Au Bon Accueil。シェフはブノワの立ち上げメンバーであり、ソースのシェフを務めたという実力派。長い間お邪魔したいと考えていたのですが、駒沢大学という地には行く機会が少ない。たまたま近所に住む女の子のお誕生日が近かったので、渡りに船と予約を入れる。
20席近くはある小奇麗な店内。なのですが、セッティングされているテーブルは我々のみ。おいおい今夜は金曜日のフライデー・ナイトだぜ?大丈夫かこのお店。
嫌な予感というものは当たるもので、のっけからスタッフとのコミュニケーションに違和感を覚えました。食前酒を聞くことも無く、いきなり食べ物メニューの説明に入ります。まずはシャンパーニュでも飲ませてくれよ、とワインリストをひったくり、すぐにボトルで注文するのですが、とにかく食べ物の注文を取るのが先と、飲み物の準備をする気配がありません。
アミューズにブーダン。豚の血と脂による腸詰です。クセの無い上質な仕上がりなのですが、酒もなく唾液で飲み下すしかないのだから食べる歓びも中くらいである。そのとき店の奥から「ポコン!」と大きな音が。ざわざわと忍び寄る恐怖感。エチケットの確認もなしに勝手に抜栓され、並々と注いだグラスだけを持ってこられました。
何を飲まされているかわかったものじゃない、とボトルを手近に持って来てもらいます。ようやく酒が手に入り人心地つき、のんびりと会話を楽しんでいると、食べている途中のブーダンを勝手に下げられ開いた口が塞がらない。
パンは密度があって好きなタイプです。
前菜はホワイトアスパラガスにシャケ、アサリ。卵黄のソースがこってりとして美味しいです。ただしそれぞれの素材が不統一に味覚を主張しており、全体的なまとまりには欠けていました。
ところでやはりサービスに難あり。グラスにシャンパーニュを注ぐたびに「失礼します」と割って入ってくるのでいちいち会話が中断される。黙って空気のように注いで欲しい。
魚料理は天使の海老のポワレ、焦がしバターソース。標準的な味わいです。
そしてやはりサービス。たまたま女の子のほうが一足先に食べ終わり、私は数口を残した状態だったのですが、私がまだ食べているというのに彼女の皿だけ下げてしまうのです。「ええ~、なんか女のあたしが超食べるの早いみたいに思われて恥ずかしいじゃん」という絵は見えないのか。想像力の欠落にも程がある。
ここでサービスが驚きの一言。「デザートは何になさいますか?」は?時間が止まりました。おそるおそる、未だ肉料理は食べてないと思うのだけれど、と訊ねても、「ええ、メインはこれから来ます」とニッコリ。これが当店の流儀なのか。次の料理が渋滞しているわけでもなく、2回転させるためにプッシュする必要もないのに何だこのスピード感ゎ。食事をしながら歯磨きを急かされるような感覚。
メインは合鴨。これは肉が全然美味しくないですね、ボソボソとして素材の味が見えない。そこらの蕎麦屋の鴨のほうがよっぽどレベルが上です。他方、ソースは柑橘の香りとカレーのような風味が瞬間鼻腔に宿り、とても美味しかったです。
赤ワインもエチケットの確認なしに店の奥で抜栓地獄。テストは結構と伝えると、当然ゲスト側から注ぐと思いきや、なぜか私のグラスにドバドバと注ぎ始めます。トンカツが青かったぐらいの衝撃。この倒錯したサービスの意図がわからず思わず頭を抱えてしまう。
ところで冒頭述べた通り、今夜は連れのお誕生日祝い。予約の時点で「デセールで工夫して欲しい。彼女の名前は○○○」とスペルまで丁寧に伝えていたのですが、
何このノーム・コア。怒りを通り越し、あれ?目から汗が止まらない。もぅマヂ無理。リスカしょ・・・
あまりの衝撃でこのあたり記憶がありません。
食事と値付けはそう悪くありませんが、サービスが壊滅的なお店でした。接待やデートでは絶対に使うことはできず、近所の家族連れにしか使い道は無いかもしれません。客は正直ですよね。金曜夜で予約が1組な理由がわかりました。
帰路の途中、「そんなにしょげないで、気持ちだけでも嬉しいよ」と青菜に塩の私を慰める彼女。久しぶりにレストランで恥をかきました。まあ、一見のお店でお誕生日祝いをやろうとする私が悪い。大変勉強になった夜でした。
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オーボナクイユ