2016年ベストレストラン

本年もご愛読ありがとうございました。毎年恒例、年末の総仕上げとして、ベストレストランを3つ挙げることとしましょう。



【第3位】
キャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレ/白金高輪

素晴らしい料理でした。フュージョンって面白くはあるものの美味しくはないのがこの業界の常ですが、当店は1皿1皿が全てが極上品です。これはすごい。しかも、なんか色々組み合わせちゃったら旨かった系ではなく、何故これとこれを組み合わせるのかを徹底的に考え抜いた上で料理を設計するスタイル。偉大な料理を理解して自身の哲学に基づき分解整理し、旬の素材にプロジェクションマッピングする。シェフは塩顔男子で飄々としていますが、相当な勉強家に見えました。

食後はシェフと我々でのワインならびにレストラン談義に華が咲く。シェフは昔からの友人のように我々の懐に飛び込んできてくれ、パリで働いていた頃の話や料理に対する取り組み姿勢などをお話してくださり、ううむ、彼はお世辞抜きで世界を狙える料理人ではなかろうか。

世界基準で見れば、当店の料理は楽勝で3ツ星クラスなんですよね。というか、私の経験では海外のフュージョンな有名店、例えばアルサックムガリッツアケラレなどと比べても当店は頭ひとつ抜けています。

話はややこしくなるのですが、フュージョンを東京基準で見ると龍吟ナリサワなどライバルは増えてきます。東京のレストランのレベルは高すぎるので(だってナリサワが2ツ星なんですよ!)、いっそのこと海外でポーンと独立したほうが色々と近道だったりして。仕入れの問題をクリアして海外で同じものを出すことができれば、あっという間に料理界を席巻できると思うのだけれども。


【第2位】
フロリレージュ/外苑前
ミシュラン1ツ星。久々に圧倒的な迫力を感じたディナーでした。感動です。コースに波があるわけではなく、常にフォルテッシモで駆け抜ける感覚。皿出しのテンポも良くリズム感があり、東京、いや世界でもトップクラスのレストランの仲間入りです。

移転前とは全く印象の異なる完全に別のお店です。恐らくシェフは元々このような突き抜けた感性を持っていたのだけれど、狭く導線の悪いハコに押しつぶされていたのではなかろうかと邪推してしまう(そういう意味でアビスの行く末が少しだけ気がかり)。

これは間違いなく世界を狙えますね。近い将来ミシュラン2~3ツ星は当選確実、The World's 50 Best Restaurantsの背中はもうすぐそこ。それでいてひとり30,000円に収まりナリサワの半額以下とは奇跡としか言いようがない。今のままでも大満足なのですが、是非金額を倍にして、食材費など気にかけることなく才能を余すことなく発揮して欲しいところです。


【第1位】
エクアトゥール/麻布十番
この記事には何度『完璧』という単語を用いたことでしょう。それほどまでに無謬性の高い料理たちであり、どの皿も完璧に美味しかった。あ、また使っちゃった、『完璧』。

ベクトルとしてはナリサワフロリレージュレフェルヴェソンスのような前衛的なフレンチでしょうか。しかし時には龍吟的でありたきや的でもある。正統的なフランス料理に見え隠れする和のエスプリ。天才によって創られる唯一無二の料理です。

マダムの付かず離れずのサービスもすごく好き。余計なおしゃべりなどせず、良い意味で客を放っておいてくれます。かといってぶっきらぼうというわけでなく、用事が済めば笑顔だけ残して去っていき、必要な時にはそこにいるという感覚。居心地が凄く良かったです。

年の瀬が迫ったところで今年のベストレストランに巡り遭う事ができました。


スイスカナダアメリカ香港フランス台湾(後日掲載)と頻繁に海外を訪れた一年でした。いずれもかなりの有名店で食べまくっては来ましたが、結局日本のレストランが上位を占めてしまう。やはり私は日本人がつくる料理が好きだ。

ちなみに昨年のベストレストランは

【第1位】
アピシウス/有楽町

【第2位】

【第3位】

でした。詳細はコチラ⇒ http://www.takemachelin.com/2015/12/2015_2.html


来年も変わらずお付き合いして頂ければ幸いです。それではみなさん酔いお年をお迎えください。

Bon appétit !


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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。


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