した記憶があるので妙な自信がありました。女性陣は「あたしたち3回目~」と、ふふん、お前らどうせ合コンでだろう。
少し早めに到着したのでじっくりとワインリストを眺めさせて頂いたのですが、この店、トラットリアにしてはワインがめちゃめちゃ高いです。食べログの「予算:¥8,000~¥9,999」という情報は何なのか。ワインエキスパート女子にリストを渡して感想を求めると、「なにこれ!一番安い赤ワインでも8,000円を超えてる!」。
食材と調理を自由に選びながら料理をオーダー。溢れ出るアッピア感。気の置けない仲間ですし、各々が絶対に食べたい料理をひとつ指定して、みんなでシェアするという作戦で行こう。

「ねえ○○(私の名)、タラレバ娘、観てる?」僕はインテリだからテレビなんか観ないよ、と返し『インテリって自分で言うんじゃねーよ』的なツッコミを期待していたのですが、「漫画もあるから絶対読んだほうがいいよ。きっとタケマシュランの糧になる」と真面目にアドバイスを頂戴し、まるで私が滑ったみたいで居心地が悪かったです。それにしても当サイトはそういう井戸端会議的なものじゃないつもりなんだけど。
ブッラータを丸ごと。私の最も好きなチーズのうちのひとつであり、丸ごとオーダーするのは人生で初めて。大勢での食事会の醍醐味である。

『旦那の悪口を言う女は一生幸せになれない』って記事、何様のつもり?あんたってホント最低」とのっけから罵倒される私。「確かに『公認会計士とか手軽』のくだりとかどうかと思う」と唯一の味方であるはずの男子からも厳しいお言葉。六本木の北虜南倭ここにあり。「あたし、あの記事題名見ただけで無理って思って読んでない」大丈夫、キミは絶対に旦那の悪口を言うタイプだから読まない方がいい。
当店のためだけに造られたオリーブオイル。フレッシュで色が濃く、大地を感じる味わいです。お店の方が先のブッラータにドバドバとかけてくださり、「足りなければご自由にどうぞ」と気前良く置いていってくださいました。
パンは普通。しかしオリーブオイルや後述の魚介のエキスをたっぷり浸して食べる贅沢があるので、シンプルぐらいでちょうど良いです。
酒があまりに高いので安いボトルを必死の思いで探し出す。共通の先輩の話となり、「あの人って凄くケチ。全然奢ってくれないだから」と口を尖らせる女。そう?僕はよくご馳走になってるけどね。キミは『ご馳走するに値しない』と評価されているだけなんじゃん?と思ったことを口にすると「ひっどーい!あんたってホント最低」と全力で罵られました。智に働けば角が立つ。兎角にこの世は住みにくい。
ヤリイカとアーティチョークのフリット。ヤリイカの旨味とアーティチョークの苦味が調和し素晴らしい前菜でした。ただ皿出しが遅かったため、供された時点で白のボトルがスッカラカンになっていたのが残念。
マテ貝とミル貝。海の味覚が凝縮されており、塩気が舌を目覚めさせる。野菜はアーティチョークで食材がかぶってしまったのですが、全く方向性の異なる調理。スープをたっぷり含んで抜群に美味しかった。
パッパルデッレは手長海老のトマトクリームで。「やっぱお前は海老だよな」と私の趣味嗜好を見透かされる。海老の出汁がとにかく甘く、叫びたくなるほどの高揚感を楽しむことができます。ちなみに1人前80gで2,600円。2人前なので5,200円。パスタ1皿で5,000円を超えるのか。。。
ワインエキスパート女子が選んだのはコチラ。私と思考回路が全く同じであり、リストの安い順番での注文です。いやほんとワイン高いの。ガブガブ飲むにすごく抵抗がある。
さて肉料理に向けてグラニテで口を整えます。

「カレシがさ、『一緒に暮らしたら~』みたいに思わせぶりなくせに、結局『結婚する意義がわからない』とか言うわけ。どうすればいいんだろ」

あ、それはさっさと別れたほうがいいよキミのこと本気で好きで手放したく無いならすぐに結婚するもん、そうしないってことは彼はキミのこと結婚したいほど好きじゃないんだよ、と実に説得力があることを言ったつもりなのですが、再び「ひっどーい!あんたってホント最低」と罵り倒されました。

何が酷いのかさっぱりわからない。表面的に聞こえの良いことを言って負け戦を続けさせるほうが余程酷いではないか。

「だいたいアンタさ、ブログはそれなりだけど、実際に会って話すと全然面白くないよね」今手首切った。
尾崎牛褐色和種赤牛の赤ワイン煮込み。結構好き。黒コショウがきいていて、しかもダイレクトに届くというよりは後からふわりと鼻の奥に乗ってくるようなアクセント。凝縮された肉の旨味も小気味良い。
こちらは8,200円とそう悪く無い値付け。なのですが、オーダーした際に「それよりもコッチのほうが良いですよ」と別の高いゾーンを店員に薦められました。私は割に外食をするほうですが、客が選んだワインを否定する店員は初めてです。

もちろん見当違いの全く合わないワインを客が選んでいたら助言はすべきでしょうが、コチラは当たらずと雖も遠からずでしょう?しかもワインの説明が長い。私はあなたの薀蓄を聞きに来たのではなく友人と食事を楽しみに来ているのである。サービスしないのもサービスのうち。テーブルの空気を読んでください。
デザートにメレンゲのケーキ。これは普通。
こっちはなんだっけな?特に印象に残らず。やはり甘味はフレンチで食べるに限る。

味は間違いないのですが、トラットリアと称する割に高くつくお店でした。拝金主義というか、ものすごくお金を使わせようと仕向けてくるので、常に「今いくらぐらいかなあ」という意識が残り、心から楽しむことが難しいです。見栄っ張りな人とか、女の子の前で良いカッコしたい人には辛いお店でしょう。

サービスについても女性陣からはすこぶる評判が悪かった。先ほどのワインのくだりは極端な例にせよ、いやに馴れ馴れしい芸風は好みが別れるところです。

料理は間違いなく美味しいです。クレメンティアな気持ちをもったお金持ち向けのお店ですね。レストランって、難しい。


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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
十年近く愛読している本です。ホームパーティがあれば常にこの本に立ち返る。前菜からドルチェまで最大公約数的な技術が網羅されており、これをなぞれば体面は保てます。