The Knolls(Capella Singapore)/シンガポール


デイヴィッド・セニア。「タケマシュラン」を語る上のキーパーソンです。私は2010年頃までは全ジャンルの料理を分け隔てなく食べていたのですが、彼のレストランにお邪魔してからフランス料理に傾倒するようになったのです。

彼はリッツ・カールトン大阪の元総料理長で、独立後はフランス料理店のオーナーシェフとなったのですが、ある日突然、お店を閉めて行方がわからなくなったのですね。

当サイトを通じて彼の行方を探していたのですが、ある親切な読者の方より「彼は今、シンガポールのCapellaというホテルの総料理長を務めている」との情報。間髪入れずシンガポール女子に裏を取ってもらうと「在籍確認できました」とのことだったので、彼女に予約を入れてもらったのです。
Capella到着。たったひとりの料理人に会うために随分遠くへ来たものだ。見方を変えると人並み外れたストーカーである。
ちなみにここまで来たものの、彼にアポは取っておりません。その日、シフトに入っていることを確認してからお邪魔しようかとも考えていたのですが、旅程は不測の事態でコロコロ変わるものだし、彼ほどの人気者に都合をつけてもらうのも悪かろうという判断です。
少し早めに着いたので、ホテル内を散策させて頂きました。なるほど素晴らしいホテルです。リッツ・カールトンと同等かそれ以上を誇るシンガポールトップクラス。その雰囲気は、シンガポールというよりもハワイなどのリゾート地の隠れ家ホテルのそれ。
いよいよ入店。当店はサンデー・ブランチが有名で、平たく言うと食べ放題飲み放題のバフェ形式。「全て飲み放題のパッケージ」「シャンパーニュを除くワインが飲み放題のパッケージ」「ノンアルコールのパッケージ」から選びます。

ゆうべ散々飲んだし、今夜も飲むからあたしはノンアルコールでいいや」とのことだったので、ノンアルコールパッケージをチョイス。ちなみに私は朝食時にシャンパーニュを数杯頂いているので、既にほろ酔い気分です。
一番人気は牡蠣。アイルランド、フランス、アメリカの3種のご用意。大きな海老も鎮座。
アミューズのアミューズメントパーク。欲張りにもひとつづつ頂きましたが、クラブケーキのタルトが特に美味しかった。
シャルキュトリも複数週。面白いのは寿司や刺身。さすが日本で暮らしていたシェフである。
驚いたのはデザートの多様さと手の込み様。全ての写真を載せるのもアレなのでいくつかは割愛していますが、料理も菓子も、当記事の倍ほどの種類がありました。
当店オススメのノンアルコールカクテルであるモヒートで乾杯し、シーフードに着手。

責任感がありそうなウェイトレスが通りかかったので、今日、デイヴィッドはいるでしょうか私は彼が日本に居た頃の古い客なのですが、と声をかける。「ええ、いますよ、あなたのお名前は?」と随分と話がスムーズ。ドキドキ。2017年で一番緊張した瞬間です。
じゃーん、7年ぶりの再会!思わずハグをして再会を確認し合うと随分と肉付きが良くなりクマさんのようでした。

連れが食べ物を取りに行った際に、たまたま風格のあるヨーロッパ人がいて、胸元に「デイヴィッド」という刺繍があったので、「あら、あなた、もしかしてシェフのデイヴィッド?私の友達がわざわざ日本からあなたに会いに来ているんだけど。こっちこっち」と彼を引っ張ってきてくれたのです。
「○○(私のファーストネーム)来てくれてありがとう!まあ飲んでよ!」ということでシャンパーニュをサービスして下さいました。「おおい、みんな、彼は私の特別なお客なので丁重にもてなすように!」とスタッフに声をかけ、ああ、このノリは昔と全然変わってないなあ。

あなたのおかげでフランス料理が好きになったこと、その後は毎年フランスに行っていること、去年はあなたの故郷のニースにまで遊びに行ったことなど、仕事の邪魔をしてはいけないと思いつつも、ヒーローに会えた少年のように心がときめいてしまいました。完全にストーカーですねキモいですね私。
ところで、このレストランの周りにはクジャクがウロウロしています。羽根を広げたオスが圧巻。悪魔くんの百目のような柄。ビジュアル系バンドみたい。
こちらはメス。極めて地味です。オスがあそこまで派手になったのは、おそらくメスの気を引くためだとかそんな理由でしょうが、いくらなんでも進化しすぎでしょう。
「君たちには特別だぞ」と他のテーブルには無い料理が供されます。オリエンタルなソースが流れるトリュフのリゾット。まさかビュッフェ・イベントで適度な火加減のリゾットを食べることができるなんて。
BBQの列に並ぶ私を目ざとくみつけるデイヴィッド。「○○(私のファーストネーム)、そんなんじゃなくてこっちを食べろ」と再び特別料理を手渡される。そんなんってあんた、自分が監修してるBBQやがな。
テーブルに戻ると、連れは鴨とフォアグラを楽しんでいました。「あたし、彼の何でもないのに、なんだかすごく得してる。いいのかしら」
「まだお肉食べれるよね?」ということで、風変わりな牛肉料理をお持ちして下さいました。「ちょっとコリアンスタイルで、キムチ液と梨で軽くマリネしてる」とのこと。なるほど微かな甘さと程よい辛味。面白い味わいで、本日一番の料理です。
終盤にチーズワゴンが各テーブルを周るのはさすがのフランス料理店。おなかいっぱいなので少しで、と伝えても結構な料理を出して下さいました。「こっちってチーズがすごく高いから、このお皿だけで結構な値段のはずよ」と連れ。日本も輸入チーズは高いですが、選り好みをしなければ国産チーズに逃げることができます。他方、シンガポールは乳牛など育てていないので、無論国産チーズなども無いのです。

脇に添えられるのはシェリー。当初オーダーしたノンアルコール・パッケージとは何だったのか。
あまりに満腹だったので、スイーツではなく軽めのフルーツ。初めてリュウガン(右下の黄色)を食べましたが、ライチのあっさり版みたいで美味しいですね。ライチよりも好きかも。
ウイスキー好きの彼女はウイスキーに生搾りパイナップルを加え柚子トニックで割った大人のサングリア的飲み物に興味津々。
度数は極めて高いのにロングアイランド・アイスティーのようにスイスイ飲めてしまうという危険な液体。ああ、今日は一日中飲んでいる。「ゆうべ散々飲んだし、今夜も飲むからあたしはノンアルコールでいいや」とは何だったのか。
〆にアフォガード。バニラアイスにエスプレッソを加え軽く泡立てたものですが、これが地道に絶品。思わずおかわりしそうになりました。

気がつけば3時間が経過。ご機嫌で気持ちのよいサンデー・ブランチでした。よし、今回の来星の目的は達成したからそろそろ帰ろうか?と連れに声をかける。

「は?わざわざセントーサ島まで来たのに遊んで帰らないの?」ううむ、私としてはセントーサ島に来ることが目的ではなく、目的のレストランがたまたまセントーサ島にあっただけなので、それほどセントーサ島にこだわりは無いのです。何ならこのまま日本に帰っても良いくらいの満足度。

「リッツからタクシーでカペラに来て、またタクシーでリッツに帰るだなんて、ほんと呆れた。どこでもドアかよ。何しにシンガポールに来たんだか」何しにって、デイヴィッド・セニアに会い来たんだよ。それと、君にも。


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シンガポール目次

シンガポールはどのようにして国力を高め、国際的なステイタスを上げているのかが整理されています。防衛・外交・労働・経済・教育・環境・農業・情報・交通について網羅的に知ることができる名著。

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