ニースでいちばんのホテル、ネグレスコの海側を東に100メートル。
真っ白の屋根と紺碧のパラソルが目を引く超絶オシャレな海の家、ブルービーチ。当店に限らず、ニースにはこのような海の家が点在しており、互いにしのぎを削っているので、いずれを選んでもハズレはありません。
ビーチベッドとパラソルが何重にも列をなしています。完璧に垢抜けた空間でありため息が出る。日本人には中々真似をすることができないセンスです。更衣室やシャワーも完備されているため、海で遊びたい方は水着だけを持っていらっしゃい。
テラス席に向かうと開放的なリゾートウェアに身を包む美女。真っ黒なサングラスを少しだけずらし、私に視線を投げかける。「わあ!ニースで再会だなんて感動~♪って先週も一緒に飲んだばっかだけど」と向日葵のような笑顔で私を出迎えてくれました。彼女はカンヌへ仕事に来ていたのですが、空き時間を活用してわざわざニースまで出てきてくれたのです。
ロゼの銘醸地の1本で乾杯。これがレストランで35ユーロで飲めるは嬉しい。「有名ブランドのシャンパーニュとかは価格統制されてるからお得感はないけど、地元のワインは割安よね」ほ、ほう、価格統制されてるのか。今度誰かに教えてやろう。
まずはメドックマラソンの感想を尋ねる。メドックマラソンとはボルドーで開催されるローカルのフルマラソン大会。参加者のほぼ全員が仮装で臨み、給水所ではワイン飲み放題。エイドにはカヌレやクロワッサンに始まり、生牡蠣、ステーキなど美食の限りを尽くす。参加者は競争意欲を削がれながら42.195kmを走り抜けるという、明らかに健康を害する稀有なマラソン大会です。
「奇跡が重なって、21キロ地点で失格になったの」と目を伏せる彼女。なんでも楽勝楽勝超楽勝なペースで進んでいたので、余裕ぶっこいてマッサージ所で40分ものんびり過ごしていると、21キロ地点での制限時間にひっかかって問答無用で失格になったとのこと。
「参っちゃうよね。タクシーもバスも何も無いからヒッチハイクして帰ったわよ。ああ、フランス語が話せて助かった」ちなみにメドックマラソンの目玉は仮装して走ること。確か彼女は走りやすい着物のようなコスチュームで臨むと聞いていたので、着物姿で道路沿いで親指を立てていたということでしょうか。
パンはまあ普通です。それにしてもフランスのパンしかり、イタリアのパスタしかり、こちらの人はよく小麦粉を摂りますね。アメリカの低GIグルテンフリームーブメントとは何だったのか。気にせず食べまくっているヨーロッパ人が健康を害したなどという話は聞いたことがありません。
遅めのランチ、かつ、夕食はミシュラン星付きレストランであるため、食べ過ぎないよう注意注意。したがって私はニース風サラダのみを注文しました。
野球ボールほどの量のツナがスゲエ。海を眺めながらフレッシュな野菜と新鮮なツナを頬張る気持ちよさったらありません。
連れは店名を冠した「ブルービーチサラダ」。小エビのカクテルが、これまた野球ボールほどの量で盛りつけられており、仕上げに大サイズのエビが一本のせられています。「私も夜は会食だから控えめにしないと」会食、なんて甘美な響き。憧れる。
何のためらいもなく2本目へ。店名を冠したロゼを注文。しかし店員によると「さっきのバンドルのほうが全然美味しいよ」との説明。正直でよろしい。確かに先ほどと比べると雑な造りというか、酸味も刺々しく感じました。しかし我々の脳天はアルコールに侵食されつつあるので、些細な味の違いなど意に介さないのである。
興が乗り海辺へと駆け出す。このあたり完全に酔っぱらいである。ちなみに砂浜でなく、砂利なのがニースの海の特徴です。海の家の隣のパブリックビーチではお金を払わず自由に使って良いのですが、普通のレジャーシートを敷いただけでは石がゴツゴツして寝ていられないので、普通の旅行者であれば海の家でビーチベッドを借りるほうが良いでしょう。
水は透明度が非常に高いです。また、遠浅とは対極に位置し、いきなりガクンと深度が増すような海の成り立ち。ライフセーバーもいないため、全ては自己責任。もちろん南仏での海水浴とは日光浴であり、陽を浴びるのが主目的であって、本格的に泳いだりはしないので特に問題はないのでしょう。
