大学時代の友人が「グラグル部」という同好会を立ち上げました。なんでも、「グラマラス・グルメ」の略らしく、死ぬほどダサい。部員は彼女と彼女のご主人の2人のみらしいです。アメリカのコメディ番組だと大笑いされているところです。
「タケマシュランには名誉顧問となって頂きたい」と全く意味がわからないのですが、人気店を事務局が予約してくれるのはいいことだ。
会場はスブリム。オープンして1年でミシュラン1ツ星獲得と話題沸騰中のお店です。
「なんかKEYUKAみたいな内装っすねえ」と言い得て妙な部員たち。
シャンパーニュが安い。パイヤールならびにドラピエがボトルで8,000円です。グレープフルーツの香りが強く、泡は繊細。少々の苦味が複雑性を強くし、つまり美味しいのである。
名刺代わりに出てきたのは揚げたケールに黒ニンニクのペースト。うーん、これは手抜きじゃないかなあ。見た目が呪術的でそそられないし、黒ニンニクの味もどぎつくて最初の第一歩としては首を傾げざるを得ません。皆も口々に「方向性、大丈夫っすかねえ」と心配気味。
フォアグラのテリーヌ(?)が挟まったオツマミ。これは旨い。黒コショウのアクセントも爽やか。ラスのアレに近いものがあり、惣菜として売られていればダース買いしたくなる味わいです。
炭を練りこんだミルクパンを揚げたもの。もっさりとしてヘヴィ。不味くはありませんが胃もたれを演出する一品でした。
パンは非常に私好み。パンドカンパーニュ風であり、酸味がきいて噛み締めるたびに旨味が広がります。
ホイップバターは右がオニオン、左は忘れちゃった。こういう一手間は嬉しい。
生のブロッコリーのスライス。普通に火を通して欲しい。裏側に隠れているのはカニの身がぎっしりと詰まったペコロスであり期待通りの味。ソースは貝の出汁とディル?輪郭がはっきりしない味付けであり、もっとビビッドに取り組んで欲しいところ。
後続の料理を考えてブルゴーニュのシャルドネにしたかったのですが、唐突に高額(割高という意味ではなく、絶対額がそもそも高いという意味)であり断念。熟慮に熟慮を重ねて8,000円でこれが飲めるならという極めて資本主義的打算に基づきロゼのシャンパーニュ。
アカイカとカブ、黒大根。全然美味しくない。参加者全員が二酸化炭素の多いため息をつき無言になる。レモンのジュレなどの工夫は見られますが、突飛な味わいで調和していません。
半熟卵の上にたっぷりの生マッシュルーム。濃い色のマッシュルームスープを注ぎ入れます。大変美味しいのですが、キャンベルのマッシュルームスープと絶対的な違いはあるかと言われると難しいところです。また、マッシュルームを生で大量に食べるのは個人的にあまり好きじゃない。フジヤ1935のマッシュルームパスタを思い出しました。
ヒラメにローリエ香りをきかせて。素材の味がスカスカで全く印象に残りませんでした。ソースも思い切りがなく参加者全員が首を横に振る。
エゾジカうちもも。これは素直に美味しい。ただし新しい発見もなく、無難な料理です。
こちらのボトルは7,800円。参加者がワイン好きばかりというわけでもないため酒選びが難しい。皆が皆、葡萄酒に価値を見出しているとは限らないので、なんとか安いものを選ぶ必要があるのです。
ヨーグルトに柑橘系の味わい、白ビールをトッピング。これは残鉄剣のように切れ味抜群。直線的に美味しかった。参加者のひとりは大袈裟じゃなく7秒程度で食べきっていました。
焼き芋をイメージしたデザート。冬が胸にきた。
パリパリは焼き芋のペーストを伸ばしたもので、楽しく美味しい。中には密度の高いスイートポテトで誰もが安心して食べることのできる味。本日一番のお皿です。
コーヒーは中くらい。
ギモーブとフィナンシェ。これも中くらい。どフランス料理の小菓子に比べると至って簡素。
どの料理も決して不味くはないのですが、いずれも北欧に憧れてコピペした系というか、いつかどこかで食べたことがある皿が続きました。外形が変わっており食べ慣れていない人はうっかり取り違えてしまうかもしれませんが、絶対的にレベルの高い味覚というわけではありません。
サービスも料理と似たり寄ったりで至って簡素。全般的によそよそしくぶっきらぼうですらあり、歓迎されているという空気を一度も感じることはありませんでした。
しかしお会計でぶっとびー。ひとりあたり18,000円で済みました。これは安い!カンテサンスのランチを思い出す。「やっぱ1万円台で済むと小躍りしたくなりますねえ」と、途端に和やかな雰囲気に包まれます。
「今は珍しもの好きを集客できてるってところかしら。彼らが一巡した後が勝負ね」「あたし全然足りない。近くにラーメン二郎があるらしいよ」と、百戦錬磨の参加者たちは口々に厳しい評価。そう、みんな私のことを辛口だの毒舌だのと評価しますが、実は世の人々も言っていることは大差ありません。違いはそれを明文化するかどうかだけのこと。
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