ALLIE/麻布十番


アッピアの記事でも少し触れましたが、あまりにも嬉しかったのでもう一度。彼女は私よりも10も歳が下で、10代の頃から良く知っているのですが、8月初旬に下記のメッセージを頂きました。
私の誕生日は11月。20代前半でこの準備の良さ!なんて素晴らしい子なんだ私の青田買いセンス半端ねぇ。
というわけで、今夜は私のお誕生日祝い。麻布十番アリエ。食べログ4.17と高評価。先日のブルガズアダと同じビルです。
シェフはランベリーの岸本シェフの片腕として辣腕を奮った方。メートルはベージュ、ランベリー、ドミニク・ブシェの責任者を歴任と、イチローと本田が独立してタッグを組んだような凄い経歴の小さなお店です。
乾杯はシャンパーニュの宝石のブラン・ド・ブランで。「あたしこれ大好きなの。グラスで良かった?ボトルにする?」と、将来が楽しみな女の子。
アミューズ。左のエクレアはサーモンのリエット。右のシューは鴨胸肉の燻製です。サーモンは穏やかな塩気と豊かな海の香りに食欲が掻き立てられます。他方、鴨肉は大地を感じられる力強さであげぽよ。飾りつけのお花もいいですよね。アミューズだからといって手抜きは一切ナシ。

「お次のワインまでの間、もう少しどうぞ~」とソムリエがシャンパーニュを注ぎ足してくれました。な、なんて気前の良いお店なのでしょう。
天然の真フグのフリット、有明産生海苔のソース。シェフは「東京都公認のふぐ調理師免許を保持し、特殊な日本の食材の調理技術にも精通している」とのことで、意欲的な前菜です。

フグは肉汁が溢れ出る仕上がり。クリアな味わいながらもフグ特有の旨味もしっかりと感じられます。衣はエビせんべいでクリスピーな食感が楽しい。海苔のソースも芳醇な磯の香り。
秋刀魚の軽い燻製と茄子と里芋のプレッセ。壁画のようなプレゼンテーションに思わず唸ってしまいます。

脂の乗った秋刀魚が逞しい。里芋のサクっモチャっ、というテクスチャーと、茄子由来の秋の香りがバランスよく調和し和を以って貴しとナス。
「今夜はたっぷり飲んでいいからね!飲め飲め」という頼もしいお言葉に甘え、ここから先のワインはペアリングでお願いしました。甲州のミネラル感が秋刀魚のコクにぴったりです。
パンはシンプルながらも慎み深い味わい。秋刀魚の脂を受け止めるのにちょうど良し。
左上はバター。右下はオリーブオイル。オリーブオイルは乳化させてから固めるなど、手間隙を惜しみません。
黒鮑のヴァプール、セップ茸のソース。鮑の肝とセップ茸のソースがカルピスの練乳割りくらい濃く、酒の消費量が加速する一皿です。鮑の弾力的な歯ごたえに、小宇宙(コスモ)を感じる猛々しいソースをたっぷりと絡めて頬張る至福のひと時。
私はフレンチレストランで日本酒を出されるのを基本的に嫌うのですが、この皿ばっかりは圧倒的に日本酒がお似合いでした。微発泡で個性的に明るい味わい。柑橘系の香りもたまりません。先の鮑と見事なマリアージュです。
「せっかくなので、ワインでも合わせましょう」と、こちらもお出しして頂けました。しかしここは我らが佐藤祐輔の圧勝。

それにしても、ここぞと言うところでの日本酒の使い方が素晴らしい。日本素材に傾倒したレストラン、例えばレフェルヴェソンスなどは日本酒をダラダラと出し続けて来るのでウンザリしてしまうのですが、当店は巧みなワンポイント・リリーフという名采配です。
舞鶴産キジハタの炭火焼き、ソース・ベルモット。最高品質のハタをガガっと炭火で焼き、享楽的な海の脂がしっかりと裡に留まっています。バリっという焼き目が香ばしく、艶っぽい味わい。付け合せの大麦やソースも饒舌で、最高の魚料理です。
すごー!ペアリングでこんな良いの出しちゃうんだ!小売で1万円近くするんじゃないの!?20年前の葡萄がじっくりと熟成され歴史を感じる1杯。いや、1杯ではない。ペアリングと言いつつ、液面が下がって来るとソムリエが気前良く注ぎ足しくれるので、品の無い言い方をすると実質飲み放題なのである。
ナイフは特別仕様。サッカパウは敵をなぎ倒す意匠の刃でしたが、当店はするすると切り裂いていくイメージのナイフです。
蝦夷鹿肉のポワレ、山椒胡椒の香るジュ。手前のモモ肉は赤身がムキムキしており、自由奔放でスポーティな味わい。山椒の香りがアクセントとなり食欲を刺激します。奥のバラ肉は雄々しく大胆。ワインがどんどん進みます。
ピノの深遠な味わいが屈託の無い鹿肉と仲むつまじく調和する。ううむ、見事な料理ならびにペアリングのワインでした。
洋梨のコンポートとキャラメルのムース、柚子のソルベ。ソースはヴァン・ショー(温かいワイン)であり、徹頭徹尾ワインを上手に使うレストランという印象。白眉はキャラメルのムース。品の良い甘さと焦がしたような香り、コク。大好きです。
お誕生日プレートを用意してくださいました。いくつになっても嬉しいなあ。好きな人に好きな料理でお祝いしてもらえる幸せ。歳を取るのも悪く無い。
小菓子はフィナンシェにマカロン、サツマイモのケーキ。最後の最後まで抜かりのないプレゼンテーション。シェフは女性的な感覚を多く持ち合わせているように感じました。
名残惜しくコーヒーを啜りながら、ごちそうさま、今夜はありがとうと静かに告げる。素晴らしい一夜でした。

今のところ麻布十番で一番好きなフランス料理店です。料理はもちろんサーヴィスも完璧。皿出しのテンポも良く、ストレスを感じることが一切ありませんでした。

とりわけシェフとソムリエが名コンビ。心地よい二人三脚です。ソムリエがシェフの料理を熟知しており、的確なワイン選びで料理の長所をさらに伸ばしているように感じました。飲食業界はいきおい料理人に注目が集まりがちですが、ワインという食事の知的部分を担うソムリエの重要性を再認識させてくれるお店でした。

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麻布十番にはフランス料理屋がたくさんあるのですが、残念ながら割高でハズレなお店も多い。外さない安定したお店は下記の通り。
東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。


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