彼女の仕事の時間も近づいてきたのでニース駅までお見送り。電車のチケットを買う際に、タッチパネルを全て仏語表記のまま操作を進める所にワーオと小さな感動です。
仕事で忙しいのにニースまで来てくれて恩に着るよ、今日のことは一生忘れない、素敵な思い出をありがとう。SNCFの鈍色の車体が見えなくなるまで手を振り続けました。気分はすっかり「冷静と情熱のあいだ」です。来週から1週間限定で、当ブログの題名を「タケノウチシュラン」とすることに決めました。
Follow @takemachelin
「チーズをめぐる冒険」目次
- Fromagerie Danard/Paris
- Grill & Cow/Dijon
- Ecrit'Vin/Beaune
- チーズをめぐる冒険 vol.9~いつか親切なお金持ちが~
- Restaurant Stephane Derbord/Dijon
- チーズをめぐる冒険 vol.8~20代のゴロツキとの小競り合い~
- Restaurant Des Teinturiers/Avignon
- チーズをめぐる冒険 vol.7~フランス人老女への詰問~
- La Vieille Fontaine/Avignon
- チーズをめぐる冒険 vol.6~橋の端を箸持って歩く~
- La Chevre D'or/Eze
- チーズをめぐる冒険 vol.5~Airbnbのホスト夫妻が大喧嘩~
- La Palme d'Or/Cannes
- チーズをめぐる冒険 vol.4~プロニート疑惑~
- Keisuke Matsushima/Nice
- Blue Beach/Nice
- チーズをめぐる冒険 vol.3~軽く電通入ってます~
- Restaurant L'Ange 20/Paris
- Maree de Versailles/Versailles
- チーズをめぐる冒険 vol.2~従姉妹の人妻に告白したプロニート~
- Aux Lyonnais/Paris
- チーズをめぐる冒険 vol.1~Airbnbの怖い話~
関連記事
旅行が好きです。油断するとすぐに旅に出ます。楽しかった大型旅行の先頭記事をまとめました。リンクに飛んでから、順々に次のページをめくって頂ければ幸いです。
- 香港vol.1~成田第3ターミナルという秘境~ ←美人ソムリエールふたりとの珍道中
- 北米西海岸 vol.1~ホンクーバー~ ←ナパの葡萄畑で眠るワイン旅行
- スイス vol.1~氷点下キャンプファイヤー~ ←スイス航空様ご招待のタダ旅行
- パラオ ダイビング クルーズ vol.1~デルタのビジネスクラスwww~ ←ヒルズ族がクルーザーをM&Aした話
- ワインをめぐる冒険 vol.1~ギャラリーラファイエット~ ←ボルドー・シャンパーニュでワインに溺れる旅
- 小笠原諸島 vol.1~おがさわら丸~ ←船でしか行けない東京都でイルカと暮らす
- 屋久島 vol.1 ←縄文杉?ハァ?
- 飛騨高山・白川郷そしてSKE48 vol.1 ←白川郷は中国人だらけな旅
- イビサとバスク/vol.1 ←パーリーピーポーと美食家の共存
- カリブ海クルーズ vol.1~プレミアムエコノミー~ ←カリブ海の島々を船で巡る
- アマンジオ/ジョグジャカルタ vol.1 ←「アマンジャンキー」発生!
- ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ/洞爺湖 vol.1 ←日本でも本気の美食旅。
- 最も効率よくダイブマスターになる vol.01 ←年間10回は沖縄へ行きます。
- 北欧クルーズvol.01~ロンドン~ ←北欧を船で巡り最先端の美食に舌鼓。
- 地中海・エーゲ海クルーズvol.01 ←2週間かけて地中海のイケてる都市を巡る。
- BIER REISE'09 vol.01 ←ドイツ中欧ビール紀行。
- カリフォルニア vol.01 ←西海岸と思いきやメキシコまで足を伸ばしちゃうもんね。
- ハワイ vol.1 ←ハワイで生まれ育った人とハワイを旅する記憶。
関連ランキング:フレンチ | ニース