チーズをめぐる冒険 vol.6~橋の端を箸持って歩く~


私は寝入っており気づかなかったのですが、妻によると「勤め人では考えられない時間にプロニートが帰ってきた」とのこと。それでも朝、我々がリビングに向かうと彼は定位置のソファでテレビを見ており、「コーヒーでも淹れようか」と気持ちよく接してくれます。

なのですが、せっかくのネスプレッソを使いこなせておらず、フォームミルクの作り方で数分間格闘した後に諦め、ミルクを鍋に移し替えIHで温めようとするも上手くいかず、結局陶器製の器にこれまたミルクを移し替え電子レンジでチンするというポンコツっぷり。愛すべきキャラクターである。

ホスト夫妻は果たして仲直りできたのであろうか。ふたりの間の違和感の塊のような空気を胸に吸い込みながら礼を述べチェックアウト。

ちなみに今回のAirbnbのチェックアウトも非常にドライでした。鍵を渡して、それだけ。ホームステイのように抱き合ってどうこうすることは無く、このあたり非常にビジネスライクに物事を進めます。数時間後には次のゲストがやってくるため、掃除や片付けに忙しそうで、特に見送りなども無いのが、愛着があったために少し寂しい。
ニース駅からTGV(新幹線みたいなやつ)でアヴィニョンへ。3時間程度の乗車であるはずが、謝罪など特に無いまま平然と30分も遅れやがる。アヴィニョンでのランチプランが台無しです。
また、遅れにより接続も無茶苦茶になってしまい、アヴィニョンTGV駅(新横浜的なポジション)からアヴィニョン・セントラル駅(横浜駅)までの乗り継ぎに40分近くも待たされました。キオスクで何でもない食事を摂るのかと絶望していると、その脇にエリック・カイザーを発見。
サーモンとクリームチーズのサンドが6ユーロ。日本のコンビニの倍くらいのサイズであり、味は5倍ぐらいの水準です。何でもない駅の待合室にこのレベルのサンドイッチが売られているのに、美食国家フランスの底力を感じます。
アヴィニョンに到着。一時期はローマ法王庁が置かれ世界の中心となった都市です。街全体を取り囲む城壁が要塞のようで物々しい。
アヴィニョンでもAirbnbを使おうとしたのですが、手頃な物件が見当たらず、かといって高級ホテルに泊まると今回の旅行のコンセプトから外れるので、1泊1万円程度の機能的なホテルを予約しておきました。この写真はホテルの中庭。センスあります。
それほど広いわけではないけれど、クイーンサイズのベッドにライティングデスク、小さなクローゼット、洗面所にシャワールームと使い勝手は充分です。プライベートが完全に確保されるのがいいですね。立地も抜群。駅からも近く、街の目抜き通りに面しています。

こうなってくるとAirbnbを手放しで礼賛することは難しい。UBERとタクシーでは議論の余地なくUBERの圧勝ですが、ホテルとAirbnbであれば使い方次第という結論。私のような神経質な上にホスピタリティを要求するという厄介な人種にとっては、何もかもが程々のAirbnbに居心地の良さを感じることができない。

果たして日本でAirbnbは定着するのでしょうか。日本のビジネスホテル文化は世界的に見ても稀有な存在であり、あの価格と機能性に太刀打ちできる民泊は限られてくるような気がします。
アヴィニョンは4.3kmの城壁に囲まれた小さな街。目抜き通りがあって、広場があって、教会があって、と、典型的なヨーロッパの街。ドブロブニクを拡大し都会的にした印象。スーパーマーケットもあるし、ハイブランドのお店もある。車もバスも通っている。都会と観光地と古都がちょうど良い配合で支えあっており、すぐに恋に落ちてしまいました。
法王庁。外観は要塞のように荘厳ですが、中は意外と簡素であり、見るべきものは特にありませんでした。世界の権力の頂点の家がこの程度かあ。これならリッツ・カールトンのほうがいいや。
アヴィニョン橋。フランス民謡「アヴィニョンの橋の上で」の舞台です。「ローヌ川に橋を架けようぜ!」とマッチョな神童が巨岩をポーンと投げて橋の基礎とし、その様子見た民衆が感激して寄付が集まり完成までこぎつけたけれども、しょっちゅう壊れるからいちいち修理やってらんねーと投げ出され朽ち果てたという姉歯氏もびっくりの構造計算書偽装橋です。現在も橋は途中で途切れたままであり、ローヌ川を渡り切ることはできません。

そういえば姉歯物件、そのいずれもが東日本大震災ではビクともしなかったようですね。当時のメディアの袋叩きっぷりは何だったんだ。
アヴィニョン橋の端へ。「橋の端を箸持って歩く」という一文はネイティブ関西人か否かを見極める分水嶺です一度お試し下さい。ローヌ川の中央に立ち、右手が右岸、左手が左岸。ワイン好きには萌える瞬間です。
法王庁の北にある公園へ。人も少なく広々として心地よい。ヴェルサイユ宮殿の庭園よりも遥かに気持ちよく感じました。
法王庁南東の歩行者天国へ。細い小路に取り留めのない店が並び、散歩しているだけで面白いです。
妻は欧米の街の小路に目がなく、石畳の細い路地の壁に緑が這ってあって、家と家の間にロープで洗濯物でも干してあればそれだけで満足するタイプ。この街での傘の使い方にはいたく感動しており、いつまでもぴょんぴょんと跳ねて喜んでいました。
ディナーは21時の予約であり、ランチはサンドイッチだけだし、どうにも持ちこたえられそうになかったので、テイクアウトのオカズ系クレープを買い食い。半自動化された機械で調理するのが面白い。
受け取ってびっくり、縦は40cm、横は10cm、厚さ1cmと想像以上のボリュームでした。ばんごはん食べ切れるかな。。。
圧倒的な生地の量だけでなく、チキンもゴロゴロと含まれており、モッツァレラチーズもたっぷり。原宿あたりに出店すればバカ受け間違いなしでしょう。パリのPascadeにせよ、日本でヒットしそうなフランスのグルメコンテンツは沢山あります。
腹4分目で臨んだ夕食の詳細は別記事にて。久々に酷いレストランでした。



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