「予約時間は19時なんだけど、絶対に遅刻しちゃいけないから、早めに行こう」と、とよ田から慌てて飛び出る連れ。絶対に、って何だよ大袈裟だなあと皆でおどけてみせると「あなたたちは何もわかっていない。あたし、これまで何回か行ってるけど、怒られなかったことは一度もないんだから」
「はあ、助かった」と溜飲を下げる彼女。どういう意味?と問うと「1Fのカウンター席が一番ヤバくて、ちょっとでも声が高くなったりすると『お静かに』って怒られちゃうの。3Fまで来れば大丈夫」
お通しの冷奴。うーむ、これは酷い。乳幼児でももう少し立派な離乳食を食べるのではなかろうか。
「ハイボール、絶対頼んで」と進められるままに頂くと、なるほどこのスタイルは斬新。
「面白いでしょ?となりの『ほさかや』なんてもっとすごいんだから。タバコの灰とか吸殻をそのまま床に落としていいの」日本のサンセバスチャンがここにある。スペインのサンセバスチャンの立ち飲み屋も、ナプキンとかをポイポイ床に捨てていき、「むむ、この店はゴミだらけだ、さぞや人気なのだろう」と逆説的な判断を要するのです。
エビイモ。シンプルに揚げただけ。ホクホクとした食感にねっとりとした舌触り。寒い夜に心が温まる。
切干大根。安定した美味しさ。量もたっぷりで満足度高。
白魚の卵とじ。なるほどこのような形で供されるのですね。みっちりと太く長い白魚が口の中で存在感を示す逸品。
あん肝。やはりレバー系統は日曜日の二度寝のように安心感がありますね。ぬるりとクリーミーなコクの塊が舌の先で溶けていく。
あん肝は日本酒。ラインナップは僅かであり、久しぶりにハードコアな日本酒を飲むことになりました。
肉豆腐。トロトロと溶けゆく卵に温かい豆腐が五臓六腑にしみわたる。
「もう少し静かにして頂けますか?」とついに注意が入りました。ほんとすみません土下座させて下さい小指だけは詰めないで下さいと慌てて姿勢を正すと、我々に向けての注意ではなく、お隣の6人組の酔客についてでした。危ない危ない。
近くのテーブルの方が注文していた刺身がピカピカに輝いていたので思わず注文。そして見た目の通りの味。やはり外見が旨そうな食べ物は旨いものである。
寒ブリの脂のノリもマンモスうれぴー。先の腰の座った日本酒にぴったりです。
これまた近くのテーブルが食べていたおでんが旨そうだったので、あのテーブルのものと同じものを下さい、と注文。ツミレと大根が特に良かった。冬の味。
「あたし、薬剤師だけは信用できないんだよね」と幹事の発言に一同顔を見合わせる。信用するもしないも、そもそも我々素人にクスリの知識なんか全くないし、薬剤師を信用できない状況ってそんななくないか?
「だってホラ、似たような星座の人なんていくらでもいるし、手相なんて見ただけで何がわかるってわけ?」なるほど。人はそれを占い師と呼ぶ。
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私はヒールからスニーカーまでイケるクチです。三ツ星店もいいけど、場末の飲み屋街も魅力的。
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