代々木上原の居心地の良いバー、ナカガワでマンゴーのカクテルを傾けていた際に、今年は真夏に東京サマーランドに行きたいな、という場違いな思いつきが脳裏をよぎりました。こういうものはタイミングなので、東京サマーランド仲間に今年はどうしようかと相談すると、「今年は海がいいんじゃないか」という回答。
海に行きたい、と言われて由比ガ浜あたりの安ビーチを提案するのは大人としてダサいので、日帰り新島を持ちかける。しかし土曜日朝の東京→新島便は言わずもがなのプラチナチケット。話がまとまってすぐに東海汽船に電話すると「あいにく満席です」との予想通りの回答でした。
それでも幸か不幸か世の中には一定のだらしないドタキャン層がいることを知っているので、流れるようにキャンセル待ちをお願いします。浜松町からの船をわざわざキャンセル待ちする奇特な人は少ないだろうという妙な自信がありました。
出発1週間前の午前、楽天的な予想通り東海汽船から「キャンセルが出たので席を用意できる」との連絡を頂き、かくして無事に東京から2.5時間の楽園、新島へのチケットを入手することができたのです。
東京港の竹芝桟橋に来るのは一年前の小笠原諸島旅行ぶり。このあたりはこれから旅にでる浮かれた人々しかいないので、その人ごみに身をゆだねるだけで楽しい気分に浸ることができます。
ちなみに、新島へは竹芝桟橋からの船だけでなく、調布飛行場から新中央航空が飛ばしている小型飛行機で35分という選択肢もあります。ただし、座席数が19とより一層のプラチナ化は止められないのでご利用は計画的に(写真は新中央航空公式webサイトより)。
さて、我々のジェット船は「セブンアイランド愛」。東海汽船は4隻のジェット船を保有しており、残りの3隻は「セブンアイランド虹」「セブンアイランド友」「セブンアイランド大漁」と、やんごとないネーミングセンスに痺れます。
ちなみに「ジェット船」または「ジェットフォイル船」とは、水中翼船のボーイング929のことであり、ジェットエンジンで海水を吹き出し、空気のかわりに海水から揚力(浮き上がる力)を得て飛ぶ「海のジェット機」です。
1分間にプール半分量の海水をぶっ放し、ホバークラフトよろしく水面のなめらかに滑っていきます(写真は東海汽船の公式webサイトより)。時速約80kmというとんでもないスピードで大海原を突き進んでいるのにもかかわらず、ほとんど揺れを感じません。揺れたとしても新幹線程度。船酔いの心配を解消した画期的な乗り物です。沖縄の離島航路、特に石垣~波照間については、乗り物に強い私であってもグッタリとしてしまったので、是非ともジェットフォイル船の導入を。
テイクオフ、すなわち一定速度を出した後に船体を離水する瞬間は、立ち上がりやお手洗いなどはNG。その他の時間帯はお手洗いや自動販売機を自由に利用できます。着席時は常にシートベルトを締めることを望まれるなど、感覚は飛行機に近しい。
ちなみにレインボーブリッジは歩いて渡ることができます。これ豆な。
何度かのウトウトを繰り返すとあっという間に新島到着。降り立った瞬間に島特有の空気感。
港から上陸してすぐ左手のビーチ、黒根海岸の美しさに息を呑む。なんなんだこの色の青さは。これが東京都の色とは信じ難い。ちなみに当ビーチは町からは徒歩で10分ほど離れてはいるものの、船客待合所に屋外シャワーやトイレ、売店が整備されており、非常に利便性が高いです。後述する日よけの庇も設置されており、無料で自由に利用することができます。
カーブミラーに写る空と海までが真っ青。視力が0.2ほど改善したような錯覚。脇を通り抜ける自動車が品川ナンバーであることに苦笑い。
10分ほど歩いて町に最も近いビーチ、前浜海岸へ。レンタルパラソル屋が無いなあと首を傾げていると、日よけの庇を無料で利用することができることが理由です。先客は10名以上の団体様で、スイカ割りと楽しむ絵が何とも牧歌的。
荷解きをしている最中に「こんにちわ!」と女性より声をかけられる。振り返ると小麦色に逞しく焼けたライフガードでした。「どちらから?」と笑顔で体育会系の挨拶が爽快です。なるほど、とにかく客が少ないビーチなので、ライフガードからの個別管理が可能なのですね。新入りが来るたびに氏素性を確認するシステム。この島では絶対に悪いことはできないだろうと高を括り、ビーチに荷物を置いたまま町散策に出発です。
島一番の繁華街、本村地区のスクランブル交差点。Q-FRONT的なポジションにあるラーメン屋兼レンタルボードショップは「本日休業」。今日は土曜日である。
唐突に現れる竹下通りのようなお店。ビーチグッズやお土産が売られています。レンタルも充実しており、大人サイズの浮き輪をひとつ500円で借りました。身分証確認やデポジットなどは必要とされず、「今日帰るなら15時ぐらいに持ってきて~」という一言のみ。信頼性が担保された社会は保安や裁判などのコストが不要となるのです。
翌日は都知事選なのですが、やる気が全くありません。というかポスターを貼りにすら来ていない候補者多すぎ。都知事選にやる気が無い候補者が一目瞭然。新島住民に対して失礼な話です。
薬局がありました。ドラッグストアではなく薬局です。この島ではICTなど無用の長物。近くの工事現場の警備員さんに尋ねると「その角を左に曲がって右に曲がったあたりにある」という説明。なんだよこのドラクエ感。
指示された場所に存在したのは公民館のような謎の建物。「カラオケ」「ボウリング」と記された謎の幟。ここまで説得力の無い幟は中々無い。
しびれを切らして寿司屋に直接電話をすると衝撃の結末が。
vol.2へ続く
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